富士経済 太陽電池の国内世界市場調査 SDGsやESG追い風に 脱炭素化に貢献

富士経済はこのほど、SDGsやESGの広がりを追い風に脱炭素化に貢献する再生可能エネルギーとして自家消費型への移行がみられる太陽光発電システムの国内市場ならびに、販売量が拡大する一方で激しい価格競争により市場をけん引する中国企業も淘汰の波に晒されている太陽電池の世界市場を調査した。

■自家消費型太陽光発電システムの国内市場

太陽光発電システム(PVシステム)全体の市場は、2009年11月からの余剰電力買取制度により住宅向けの導入が加速し、2012年7月からの固定価格買取制度により非住宅向けが急拡大し、2015年度が市場のピークとなった。2018年度は過去にFIT認定を受けた未稼働案件の着工が進んだことから好調であったものの、2016年度以降の市場は落ち着いており、中期的には住宅向けでは余剰電力買取制度の買取価格減額によりユーザーが経済的メリットを感じにくくなっていることや、導入コストの低減が進み販売店も利幅確保が難しくなっていることから、非住宅向けでは固定価格買取制度の買取価格減額や入札制度導入による新規認定案件の減少などから縮小が続くとみられる。
PVシステムの導入は、自家消費型が増えている。住宅向けでは、余剰電力の買取価格の引き下げにより、蓄電システムとのセット導入や住宅向けPPAモデルの活用など、自家消費を前提とした導入が増えつつあり、中長期的には自家消費型が標準化していくとみられる。非住宅向けでは、導入コストの低減に加え、環境省や経済産業省による補助制度の拡充により、FITを活用した全量売電よりも自家消費型の方が投資回収期間を短縮できる事例が増えている。契約電力が低いほど電力単価は高くなるため、低圧〜高圧500kW未満の需要家は経済的メリットを得やすくなっており、採用が広がっている。2025年度以降は自家消費型がけん引することでPVシステム市場も再び拡大するとみられる。2030年度の自家消費型PVシステム市場は6277億円が予測され、住宅向けで10割、非住宅向けで6割程度を自家消費型が占めるとみられる。

■第三者所有モデル(PPAモデル・リース)の国内市場

顧客の自家消費を目的に、サービス事業者が顧客の所有する建物の屋根などにPVシステムを設置して発電電力を提供するPPAモデルと、PVシステムを毎月定額で貸与するリースを対象とする。FIT売電単価と電力系統からの買電単価の価格差が小さくなった2017年度以降本格的に市場が形成され、太陽電池メーカーやエネルギーサービス事業者などが参入している。契約期間が10年以上の長期になる一方で、初期導入費の負担なしで電気代を削減でき、CSRの一環として環境価値も獲得できることから採用が増えている。
住宅向けでは、中小ビルダーがユーザーの費用負担感を軽減できる第三者保有モデルを活用してPVシステムを提案するケースが増えている。今後はサービスの認知度向上により、新築戸建住宅におけるPVシステムの導入形態の一つとして定着していくとみられる。非住宅向けでは、商業施設や文教施設、医療・福祉施設、公共施設、工場、大型倉庫などの屋根設置が多い。FITにより大規模なPVシステムの設置・検討は一巡しており、第三者所有モデルでは中小規模の案件が多い。
将来的にはPVシステムの導入コストが低減することでサービスの利用が減少していく可能性もあるが、FITを活用した投資型から自家消費型への過渡期である現在、効果的な導入手法であり、市場は2030年度に2019年度比27・1倍の1571億円が予測される。

 ●太陽電池の世界市場(年次:1月〜12月)

太陽電池の世界市場は導入コストの低下と各国の脱炭素化に向けた政策を受けて、10年以上にわたって出力ベースで拡大を続けている。2019年は2018年に続き、中国、米国、インド、日本が多くの導入を果たし、欧州や新興国でもGW単位の導入がみられたことから、拡大が続いた。
一方、金額ベースでは生産効率の改善と発電性能の向上に加え、参入メーカーによるシェア獲得競争激化もあって価格低下が進み、2019年は大きく縮小した。2020年は新型コロナウイルス感染症の影響により需給バランスが崩れたことで価格低下が続いており、今後も市場は伸び悩むとみられる。
種類別では9割以上が結晶シリコン系であり、その中でも変換効率の高いPERCタイプの単結晶シリコンの比率が高まっている。薄膜系は薄膜シリコンやCIS/CIGSから撤退する企業が増加しているが、新型・次世代型の色素増感太陽電池、有機薄膜太陽電池、ペロブスカイト太陽電池を商用展開する企業が増えている。新型・次世代型は、発電事業用ではなく建材一体型太陽電池やIoT電源など、結晶シリコン系と競合しない領域での展開が進み、中長期的には金額ベースでの伸びが期待される。

 ●太陽電池の国内市場(年度:4月〜3月)


2019年度の市場は、過去にFIT認定を受けた未稼働案件の認定失効や買取期間短縮などの期限が迫ってきたことを受け、未稼働案件の着工が2018年度に続き進んだものの、特別高圧で特需が見られた2018年度の反動があり、出力ベースの市場は縮小した。また、国内でのグローバル価格の浸透により価格低下が続き、金額ベースでは、出力ベース以上の大幅な市場の縮小となった。
国内の住宅向けの太陽電池の価格は世界的にも割高であったが、価格低下やPPAモデルの普及などにより顧客の開拓が進んでおり、長期的には住宅のPVシステム搭載率が上昇していくとみられる。非住宅向けでは、過去にFIT認定を受けた未稼働案件の着工による需要が中心であり、未稼働案件が整理される2021年度以降は、市場が落ち込んでいくとみられる。

電材流通新聞2020年10月8日号掲載