太陽光発電システム関連機器特集 買取終了控え問われる昼間の電力の有効活用

生活パターンに変化

買取期間を終える住宅用太陽光発電の案件が来年2019年から発生しようとしている。メーカーは、売電していた電力を、エコキュートの稼働や電気自動車のバッテリー充電などに利用することを提案している。今後、太陽光発電が発電した昼間の電力をどのように有効活用していくかが、お茶の間の話題になるかもしれない。

2009年11月にFITに先駆けて余剰電力買取制度が始まったが、一般家庭(太陽光発電10kW未満)の余剰電力の買取期間は10年のため、2019年からは買取期間を終える住宅用太陽光発電が続出する。
買取が行われていた期間は、昼の間できるだけ消費せず売電に回し、夜の電気を利用する傾向にあった。これからは、買取期間を終えることで、太陽光発電を搭載した家庭では、太陽光発電の電力をできるだけ昼に消費する生活のパターンにシフトしていくことが想定される。
具体的には太陽光発電の電力を昼間に消費することで、電力会社からの電力購入を少なくして家計の出費を抑えることができることから、洗濯機や乾燥機などの使用を夜間から昼間に回していくことが挙げられる。
また、子育て中の共働き世帯では、仕事のある平日は忙しいので、休日に料理の作り置きをしている例もあるが、今後は、休日の昼間、太陽光発電の電力でIHクッキングヒーターを稼働させ、節約に励む家族が現れることも予想される。

エコキュートの稼働や電気自動車のバッテリー充電などへの活用を提案

総合電機メーカーは、余った電力の活用法の一つとして、太陽光発電と連携したエコキュートの利用を薦める。
三菱電機は、太陽光発電の電力を利用し、エコキュートでお湯を沸かし熱に変えて蓄える蓄エネソリューションを提案。3つのモードを用意した。
太陽光発電が発電中、売電を優先させるモードでは沸き上げを停止する。また、余剰を活用するモードでは満タンに沸き増しをする。さらに、出力制御連携モードでは、電力会社からの出力制御時には、自動でエコキュートがお湯を沸き増しする機能を稼働させる。
パナソニック エコソリューションズ社は、AiSEG2を中核機器とする「スマートHEMS」の機能を強化し、つながる家電・住宅設備機器を拡充。加えて、AI(人工知能)機能も装備しエコキュートの沸き上げを制御する。


AiSEG2(パナソニックES社)

AiSEG2が、翌日の天気予報を確認し、太陽光発電システムと組み合わせたAIソーラーチャージ機能で、エコキュートの沸き上げを、賢く指示して、電力会社から買う電力を削減することが可能となる。
具体的には、翌日の天気予報をAiSEG2が確認。天気予報に基づき、太陽光の発電量を予測し、使用電力量と沸き上げに必要な電力量が、太陽光の発電でまかなえると判断すると、その日の夜間の沸き上げ量を減らして、電力購入を抑える。そして、翌日、不足分を太陽光発電の電力で沸き上げることで、余剰電力を有効活用することができる。

電力は自給自足の時代へ新しいビジネス芽生える


産業用太陽光発電

一方、非住宅用太陽光発電は、2012年より固定価格買取制度(FIT)が適用され買取期間は20年のため買取終了の案件が現れるのは、2032年以降だが、その電力量は住宅用に比べ大きい。
余った電力を蓄電池や電気自動車(EV)のバッテリーにため利用する事例も増加していくと予想される。普及が進むEVを割安な蓄電池として、太陽光発電等の電力をため活用するシステムを、三菱電機は昨年のプライベート展示会で紹介した。


非接触充放電ユニット(三菱電機)

それはエネルギーマネジメントシステム「EV連携EMS」。太陽光発電(PV)や発電機、定置蓄電池などの分散電源とEV、PHEVを組み合わせて、充放電や発電を制御し、建物のエネルギー利用を最適化する。
具体的には、広い敷地を持ち、大容量のPVが設置可能なショッピングモールでの導入事例で説明した。
EVで来店した買い物客に昼間、PVで発電した電力での充電サービスを提供。
充電の際は、ワイヤレス電力伝送技術を活用して、買い物客には接続を意識させない。
また、空調や照明などに多くの電力が消費される日中の電力需要のピーク時には、長時間ショッピングモールに滞在する、映画館等の利用客のEVから、一時的に電力を借りてピークカットを行う。さらに、帰宅時間までには、EVの充電を済ませて、電力を提供してくれた利用客に、割引サービスなどで還元する。
東芝は、産業用太陽光発電に関して、FITの見直しによる売電価格の低下や電力会社による無制限の出力制御の可能性などを挙げて、いままでのFITを利用した売電収入目的から、自家消費型太陽光発電への切り替えを提案する。
例えば、100kWの太陽光発電システムの場合、平成29年度の買取価格21円のFITと自家消費型を比較すると、自家消費型は国の補助金を活用したり、また、高圧受電設備は既設を利用するなどで、単純投資回収年数は、FITが約11年に対して、自家消費型は約7年と短くすることができると説明する。

太陽光発電の電力を売電から自家消費する時代へと移り変わることを意識させる製品、システム、サービスが登場するなか、エンドユーザーの生活行動にも変化が生じるかもしれない。こうした市場の変化のなかで、新しいビジネスが芽生え、工・販・製が一体となり、そのチャンスを獲得することを期待したい。

電材流通新聞2018年3月29日号掲載