オーデリックの伝統工芸シリーズ made in NIPPON①伝統工芸とモダンデザインとの融合

日本の美意識が生きる 新しいあかりを追求

担当の十亀氏

プロローグ

オーデリックでは、伝統工芸とモダンデザインとの融合で日本の美意識が生きる新しいあかりを追求すべく、「made in NIPPON」と題したシリーズを展開している。
「made in NIPPON」は、企画がスタートしてから20年ほど経つが、これまでに「壺屋焼(沖縄県)」「岩谷堂箪笥(岩手県)」「南部鉄器(岩手県)」「工芸ガラス(千葉県)」「工芸ガラス(群馬県)」「工芸ガラス(青森県)」「波佐見焼(長崎県)」「山中漆器(石川県)」「金箔(石川県)」「駿河竹千筋細工(静岡県)」等各地の伝統工芸の技法を使った照明器具の製品化を行っている。これらの製品を立ち上げる際には、担当者が現地に足を運んで職人に会い、ビジネス上の理解を得て話し合いのもとにデザインを決めて試作・製作を経て問題を解決するという地道な作業の連続だったという。
「made in NIPPON」を担当する開発部の十亀寿水マネージャーは、「このシリーズで取り上げた伝統工芸には日本のモノづくりの原点として絶やしてはならない匠の技が使われている。このような商品企画を行うと通常はマーケティング的には『どのくらい売れるのか?』『採算は合うのか?』などの反対意見で実現に至らないのが常だが、モノづくりに関わる企業として日本の伝統の技を守るという義務感と文化を継承するという意義からメーカーとしてこうした製品化を行うべきだと社内を説得して企画を進めた」と語る。
その一方で、「実はもっとも苦労したのは、作り手のところに出かけて企画を説明する際に東京から得体の知れない変な人間が来た、だまされるから気をつけろと最初に警戒されてしまうことだった。これを理由にこれまでにも途中で商品化まで至らなかったケースも多々あった」とも語り、頑固な昔気質の人間が多い伝統工芸に関わる職人の心を開くことは容易ではないことがうかがえる。
また、町おこしなどを目的に、自治体が予算を組んで有名なプロデューサーやデザイナーを呼んで地元の伝統工芸品を新たなデザインを依頼するケースは、これまでにも多々あったと聞く。しかしながら、その多くは販路を持たないために一度製作してもそれっきりとなり、結局はプロデューサーの懐にお金が入るだけで職人や地元の企業は振り回されただけで終わったりする。
十亀氏は、そういった経験のある職人に対して「『自分達で売りますから照明器具を作ってください』『皆さんが持つ技術で腕を振るってください』という話を何度も繰り返してようやく軌道に乗せることができる」と粘り強く訴える必要性を強調する。さらに、「ひとつの成功例ができることによってつぎの機会でその例を説明することで理解が得られる」といった好循環も生まれたという。
通常、市場からのニーズや新開発の技術やデザインによるシーズをもとにすることが商品企画の基本だが、オーデリックのこのシリーズのように「伝統技術の継承」を主目的とし、かつすべてのケースで異業種とコラボレーションするというプロジェクトはめずらしい。次回からは、こうしたオーデリックの試みをひも解くこととする。

(中尾晋也)

電材流通新聞2020年11月5日号掲載