【ダイキン工業】中規模オフィス向け空調設備が省エネ大賞資源エネルギー庁長官賞を受賞

平成30年度 省エネ大賞において「中規模オフィスビルの更新による普及型ZEBの実現」が「資源エネルギー庁長官賞」を受賞

ダイキン工業株式会社は、一般財団法人 省エネルギーセンターが主催する平成30年度省エネ大賞の省エネ事例部門において、「中規模オフィスビルの更新による普及型ZEB(ネット・ゼロ・エネルギービル)の実現」が「資源エネルギー庁長官賞」を受賞しました。
また製品・ビジネスモデル部門において、個別制御と省エネ性を両立した『マルチキューブエアコン』が「省エネルギーセンター会長賞」を、ハイブリッド個別空調システム『スマートマルチ』が「審査委員会特別賞※1」を、それぞれ受賞しました。

省エネ大賞は、国内の省エネを推進している事業者や省エネに優れた製品を開発した事業者の活動を表彰することで、省エネ意識の浸透、省エネ製品の普及促進等への寄与を目的としたものです。

表彰式および今回受賞した商品の展示は1月30日(水)に東京ビッグサイト(住所:東京都江東区有明3-11-1)で開催されるENEX2019 「第43回地球環境とエネルギーの調和展(1/30~2/1)」で行われます。

「資源エネルギー庁長官賞」を受賞した「中規模オフィスビルの更新による普及型ZEBの実現」は、省エネ化が遅れている中規模のオフィスビルにおいて汎用技術を組み合わせた設備更新や運用管理でZEB化に取り組む先進的な事例として評価されました。パリ協定を踏まえ、日本政府も2030年に2013年度比26%の温室効果ガス削減を宣言し、ビルのZEB化を推進しています※2。これまでビルのZEB化には複雑な技術や膨大な導入コストが必要とされていました。しかし、ビルでのエネルギー消費が大きい空調・換気・照明の設備更新とコントローラーでの集中管理を徹底することで、一次エネルギー消費量を基準値と比較して55%削減でき、ZEB Ready※3を達成しました。今後、この取り組みのノウハウは管理者の不在によりエネルギー管理が難しい中規模オフィスビルのZEB化の普及に大きく寄与すると考えています。

「省エネルギーセンター会長賞」を受賞した『マルチキューブエアコン』は、工場で快適に働く空間をめざし、生産ラインのレイアウト変更に柔軟に対応できるコンパクトな箱型のエアコンです。従来のダクト空調では、人がいない場所における無駄な稼働や高い工事費という課題がありました。本製品は、床置きや柱など人員配置にあわせた設置と大空間でも一人ひとりの好みに合わせた温度や風量の制御により、高い省エネ性を実現します。快適な空間を工場に提供することは、労働環境の改善や人材確保にもつながります。今後は工場に留まらず駅や学校の体育館への導入も検討しています。

「審査委員会特別賞」を受賞した『スマートマルチ』は、IoTを使って複数の熱源機器を連携することによって、省エネ、節電を実現したシステムです。電力の需給状況を把握しながら、ガスヒートポンプエアコン(以下、GHP※4)と電気ヒートポンプエアコン(以下、EHP※5)の運転比率を最適に制御し、利用者の手間を省きながら快適な空調環境を実現します。

当社は今後も省エネ性、環境性に加え、快適性にも優れた技術を追求し、グローバルに展開できる商品やサービスの開発に取り組んでまいります。

※1
東京ガス株式会社、大阪ガス株式会社、東邦ガス株式会社、パナソニック株式会社、ヤンマーエネルギーシステム株式会社、アイシン精機株式会社との共同受賞。
※2
「低炭素社会に向けた住まいと住まい方」の推進方策についての中間とりまとめ(平成24年7月 経済産業省 国土交通省 環境省)による。
※3
一般的な建物(リファレンスビル)と比較してエネルギー消費量が50%以下のビル。
※4
ガスを駆動源としたヒートポンプエアコン。
※5
電気を駆動源としたヒートポンプエアコン。

【ご参考】主な商品・取り組みの特長

「資源エネルギー庁長官賞」を受賞
中規模オフィスビルの更新による普及型ZEBの実現

主な実施内容(省エネ取り組み内容)と成果

今回、実施の対象としたビルは1997年9月に建てられた2620m2の中規模ビルです。入居者はダイキン工業ならびに関係会社であり、空調の更新にあたり、既に発売されている空調機、換気機器、照明機器のみでZEB Ready化を狙いました。その結果、WEBPRO(エネルギー消費性能計算プログラム 〈非住宅版〉)の試算による一次エネルギー消費量は、照明、空調、換気機器更新のみで基準値と比較して55%削減でき、ZEB Readyを達成しました。更に、更新ではあまり事例のないNearly ZEB※6を目指し、太陽光発電や二重窓を設置し、最大67%の削減を達成しました。

