まず責任問われる事業者 労安法上の刑事責任
池上公一氏
事業者は、会社の仕事上で発生する労働災害の危険から労働者を保護する法的責任を負っています。会社は、雇用する労働者に機械や器具などを提供したり指示を与えたりして労働者の労務を支配下において業務の遂行をさせているからです。
そこで労働災害が発生したときには、事業者は四つの責任を問われることになります。刑事責任・民事責任・行政上の責任・社会的責任です。
刑事責任:労働者を業務上で死傷させた場合は、刑法上の業務上過失致死傷罪に問われたり、あらかじめ定められた法令による事業者の災害防止措置を怠って労働災害を起こした場合は、労働安全衛生法上の刑事責任などを問われたりすることがあります。
民事責任:当該事故について使用者に安全衛生管理上の違反があった場合、被災労働者や遺族から不法行為責任、使用者責任を問われて、損害賠償金を請求されることがあります。
行政責任:事業者への指名停止処分、免許の取り消し、機械等の使用停止処分などがあります。
社会的責任:社会的な汚名を浴びたときなどは、致命的なダメージとなることもあり得ます。
刑事責任が問われ得るなどと聞くと、普通の事業者はぶるってしまうかもしれません。けれども恐いのはそれだけではありません。「労働安全衛生法上の刑事責任と、刑法上の刑事責任とでは、責任の取り方の順番が異なります」と労働安全衛生トレーナーの池上公一氏は説明します。どういうことでしょうか。「刑法上の責任は、行為者、すなわち下から責任を問われます。ところが、労安法上の刑事責任は事業者=上が責任を取るわけです」
労働災害が発生した場合、真っ先に責任を取るのは事業者だということです。「この点をしっかり理解しておいていただかないと困ります。労安法上の責任とは、事業者責任のことです」
神奈川県電気工事工業組合が6月に開催した安全大会での内容をもとに、労働安全衛生措置についてポイントごとにシリーズで報告します。