経産省は2月10 日、第一種電気工事士の取得に必要な実務経験年数を5年から3年に短縮する電気工事士法施行規則の一部改正を行い、公布。これによって、令和3年4月1日以降に第一種電気工事士免状の交付申請を行う場合、合格日にかかわらず、合格者の必要な実務経験は3年以上となる。
●従来の制度
これまで、第一種電気工事士免状を試験で取得する場合には、試験の合格に加えて、大学、高専の電気工学系卒で3年以上、それ以外は5年以上の実務経験が必要とされてきた
(第1図)。
●実務経験の趣旨
実務経験は、本来、電気工事に関する熟練した施工技術、臨機応変な対応力、新しい技術への吸収や適応力などを身につけておく必要があるため設けられたものである。
●環境の変化
①作業の効率化
第一種電気工事士制度を創設した昭和62 年当時と比較すると、工具や施工方法等の改善により作業が効率化していることを受けて、同省は昭和62 年と現在の作業時間を比較。その結果、作業時間は約34%短縮して
いることが判明した(第1表)。
これを計算してみると、5年×0.34=1.7 年の削減となるため、5年-1.7 年≒3年。
したがって、当時の電気工事5年分は現在の3年分におおむね相当することが実証された。
②学歴差の希薄化
アンケート調査によると、大学、高専の電気工学系卒の有無による技術的能力の有意差が希薄といった結果もわかった。
回答には「実際の現場において卒業学科による技術的な差はなく、実務経験としても3年あれば十分」という多くの意見があった(詳細は2020 年9月号10ページ参照)。
●同規則の改正
これらの環境変化を踏まえ、実務経験は大学、高専の電気工学系卒の有無を問わず、一律3年以上とすることが妥当との結論に至り、同規則第2条の4第2項の一部が改正された。
●注意点
第一種電気工事士免状取得には、今回の改正の対象となった「試験合格と実務経験」のほかに、同規則第2条の5が定める「認定」がある。
これは電気主任技術者等の交付を受けた後、電気工作物の維持、運用等を5年以上従事すると免状が取得できる制度である。
認定制度については今回の改正の対象ではないので、従来通りとなる。