省エネの取り組みで実施した主な3つの技術:

(1) 更新用高効率ビル用マルチエアコンと調湿外機処理機『DESICA』で温湿度を個別に管理
当社は温度と湿度を分離し、それぞれを高効率な機器で個別制御することで省エネルギーと快適性の両立を実現するために、調湿外機処理機『DESICA』を導入しています。潜熱顕熱分離空調は、湿度をコントロールする調湿外気処理機『DESICA』と温度をコントロールする高顕熱ビル用マルチエアコンで構成されます。『DESICA』が湿度の処理をすることで、ビル用マルチエアコンは顕熱処理に特化でき、冷房時は蒸発温度を高くすることで圧縮機の負荷を下げ、エネルギー効率を大幅に上げることができます。

(2) 空調・換気・照明を一括管理するシステム
ZEBを実現するために、一つのコントローラーで空調、換気に加え、照明も一括で制御できる低コストな制御システムを採用しました。このシステムにより、管理者不在の中小規模ビルにおいても機器のスケジュール管理、消し忘れ防止、予熱、予冷運転など、きめ細かい管理ができるようになり、省コスト、省スペースで大幅な省エネを実現しています。また、日本では事例が少ない国際規格のDALI制御※7を用いた照明制御により、一灯一灯の照度管理で省エネを実現しています。

(3) 既設空調機運転データ分析による最適空調機の選定
ZEBロードマップフォローアップ委員会が公表しているとりまとめ(案)※8では、既存ビルは利用用途の変更やLED、PCなどの省エネ化による発熱量の削減にもかかわらず、過去と同容量の空調システムに更新され非効率な運転となっているため、対策が必要であると指摘されています。
そこで、当社は空調機の運転状態を遠隔監視システムで計測し、更新前の状態と比較しながら機器更新を実施しました。外気温度が高くなっても空調負荷は約130W/m2以下となっており、更新前の204W/m2を下回りました。検証後に、気象、内部発熱、換気負荷の条件を見直し、空調機を選定しました。

一次エネルギー消費量の実績

グラフは空調更新後の1年間の一次エネルギー消費量の実績を示しています。縦軸は一次エネルギー原単位を示し、棒グラフは国の指定する基準値とH29年度の実績値、折れ線グラフはそれらの積算値を示しています。前述の取り組みに加え、更なる省エネ達成に向け、二重窓、太陽光発電、ZEBモニターを設置して計測をしました。各月、確実に消費電力量が削減でき、1年間では基準値と比べて67%の削減を実現しました。

今後の課題と計画

今後もNearly ZEBの達成を目指し、継続的に運用データの検証や分析に対する改善を行っていきます。また、当社は国から認定を受けたZEBプランナー※9として、ZEBの実現に向けた計画指針を策定し、国内の新規および更新物件への提案と普及を進め、グローバルでの展開も検討していきます。

※6
一般的な建物(リファレンスビル)と比較してエネルギー消費量が75%以下のビル。
※7
DALIは、Digital Addressable Lighting Interfaceの略称で、汎用性と拡張性を併せ持つ、照明制御の分野における国際標準の通信規格。異なる企業の製品とも双方向に通信・制御ができ、調光機能を活用した高レベルな照明制御も可能。
※8
経済産業省 資源エネルギー庁の組織であるZEBロードマップフォローアップ委員会が2015年に公表しているとりまとめ(案)。
※9
2017年度に新設されたZEB化の実現に向けた相談窓口を有し、業務支援(建築設計、設備設計、設計施工、省エネ設計、コンサルティング等)を行い、その活動を公表する企業等。

「省エネルギーセンター会長賞」を受賞
個別制御と省エネ性を両立した『マルチキューブエアコン』

一人ひとりに快適な空調環境を届ける個別制御が可能

本製品は、個別制御による省エネが可能です。1馬力単位のマルチキューブをON/OFFすることで、人がいない場所の不要な運転をなくします。冷房時には設定温度通りの冷風が届く吹出温度制御が可能で、冷やし過ぎを防ぎながら快適性を維持します。さらに、全体の能力をVRVシステムにより最適に制御することで高い省エネ性を実現します。

大風量でやわらかな風を追求

従来のスポットエアコンに比べて量の多い1人当たり毎分15m3の風を吹出します。また、350mmの大口径により人が心地よいと感じる風速と広がりからやわらかい風を吹出します。

コンパクトなキューブ型で、既設設備の邪魔をせず欲しい場所に置ける

ダクト方式の空調とは異なり、冷媒配管で接続することで工期が短縮できます。コンパクトなキューブ型のため、工場の設備との干渉も少なく置き場所に困りません。吊る、置く、柱に並べて取付けるなど、あらゆる設置方法が選べます。さらに増設や移設の工事も簡単に行えるため、生産ラインのレイアウト変更などにも柔軟に対応できます。

