今年度も順調な動き見せる市場
ここ数年、堅調に推移している換気扇市場は、今年度に入っても数量、金額ともに前年同月を超え、幸先の良いスタートを切った。その好調の原因やメーカー各社の商品提案の切り口などについて探ってみた。
「空気質」や「健康」などキーワードに製品開発
日本電機工業会が発表した資料によると、2019年4月の換気扇国内出荷実績は、数量ベースでは前年同月比102.4%、金額ベースでは103.4%(同)と、ともに前年同月からの伸長を見せた。換気扇市場はここ数年、堅調に推移しており、10月に控える消費税増税の駆け込みによる山谷は予想されるものの、今年度も順調な市場となりそうだ。
換気扇市場と密接に関連する新設住宅着工件数を見ると、5月末発表の国土交通省資料では、4月の住宅着工戸数は、前年同月比5.7%減の7万9389戸で、5カ月ぶりの減少となった。また、季節調整済年率換算値では前年同月比マイナス5.8%の93.1万戸となった。
今後の市場環境については、新設住宅着工は、10月に控える消費税増税を前に、再び住宅の購買意欲が高まりつつあると見られており、住宅着工及び、それに伴う換気扇需要も伸長すると期待されている。
とはいえ、その反動も予想されることから、通期で均してみると大きな変動はなさそうだ。
こうした環境下、換気扇市場が安定しているのは、非住宅分野での伸長も見逃せない。民間需要が活発で、物流業などの設備投資により、倉庫などへの高単価機種の納入が好調だという。
また、住宅分野においても、人口減や高齢化などにより、新築が期待できない中で、各メーカーでは、リニューアルや新たなニーズに的確に対応し、堅実な市場開拓を行っている。
具体的に見ると、省エネ、リニューアル、空気質の向上、高付加価値化など、様々な切り口で市場のニーズをいち早く取り入れ、積極的な製品開発と提案を行っている。とくに、「空気質」と「健康」、さらにZEHやスマートウェルネス住宅などをキーワードにした製品開発が目立つ。
三菱電機では、新設・既設の両市場において、「より省エネ」かつ「高い快適性」を生み出す商品開発・提案に注力する。
さらにこうした活動を通じて、換気による「空調負荷低減効果」や「空気質改善効果」をユーザーに伝えていくことが重要な役割のひとつであると考えている。
具体的には、空気質改善を切り口として、「ヘルスエアー機能搭載循環ファン」を提案している。
「天井埋め込み形で邪魔にならない簡易空清機」を商品コンセプトとしており、①脱臭②ウイルス・菌・花粉を抑制(不活化)③電気集塵(花粉・PM2・5対応)などの機能や特長を持っている。換気扇プラスアルファの商品として、ビジネスホテルや特老、保育園などの採用事例が増えている。
同社ではこの他にも、「ロスナイセントラル換気システム 高効率シリーズ」を6月から発売している。熱交換効率の向上により、換気の際に捨てられてしまう室内の暖かさや涼しさを“より”再利用(熱回収)しながら換気。約8割の熱エネルギーを回収でき、夏季・冬季の空調負荷低減(省エネ)に加え、住宅内温度に近い給気温度の実現により、部屋間の温度ムラ軽減(快適性)にも貢献する。高断熱でエネルギーを極力必要としないZEH(夏は涼しく、冬は暖かい)に最適な換気システムとなっている。
パナソニックエコシステムズでは、従来より、IAQ(室内空気質)の向上を標榜してきた。商品そのものが持つ省エネ性や機能向上等の側面の訴求はもちろん(モノ)、その商品を設置使用することにより生み出される新たな空気価値から得られる生活の改善向上(コト)を真摯に提案する。
ZEH(ゼロエネルギーハウス)やスマートウェルネス住宅を意識し、さらに高いレベルでそれを実現する取組みと提案を加速する。
進む先は「空気で生活を変え、健康な暮らしを生む」をキーワードに、換気の方式による効果の違いや熱交換換気のメリットを省エネ軸、健康軸の両面であらためて提案する。
その一環として、同社では2017年6月に、愛知県春日井市の換気扇工場内に実験型住宅「IAQ Labo」をオープンした。この住宅は、体感型の住宅として換気方式よる空気価値の違い、温湿度・気流まで踏み込んだ空間を体感でき、各要素を「見える化」した。
なお、この6月から次亜塩素酸(電解)含浸のフィルターで除菌・脱臭するスタイリッシュなブラックタイプの「ziaino」(ジアイーノ)を発売した。
東芝キヤリアでは、省エネ、空気質の向上をキーワードにエンドユーザーや工事店、設計サイドに対して付加価値が提供できるよう、商品開発を進めていく。それにより換気扇需要の拡大に努めていく。
商品的には、学校換気扇取付用別売部材「一般換気扇用 薄板取付用アタッチメント」をこの4月に発売した。
熱中症対策として全国小中学校への空調設備の設置が進んでいる。空調設備を設置すると、窓を閉め切ることが多くなり、換気不足になりやすい。
既存の窓にアルミパネルなどを使用し、屋内側から一般換気扇とウェザーカバーを簡単に取り付けることができる。足場が不要で、大掛かりな工事の必要がなくなる。
変わりつつあるユーザーニーズに対応しながら、様々な切り口で活路を見出している換気扇市場。
新築市場では大きな伸長が見込めない中、リニューアルも含め、「空気質の向上」などをテーマとした新たな商品提案を行う各メーカーの今後に注目していきたい。