インタビュー新社長に聞く フジクラ・ダイヤケーブル 北島 武明社長

21FY通期事業計画 増収、黒字必達
大手電力の型式認定を取得

フジクラ・ダイヤケーブル 北島 武明社長


フジクラ・ダイヤケーブル(FDC)の北島武明社長は、取材の中で「21FY通期事業計画は増収、若干の減益に設定した。増収は銅価の高止まりが大きい。製品別には、基地局用同軸と光ケーブルは堅調な見通し。11~33のCVケーブルは、大手電力会社や工場、DC、太陽光発電向けで期待される。また、大手電力会社の型式認定を取得しFDCブランドで電線が納入できる」とした上で「この状況下、銅価高を想定し、3品種を含む建販事業などにしっかりと取り組む。顧客は発注の先延ばしや、期限ぎりぎりまで発注をかけない場合もあり、小回りを効かせ短納期対応も行う。営業~製造まで一気通貫で発注に即応させたい。これによって黒字必達を図りたい」とした。


―社長就任にあたっての抱負は?
「きちんと利益を継続的に出せる会社にするため(社長として、行うべき事業計画を)ただ、粛々と進めていきたい。これに尽きると考える」

―建販分野などコロナ禍の影響は?
「電線工業会がまとめた(直近7月までの月別)出荷銅量からみると総合計は、21年4月以降、前年同月比で毎月増加で推移している。これは電気機械や自動車部門が伸びたためだ。しかし、建販部門は、不要不急の工事の先延ばしなどがあり、大半が減少し厳しい情勢が続き、今後とも懸念される」

―御社の注力製品と注力技術については?
「建販3品種(IV、CV、CVV)と1~3万Vクラスの高圧ケーブル、活線診断装置、部分放電装置などに傾注している。建販3品種は、しっかり作り込む必要がある。次に高圧ケーブルは、全国の様々な太陽光発電の案件用に引き合いが活発。さらにデータセンター(DC)用途も需要が動いている。活線診断装置は、各種の民需産業用工場やプラントが老朽化し、設備更新の時期を迎えているほか、工場などの設備投資向けに少しずつ動いており、これが本格的に立ち上がってくることに期待したい。ただ、コロナ禍で先行きの懸念は残る」

―通信分野向け注力製品は?
「通信分野では、高周波同軸と光ケーブルである。高周波同軸は、5Gなどの携帯電話基地局インフラ整備向けに需要が好調である。光ケーブルは、DC用途に需要が上向いている。とりわけSWR(スパイダーウェブリボン)/WTC(ラッピングチューブケーブル)構造の細径高密度型光ケーブルや、光デバイスなどの需要増が期待されている。特に6千912心の細径高密度型光ケーブル(SWR/WTC)は、大型DC向けに最適だ」

11~33kVCVなど期待 電力の型式認定を取得

―御社の20年度業績と21年度の業績見通しについては?
「20年度の通期業績は、主にコロナ禍の影響などを受けて、売上高594億7千300万円(前年度比19.6%減)、営業利益23億9千100万円(同15.6%減)、経常利益23億2千100万円(同14・4%減)、当期純利益15億9千100万円(同20.7%減)と減収減益だった。
21年度上期業績はまだ集計していないが、銅価高で売上高は目標を達成できそう。ただ、出荷銅量は、コロナ禍もあり前年同期を下回りそうだ。
21年度の通期事業計画は、増収で利益は前期よりは若干減少といった数字で設定した。増収は銅価の高止まりが大きい。21年度通期を上期、下期で分けると、売上高と営業利益とも、それぞれ半分ずつとみている
製品別には、3品種など建販電線事業にしっかりと取り組む。また、基地局用高周波同軸と光ケーブルは、堅調に推移する見通し。11、22、33のCVケーブルは、電力会社や民間企業の工場、DC、太陽光発電向けで期待される。
大手電力会社から受注する際には、まず電力ケーブルなど各社・各品種の型式認定を、それぞれ取得することが条件。当社は20年10月から21年8月に掛けて、その認定を取得し、FDCブランドで納入できるようになった」

―御社の21年度事業戦略は?
「この状況下、銅価が高止まりすることを想定しながら、事業展開しなければならない。顧客は、発注を先延ばししたり、また、期限ギリギリまで発注をかけなかったりすることもある。そのため、小回りを効かせ、短納期の需要にも対応していく。営業から製造まで一気通貫で、即座に発注に対応したい。特に工場の生産態勢が大事になる。工場では、独自のデジタルものづくりを導入し、それに即応でき優秀と自負している。再三述べるが、こうしたことで黒字必達を図る」

デジタルものづくり22、23FYに全社展開

―電線のアルミ化への対応は?
「電線のアルミ化の潜在需要は、あるとみている。従って、いつ本格的なアルミ化需要が発生しても、対応できるよう準備し、その態勢で臨んでいる」

―銅価高や副資材高、配送費のアップへの値戻しは?
「特殊配送については、顧客からも理解を頂き、かなり浸透している。銅価高や副資材高に伴う値戻し交渉も当然、進めている。ただ、まだ満足と言えず、今後とも根気強く、値戻し交渉をしっかりと推進していく」

―物流面での取り組みは?
「システムソフトの更新も含むAIやIoTを用いて、生産効率の改善を進めているところである」

―デジタルものづくりへの取り組みは?
「数年をかけて、デジタルものづくりへの取り組みを進めてきた。それが立ち上がり今後、運用試験を実施し、22~23年度頃にデジタルものづくりを全社的に展開したい。デジタルものづくりとは、例えば、顧客が発注したA商品の生産について、B工場のC製造ラインにおいてD工程を経て、次はE工程に入るなどのことが、支店や本社の営業担当者などのパソコン上で、把握できる。さらにA商品は、いつ工場から出荷され、どのルートの物流を辿り、顧客の手元に、何日に届くのかが分かる。つまり、デジタルものづくりは工場の製品を、見える化することである。
また、とかく電線は、どれも同じであり、顔のない製品、無味乾燥と言われがちである。生産工場や製造ルート、物流経路が明らかになることで、製造する方も、使う方も、何か、少しでも認識を深め、愛着に近いものを持っていただければと思っている」

―御社の中期的な事業戦略は?
「常に、新製品の開発や販売に力を注ぐことはもちろん必要である。同時に物量が多い建販3品種などの建販電線について、しっかりと作り込み、顧客に短納期で対応することだ。同時にキチンと利益を出せる体質に改善していくことである」

―今年度の御社の最重要課題は?
「いくつかあるが、しいて絞ればきちんと利益を計上することである」
◇ ◇ ◇
【好きな言葉・モットー】赤字は罪悪、【趣味】読書、【スポーツ】ゴルフ。

電線新聞 4256号掲載