- 昨今注目される客観的なイベント データ レコーダー(EDR)データによる事故解析
- 日本でも事故時の運転記録装置「EDR」の新車搭載が2022年7月から義務化
- データによる事故解析を一般的に利用可能とするためボッシュがEDRデータの読み出しを専門とする「CDRテクニシャン制度」を新設、トレーニングを開始
ボッシュ株式会社 (代表取締役社長:クラウス・メーダー 以下 ボッシュ)はこのたび、従来の事故調査方法に加え客観的データによる事故解析を多くの自動車オーナーが利用可能とするため、自動車事故時の運転記録装置イベント データ レコーダー(EDR)からデータの読み出し作業を専門とする「CDRテクニシャン」制度を12月1日に新設します。これに合わせて11月中旬に第1回「CDR テクニシャントレーニング」を開催します。
昨今、事故検証の有力な証拠の一つとして注目されているEDRデータの読み出しと解析は、自動車の専門的知識と事故解析の経験などを有し、更にボッシュの認定トレーニングに合格した「CDRアナリスト」により行われます。現在、警察機関、損害保険大手各社、調査研究機関、自動車メーカーなどを中心に、約270名※1のCDRアナリスト認定者が在籍しています。
しかし、来年7月より始まるEDR搭載義務化により事故時のEDRデータ活用の大幅な増加が見込まれているため、ボッシュはEDRデータの読み出しに特化した作業員資格である「CDRテクニシャン」を新設し、数年で1000人規模への拡大を目指します。
データの読み出し拠点が増えることにより、万一事故にあった際に、自動車に記録されたEDRデータの読み出しを近くの拠点へ依頼する事が可能となり、自動車ユーザーはEDRデータを証拠の一つとして活用した客観的で透明性の高い事故調査を要望する事が可能となります。
現在、国内の事故調査の対象となる自動車は約150万台※2に及びますが、EDRデータを活用した調査は約4000台※3と、全体のニーズに対して大幅に足りていない状況です。その大きな要因として、CDRアナリストの認定者数が少ない事が挙げられます。
CDRアナリストは、事故解析の経験、車両システム、物理法則といった知識に加え、エンジニアリング英語力を備えた技術者が5日間、40時間のボッシュ認定CDRアナリストトレーニングを受講し、修了試験に合格して認定される狭き門であり、これを乗り超えて初めてEDRデータを活用した事故調査が可能となります。
ベテランになる為にはさらに多くの調査件数を扱う必要があるためCDRアナリストを大幅に増員する事は非常に困難です。しかし、データによる事故解析をより一般的に普及するためにはEDRデータの読み出し拠点を全国に幅広く設置することが必要不可欠です。そのためボッシュは、EDRデータの読み出し作業のみを専門とした「CDRテクニシャン」制度を新設し、数年以内に1000人規模に拡大する事でCDRアナリストが実施する事故解析との連携作業により、約30%の事故調査(EDR搭載車両を対象とする)でEDRデータが活用される事を目指します。
CDRテクニシャンの認定を受けるには2日間のCDRテクニシャン トレーニングを受講し、終了試験に合格する必要があります。認定者はテクニシャン専用のCDRソフトウェアとCDR本体の購入が可能となります。
データ読み出しの元となるEDRは車のブラックボックスに例えられ、エアバックECU等に搭載されている装置または機能です。一定以上の衝撃が加わった場合そこから約5秒間さかのぼり衝突までの車両の速度、ブレーキペダル操作、アクセルペダル開度、エンジン回転数、ステアリング操舵角、ヨーレートなどのデータ及び衝突時のシートベルト装着状況、エアバック展開時間、そしてイベント終了までの衝突加速度、規模、入力角度など、最大約100種※4の情報を時系列で記録します。
米国では2000年以降、官民学でのEDRデータを活用した事故調査と研究が進み、裁判での証拠データとして多く採用されました。そして米国政府は2012年に自動車ユーザーが公平にEDRデータを活用できるよう、自動車メーカーに対し連邦規則※5にてEDR搭載車両に対しEDR記録項目の標準化とデータの読み出しツールの市場販売を義務付けました。その後、CDRアナリスト、CDRテクニシャン制度が設定され運営されています。
これらのアメリカでの実績を基に日本で、ボッシュが2017年末にCDRアナリスト認定制度を併せ正式販売して以降、警察機関、大手損保各社、研究機関、自動車メーカーでの講習の受講、CDRの活用が進み、昨今ではボッシュ カー サービス(BCS)等の整備工場、板金工場や自動車ジャーナリスト、事故調査会社など多岐にわたる自動車関連業種の方々が認定資格を取得し、EDRデータの解析が可能になりました。これにより、従来の事故調査手法である車の損傷評価、現場検証、証言に加えEDRデータを活用する事で、より効率的で、透明性の高い、事故調査が幅広いケースにおいて可能となってきています。
また、昨今普及が進むADAS搭載車両や自動運転車両など、それら車両の事故検証において何が起こったかを再現するデータとして、EDRは不可欠であること、また電子化された自動車全般においてもADAS搭載の有無を問わず事故解析に必要なデータという判断から、すべての乗用車、小型、中型商用車に対し、自動運転及びコネクティッドカーの技術策定委員会の取り組み項目の1つとして全世界共通法規内容が検討されていました。
そして今年始め、国連欧州経済委員会において2022年の7月よりEDR搭載義務化の全世界共通法規を導入する事が決定しました。また、委員会の議長国である日本でも同時期の2022年7月の新型車より同法規に準拠したEDR搭載義務化が決定されました。これに伴うニーズの拡大に対応するためにこの度、ボッシュがCDRテクニシャン制度を新設するに至りました。
※1:20201年10月現在
※2:大手損害保険会社による
※3:2021年見込み 自社調べ
※4:車種、年式によって異なります。
※5:アメリカ合衆国 連邦規則タイトル49 パート563 (49 CFR Part 563)
公式プレスリリースはこちら: 事故時の運転記録装置「EDR」搭載義務化に向けEDRデータの読み出しを専門とする資格 「CDRテクニシャン」制度をボッシュが発表 EDR取扱者を増加し客観的データによる事故解析をより身近に