トップインタビュー 全電連 吉田 康一会長

物流問題の改善に傾注 関東・関西など幹部の若返り推進

全日本電線販売業者連合会(全電連)の吉田康一会長


全日本電線販売業者連合会(全電連)の吉田康一会長は、本紙取材の中で「新型コロナの影響で、この4、5月の2カ月間、建設電販分野の電設ルート向け受注活動や販促展開が余り進まなかった。従って建販電線市場の先行きは不透明であり、総じて厳しい」としたうえで、全電連の20年度事業計画について「商慣習改善のフォローアップを引き続き進めることや、全電線幹部の若返りなどに力を注ぐ」と語った。このうち商慣習改善では、「特に物流配送問題の改善に注力する。前年よりやや進んだが、電線ドラム問題などがありまだ道半ばであり、これからも根気強く取り組んでいく」と述べた。


 ――新型コロナウイルス感染拡大による建設電販市場などへの影響は?
「新型コロナの影響が建販需要などへ本格的に出てくるのは、これからだと思う。新年度(20年度)の需要情勢が懸念される。20年3月末までの建販電線出荷量は、月ごとに多少変動しても前年並みに動いていた。しかし、政府は4月7日、首都圏などで緊急事態宣言を出し、4月16日には全国に拡大。全国で緊急事態宣言が解除されたのは、5月25日だった。新型コロナの第二波を警戒し、電線メーカー、流通などの企業では、在宅勤務あるいは何らかのかたちでのリモートワークを、まだ行っているケースもある。
電線の流通やメーカーは4、5月のこの2カ月間、満足に営業しておらず、受注活動ができていない。今後、この受注減の影響が出てくるだろう」

 ――建販を市販と電設に分けると需要情勢は、どうか?
「市販ルートの電材店向け受注は、様々なスポット需要がそれなりに発生し、大幅な落ち込みはない見込み。電材店市場については、19年度は全般的に厳しかったが、LED需要と学校の空調案件でやや戻した。20年度は学校の空調案件が、鈍化する見通し。この状況下、楽観できない。一方、電設ルートは大型案件などが多く、受注するには時間が掛かる。この2カ月間、受注活動や販促展開があまり進まなかった。ゴールデンウィーク明け以降、建設工事が進んでいるプロジェクトは、既に受注済みの案件が大半。その先の受注捕捉が、行われていない。新年度の電設市場は、どの程度の注文が入ってくるか、まだ分からず、先行きが不透明である」

建販のブランド統合流通に余り影響ない

――首都圏再開発やGIGAスクール構想などの需要については?
「現在、『グローバルゲートウェイ品川』をコンセプトにした品川開発プロジェクト(第I期)が、24年度のまちびらきを目指して進行している。さらに東京駅周辺で、日本橋・八重洲・京橋地区の再開発なども控えている。そうした電設需要に期待したい。逆に地方の需要は厳しい。仙台など東北の東日本大震災の復興需要は、ほぼ終わっている。東北に限らず、地方と大都市圏の建販需要については、温度差が発生している。つまり電設分野はおしなべて見ると、予断を許さない情勢となっている。
一方、市販分野では、学校の生徒一人に一台の端末を配備するGIGAスクール構想を注視している。新型コロナの影響でリモート学習などが注目されるなか、GIGAスクール構想に弾みが付き、LAN用UTPケーブルなど各種電線需要が動くとみられる。ただ、学校の電線整備は、休みの期間中に行われるケースが多く、新型コロナ第二波の発生次第では、それが遅れる可能性もあり、目が離せない」

 ――建販電線では4月から、従来の5ブランド(HS&T、矢崎エナジーシステム、フジクラ・ダイヤケーブル、昭和電線、古河電工)の体制が、4ブランド(HS&T、矢崎エナジーシステム、フジクラ・ダイヤケーブル、SFCC)体制になったが、流通への影響は?
「あまり影響はないだろう。今、述べたように電線メーカー数よりも、建販電線などの需要量が減っている。供給過剰の状態であり、そうした心配はしていない。むしろ、19年度電線出荷量が69.4万㌧で前年度比0・4%減少した状況において、一連のコロナ禍によって企業の設備投資が抑えられ、さらに電線需要がシュリンクしそうである。電線市場をいかに盛り上げていくかが大事だろう。
ただ、長期的に見ると少子高齢化が進み、ロボット需要が増えていくだろう。このためFA・ロボット電線ケーブルの市場が拡大する見通しであり、成長市場の一つと捉えている」

長期的な期待市場はFA・ロボット電線

―全電連の20年度事業計画は?
「主に3つある。第一に①商慣習改善のフォローアップを引き続き、進めていきたい。このうち特に物流配送問題の改善に力を注ぐ。従来に比べると徐々に成果が出てきている。例えば、特殊配送の費用を顧客に負担してもらうケースが増えている。また、物流費のアップ分を単価に上乗せしたり、別途アップ部分の実費を請求したりして、二つの方法で取り組んでいる。ただ、運送会社では、電線ドラムの形状が通常の荷物と違い、トラックの積載効率が低下することから敬遠されるなど、課題が山積している。物流問題の改善は、わずかに進んだものの、まだ道半ばであり、これからも根気強く取り組んでいく。
第二に②エコ電線ケーブルとアルミケーブルの推進を図りたい。エコ電線ケーブルは、官公庁や病院、学校の需要が主力。東京五輪の各種施設などでは相当、採用されている。先行き、これをオフィスビル、マンションなどの民間にも採用してもらえるような流れを作ることが必要だ。
アルミケーブルでは、アルミプレハブケーブルなどの採用実績が増えている。アルミは銅に比べ、価格の変動が少なく、比較的安価。さらに工事業者にとって軽く、引き回しが楽というメリットもある」

 ――第三の事業計画は?
「③幹部の若返りを図りたい。若い人財に組合を背負ってもらい、業界の発展や活性化に貢献していただきたい。これを主眼に進め、時代に即した形で組合が進化を遂げられるようにすると同時に、魅力ある業界にしてほしい。関西電販では、かなり若返りが進んでいる。関東電販でも関若会を軸に、世代交代している。例えば、こうした若手の会によって全電連で勉強会を開いたり、電線メーカーなどと情報交換会を実施したりして、新商材の開発・展開などに繋がればと思う」

 ――11月18日が電線の日に制定されたが?
「電線の日が決まっても、業界が少しでも明るくなり、魅力的にならなければ意味がない。そのために電線業界が力をつけ、創意工夫することが必要だ。それによって電線が社会的に認知されることが求められる」

 ――20年度の全電連の最重要課題は?
「色々あるが、一言に集約すると、電線業界が明るくなることに尽きる」

電線新聞 4202号掲載