聞いてビックリ! 事業者のための 労働安全衛生“講座” ②

電気工事士資格だけではダメ
低圧電気取扱業務特別教育

池上公一氏

 質問:電気工事士の資格を持っていれば、誰でも現場での仮設電気工事の施工ができる?
 ①できる
 ②できない

労働者を一定の範囲の電気関係の業務に従事させる場合、事業者には、特別の教育を受講させる義務があります。一定の範囲とは、充電電路の敷設もしくは修理の業務、充電部分の露出した開閉器の操作の業務のいずれか(労働安全衛生規則)で、かつ感電の恐れのある業務です。そのような業務に従事する作業者には、電気工事の資格者であっても特別教育を実施しなくてはなりません。
なぜそうなるかというと、電気工事の所管官庁は経済産業省ですが、労働安全衛生の管轄は厚生労働省だからです。つまり、経産省所管の電気工事士法は、電気工事の品質確保を企図したものであるのに対し、厚労省が所管する労働安全衛生法の定める特別教育は、作業者の安全と健康の確保を企図するもので、それぞれの目的が異なっているためです。
したがって、特別教育を修了していないと施工できませんので、質問の答えは㈪となります。
労働安全衛生トレーナーの池上公一氏は「みなさんは現場での仮設電気工事の仕事を受けることが多いと思います。その際、電気工事士の資格があれば施工できると単純に理解していると思いますが、施工に当たっては、低圧電気取扱業務という特別教育の受講が必要になります。それをせずに、万が一事故が発生した場合には、事業者の責任が問われます」と警告します。
「労働安全衛生法に規定される事業者の責任は多岐に渡っています。みなさんは十分に理解しているでしょうか。実際は、理解している経営者とまったく理解していない経営者がいるのが現実ではないでしょうか」
(内容監修:池上公一氏)

 神奈川県電気工事工業組合が6月に開催した安全大会での内容をもとに、労働安全衛生措置についてポイントごとにシリーズで報告します。

電材流通新聞2018年9月6日号掲載