インタビュー 新社長に聞く MMカッパープロダクツ 濱田勝治社長

21年度 過去最高益、22年度 三菱マテと連携強化
5~10年先を見据えた人材育成が課題

MMカッパープロダクツ 濱田勝治社長


銅加工事業の玉川製作所、三宝フォージング、電線・ケーブル製造の菱星尼崎電線が統合して誕生したMMカッパープロダクツ。濱田勝治新社長は21年度の事業動向について「菱星尼崎電線は自動車向けが好調だった。銅価の高騰もあり、過去最高益の業績だった。玉川製作所は圧延事業が好調で順調な推移、押出製品が主力の三宝フォージングは事業集約を行ったので、今後の業績改善が課題」と述べた。また、22年度については。「今回の統合による効果もあり、三菱マテリアルとの連携を進めて、21年度の業績を上回る生産活動を展開していきたい」と語った。


 ―新社長に就任しての抱負は?
「大変な重責だと感じている。MMカッパープロダクツは、銅加工事業の中でも玉川製作所、三宝フォージング、菱星尼崎電線のそれぞれ業種の異なる三社が統合して誕生したという経緯があり、三社の業務を整理し、三菱マテリアルグループの一社として連携強化を図り、社会貢献できる会社へ成長する体制を作っていく。
まずは、三菱マテリアル銅加工事業本部のグループ会社として、また、押出線材の川下を担う生産会社として、伸線技術、鍛造技術、新合金生産技術を生かす生産改革を進める。特に当社の極細伸線やエコブラス関連、銅合金線の伸線・撚線の技術力強化を図り、三菱マテリアルの提供する銅合金製品のラインナップを拡大し、生産・販売に寄与できるよう力を入れていきたい。
さらに、三菱マテリアルの三宝製作所内にある玉川製作所三宝事業所と三宝フォージングを統合したことで、三菱マテリアルの三宝製作所との距離が近くなった。業務連携を図り、より有効な交流、人材活用、業務適正化を進め、持続的な成長を見据えた経営を実現していく」

 ―統合によるガバナンスの強化は?
「伸銅の2社と、電線製造の1社という、異なる業種の3社が統合された。これまでは各社がそれぞれのガバナンスを実行してきたが、今後は企業経営資源を有効活用し、機関決定のスピードアップを実行する。
特に、重複業務などを整理して、有効的な業務配置や人員配置ができるようになることから、品質管理や事務管理面などで、より効率的な管理体制の強化を図っている。
また、人材育成面では、現状では三菱マテリアルからの出向人材が多いが、今後はプロパー人材の育成にも力を入れていく」

自動車向け事業で過去最高益

 ―御社の注力製品は?
「三菱マテリアル開発の銅合金の加工に力を入れている。製造品は線材関連製品が65%、押出関連品が35%を占める。ともに自動車(EV)向け、および鉄道向けが主力だ。このなかで銅合金線の極細線・撚線は、菱星尼崎電線の技術力を生かして製品力を強化していく。
また、押出品の有効材料であるエコブラスを代表とする、環境に配慮した銅合金製品も強化する。三菱マテリアル開発製品のラインナップを充実させ、いかに付加価値を付けてユーザに提供できるかを念頭に置いて、生産体制を強化していく」

 ―国内の生産拠点については?
「尼崎工場(本社)と、堺の三宝工場がある。尼崎工場では銅合金線の伸線・撚線、押出伸線中心に、線材加工の生産設備を強化していく。三宝工場は圧延事業が主力。今後は生産力アップに注力する」

―21年度の事業動向は?
「菱星尼崎電線では、自動車向けが好調だった。銅価の高騰もあり、過去最高益の業績だった。玉川製作所は圧延事業が好調で順調に推移している。押出製品と主力とする三宝フォージングは事業集約を行ったので、今後の業績改善が課題だ」

 ―22年度の事業見通しは?
「厳しい環境下にある。自動車産業においては、ロシアのウクライナ侵攻による半導体不足で、生産台数が落ち込んでいる。今回の統合による効果を生かし、三菱マテリアルとの連携を進めて、21年度の業績を上回る生産活動を展開していきたい」

 ―自動車向け事業については?
「供給体制を強化して、国内外のユーザに当社の技術力・製品をアピールする。特にEV関連製品には注力していきたい。
半導体やワイヤハーネス不足は、材料を供給する側としては追い風と考えている。資材不足による設備体制の遅れはあるが、設備保全を強化して早めに対応している」

 ―御社の中長期的な計画は?
「3社が統合されたことによりグループガバナンスを強化し、生産設備の合理化、伸線・撚線技術開発などを今後5年間で進めていく。銅合金の伸線技術は高度化している。いかに細く、いかに強く伸線できるかという当社の技術力を生かし、開発した製品をユーザにスピーディに届けていく」

会社説明会や学校への求人で新規人材確保

 ―御社の最重要課題は?
「最も重要な課題は人材確保だ。現状の当社の知名度ではまだ人材が集まりにくい。プロパーの人材を強化することは従来からの課題だったが、今後5~10年先を見据えて人材を育成していくことが重要だ。これまでは中途採用や三菱マテリアルからの人材支援が多かったが、ここ数年は合同の会社説明会に参加したり、新卒求人を出すなど、新規人材採用に乗り出して対策を取っている」

 ―カーボンニュートラルへの取り組みは?
「省エネ活動、代替電力・太陽エネルギーの使用などに取り組んでいる。尼崎も堺も瀬戸内海環境保全特別措置法の対象地域にあたり、廃液の排出や年間排水量などに厳しい規制がある。こうした環境に対する配慮は以前から行っており、今後も取り組んでいきたい」

【略歴】

濱田勝治(はまだ・かつじ)氏=1957(昭和32年)年9月16日生まれ。80年4月三宝伸銅工業株式会社(現三菱マテリアル)に入社。10年4月三菱伸銅(現三菱マテリアル)名古屋支社長、11年4月同社東京支社長、13年4月同社圧延事業部営業部長、15年4月同社執行役員三宝製作所副所長兼菱星尼崎電線取締役、19年4月同社執行役員兼菱星尼崎電線取締役社長、20年4月菱星尼崎電線取締役社長を経て、22年4月MMカッパープロダクツ社長に就任。

電線新聞 4283号掲載