建販需要が活況を迎えた。そのさなか、物流費や切断加工費の確保が大問題になっている。もとより建販電線等を取り扱うメーカーや専業問屋のマージンは極めて低い。営業利益率・経常利益率は、消費税率の8%にも遠く及ばず、その半分以下、または2%を割るケースもマレではない。そこに物流費等のアップが、追い打ちを掛けた。物流費の高騰分を、まともに価格転嫁できず、利益が一段と圧迫されているためだ。
ヤマト運輸や日本郵政、佐川急便などの運送業者、物流業者が軒並み配送料を値上げした。それから足掛け3年になる。
この環境下、電線業界においても、物流費や切断加工費アップにともなう値戻しを、工事用汎用電線ケーブル(品種)などを対象とした建設電販分野をはじめ多くの企業で打ち出している。そのやり方は、各社マチマチ。しかし、ユーザーに対して「値戻しを根気強く、お願いしている」とした返答は、ほぼ一致しているようだ。
つまり電線業界では、建販電線などの物流費アップ分をまともに確保できていないのが実状となっている。
住電日立ケーブルでは、「物流費の値戻しについては、4月1日から(従来価格プラス約2~5%の値上げを)個別に交渉しながら実施させていただいているが、ユーザーの理解を、あらためてお願いしたい」(同社・門田社長)と強調するほどである。
企業がコストアップ分を、そのままストレートに値上げすることは当然なこと。しかし、電線業界で、これがとりわけ大問題になっている背景には、メーカーや専業問屋のマージンが極めて低いことがある。
長年、適正利益の確保が大きな課題になっており、電線業界の売上高営業利益率は、消費税率の8%にも遠く及ばない。その半分以下、または2%を割るケースもマレではないためだ。
一方、今後の工事用汎用電線ケーブルなどの建販電線市場について、業界筋から「エコ電線ケーブルをはじめ、供給がタイトになることが懸念される」とした声が出はじめた。
人手不足のなかで、東京オリンピック、パラリンピック絡みの需要は、呼び水に過ぎない。都市再開発案件と特区絡みの東京・都市再生プロジェクト、それにインバウンド関連のホテル建設やリニア中央新幹線案件や風力発電向けなど、建販電線需要は目白押しにあるためだ。
この時期だからこそ、電線メーカー及び流通の各社はしっかりとユーザーにモノを出荷あるいは届けられるように、適正利益の獲得に今まで以上に努力し、事業を健全に存続させることが急務になっている。