工場の過酷な使用環境を想定した機器設計

工場の過酷な使用環境を想定した設計を行っています。腐食に強い熱交換器やドレンパン、長時間運転に対応できるファンモータ、高湿度環境でも結露しない二重断熱構造を採用しています。さらに、従来の空調機に比べて、吸込温度範囲を大幅に広げ、約40℃の吸込温度でも運転が可能です。

従来のダクト方式の空調システムとの比較

ダクト空調に比べると本システムでは、室内機側の性能向上により10%の消費電力低減が図れます。また、個別にON/OFFが出来ることから、例えば、半数の機器を停止した場合は50%の消費電力が低減できます。さらに、この製品の特長である吹出温度制御を行うことで、32℃の温度環境で25℃の吹出温度に設定した場合、従来の吸込温度制御に比べて25%の省エネになります。
制御システムについては、最大54馬力の室外機と接続ができるため、工場のような大空間でもひとつの冷媒系統でシステムの構築ができます。また、VRVの制御機器と接続することで照明機器を含めた集中制御やスケジュール管理ができ、より細かい省エネ制御が可能です。

今後の展望

2018年6月に稼働した当社の臨海工場(堺市)では、『マルチキューブエアコン』を用いたタスク&アンビエント空調を採用しています。これは、外気負荷や照明の発熱などを処理するベース空調になるアンビエント空調と、変動が多く不均一に分布する内部発熱や人体発熱を処理するタスク空調に分離することにより、快適性と省エネ性の両立を図るものです。実際には、本製品を柱に設置してアンビエント空調、作業者個別には置台に設置をしてタスク空調を行っています。この新工場では、全体空調に比較して40%の能力の空調機器で設計できました。
今後、省エネ効果の検証および課題解決を行い、当社の他工場への展開を行っていきたいと考えています。また、他社工場のモデルに合わせた改善を進め、工場の環境改善に貢献していきます。

「審査委員会特別賞」を受賞
ハイブリッド個別空調システム『スマートマルチ』

二種類の冷媒配管系統を同一化し、施工の手間とコストを削減しながら、快適性を向上

GHPとEHPの冷媒配管系統が異なる従来のシステムでは、電力ピークカットによりEHPの運転が抑制された場合、GHPで能力を補う運転となるため、GHPとEHPのユニット間の能力差異による室内の温度ムラが生じていました。そのため、室内の快適性を保つため、GHPとEHPの室内機を交互に配置するなど冷媒系統の違いに留意した設備設計と施工が必要でした。
『スマートマルチ』は二系統の冷媒配管系統を一系統にまとめることでGHPとEHPのユニットの能力配分が均一になり、室内の温度ムラが抑制されます。また、設備設計時や施工の手間が省け、一系統分の配管施工コストも削減できます。

運転負荷や消費電力の変化に応じて電気とガスを自動調節、
「遠隔制御サービス」との連動でさらに省エネ省コスト運転を実現

空調機は室内と室外の温度に応じて運転時にかかる負荷が変動します。低負荷時の運転に適したEHPと高負荷時の運転に適したGHPの違いを活かし、運転負荷に応じて自動で使い分けて運転効率が向上するハイブリッド運転を行います。この運転制御を東京ガス株式会社、大阪ガス株式会社、東邦ガス株式会社の各社が提供する遠隔制御サービスと連動させることで、エネルギーの料金メニューや今現在のエネルギー需給状況考慮した運転を可能にし、施設ごとに最適な空調機の運転を省エネかつ省コストで実現します。

■運転負荷に応じた運転比率のイメージ


空調機が主力製品の代金ですが、中規模オフィスの設備リニューアルを行う際に、トータルの設備による総合的な省エネ設備の導入提案が省エネ大賞の資源エネルギー庁長官賞を受賞しました。
これは、今までは空調機単体での省エネを追求していたことに対して、空調や換気、照明などによりトータルでビルの最適な省エネ運転を探すという制御を行うシステムとなっています。
また、過去の空調機運転時のデータを蓄積し、外気温が高まった場合の運転台数の制御や無駄に冷えすぎているような箇所がないかを確認します。
一つ一つの設備では、確かに省エネ化が進んでいますが、それらを大量に運転してしまっていては、せっかくの省エネ効果も失われてしまいます。
ビルという少し大きな観点からエネルギー消費を抑えるよう全体で制御するということが省エネ大賞に輝くポイントとなります。

公式プレスリリースはこちら:平成30年度 省エネ大賞において「中規模オフィスビルの更新による普及型ZEB」の実現が「資源エネルギー庁長官賞」を受賞