エネルギー需要家企業のカーボンニュートラル実現に向けた現状・課題について調査 日本総研とアビームコンサルティング

2050年までのロードマップ 策定できると回答した企業16%

日本総合研究所(日本総研)とコンサルティング業を手掛けるアビームコンサルティングはこのほど、エネルギー需要家企業のカーボンニュートラル実現に向けた現状・課題について調査した結果を公表した。
それによると、70%以上の企業の経営層がカーボンニュートラル実現についてコミットメントを表明していた一方、企業の具体的な行動計画を示す戦略ロードマップ策定に関して2050年までのロードマップを策定できていると回答した企業は16%だった。とくに、サプライチェーンを含めたScope3(製造・輸送・出張・通勤等)に関するロードマップについては10%に留まっている。
この結果から、多くの企業において2050年カーボンニュートラル実現が重要な経営課題と認識される一方で、サプライチェーン全体を含めた温室効果ガス排出量の可視化や目標達成に向けた具体的な戦略策定が未整備であり、今後早急にアクションが必要な状況にあることが明らかとなった。
また、温室効果ガス排出削減対策については、Scope2(電力等)の削減(再エネ調達)が進展する一方、Scope1(化石燃料・天然ガス等)・Scope3の対策については課題が多く検討が困難である状況が明らかになった。とくに、Scope3の削減対策に着手できている企業はわずか30%程度に留まっており、Scope3の削減対策の課題には「取引先との連携した対策の実施」(46%)や「取引先に対するコスト負担の依頼が難しい」(43%)など、取引先との連携や取引先へのコスト負担依頼が課題として認識されている状況が浮き彫りとなった。
さらに、企業経営と統合したGXマネジメント構築の基盤となる温室効果ガス排出量のデータ管理/報告の仕組みについて「エネルギー使用量のみ」もしくは「エネルギー使用量+コスト合計値」が73%を占めており、従来の法対応を前提とした対象のみしか管理できていない状況が判明した。将来的なエネルギー価格予測するために必要となるエネルギーコストの明細データ(契約単価、再エネ賦課金、燃料・原料調整費等)まで一元管理している企業に関しては、15%に留まっていることも明らかとなった。

■GX実現に向けたポイント

日本総研とアビームコンサルティングは、企業のGX実現に向けたポイントとして「カーボンニュートラル実現を目的としたロードマップ策定」「サプライチェーンでの連携したCO2削減対策」「法対応前提のデータ管理からの脱却」「DSF(デマンド・サイド・フレキシビリティ)※2創出による新たな収益化」を挙げた。

①カーボンニュートラル実現を目的としたロードマップ策定
GX実現に向けて実施すべきロードマップを策定するためには、想定される複数の温室効果ガス削減対策を投資対効果が高い順序で可視化することが求められる。温室効果ガス削減対策の投資対効果は調達するエネルギー価格の変動にともない変動するため、市場環境の変動状況に応じて温室効果ガス削減対策の投資対効果を継続的に評価し、必要に応じて実施計画の見直すことを前提とする柔軟なロードマップ策定が必要となる。

②サプライチェーンでの連携したCO2削減対策
サプライチェーン全体のCO2削減において、企業間の連携やコスト負担が課題になっている一方、サプライチェーンの上流・下流を含めた複数企業間の連携は欠かせない。連携に向けた取り組みとしては、各社が相互に「Win-Win」となる温室効果ガス排出量算定スキームおよび削減対策モデルの構築から始めることが有効であると考えられる。

③法対応前提のデータ管理からの脱却
温室効果ガス排出量のデータ管理/報告の対象が法対応前提の対象に留まっている実態から、現在の企業のデータ管理体制では、今後の市場変化による影響への対応が困難になっている状況が明らかとなった。GX実現に向けてのエネルギー価格変動予測に基づく最適な温室効果ガス排出削減対策の選定を行うための最初の取り組みとしては、コストデータを含めたデータの一元管理が求められる。

④DSF創出による新たな収益化
今後、企業が企業経営とGXを実現し持続的に成長し続けるためには、新たな収益化をはかるビジネスモデル構築の重要性がより一層高まると考えられる。そのためにも、2050年カーボンニュートラルを企業経営におけるリスクだけではなくビジネス機会として認識し、デジタルテクノロジーや自社のアセットを活用することが重要となる。
※1:GX 企業における温室効果ガスの排出源である化石燃料や電力の使用を再生可能エネルギーや脱炭素燃料に転換することで、社会経済を変革させることを指す。

※2:DSF ここでは、需要家の敷地内(ビハインド・ザ・メーター)にある発電機、CHP(熱電併給システム)、蓄電池、電力負荷等の需要家設備を活用し創出されるフレキシビリティとして定義している。

 【調査概要】
調査名:エネルギー需要家企業のカーボンニュートラル実現に向けた現状・課題調査
調査期間:2021年9月18日〜20日
調査方法:Webアンケート(選択+自由記述)
調査対象:省エネ法および温対法の報告対象事業者(309社)
調査人数:309人

▽ホワイトペーパー全文
URL:https://www.jri.co.jp/column/opinion/detail/13135/

電材流通新聞2022年2月24日号掲載