消防庁 畜舎の消防用設備等に関する報告書を公表

特例基準の明確化へ

消防庁は、畜産業の国際競争力の強化を図ることを目的とした「畜舎等の建築等及び利用の特例に関する法律」の成立(2021年5月)を受け、畜舎における消防用設備等の統一的な特例基準のあり方を検討し、報告書を11月16日に公表した。

●背景

畜舎は消防法施行令別表第一(15)項に掲げる防火対象物に該当し、面積等に応じて消火器などの消防用設備等の設置が必要となる。
ただし、管轄消防本部の消防長、消防署長の判断により、各畜舎の具体的な位置や構造等が一定の要件に適合すると認められる場合は、同施行令第32 条の特例を適用することで設置が免除できた。
ところが、その適用可否を管轄の消防長、消防署長が個別に判断しており、「地域ごとにばらつきがみられる」との指摘があり、判断基準の明確化、統一化が求められていた。

●特例適用の調査

消防庁が実施した特例適用の実態調査によると、回答のあった1,891 件の畜舎のうち、特例を適用しているものが1,875 件(99.2%)、適用していないものが16件(0.8%)であった(第1図)。

●報告書の概要

主な検討結果は以下の通りである。
(1)特例基準の適用要件
畜舎や関連施設(搾乳施設、畜舎に付随する集乳施設)や堆肥舎は、
① 防火上、避難上支障がない。
② 周囲の状況に関して、延焼防止上支障がない。という条件を満たす場合、特例基準が適用される。

(2)特例基準の内容
①消火設備
消火器以外は原則不要。

②警報設備、避難設備
警報設備、避難設備は原則不要。しかし、警報設備は、畜産経営のための簡易な事務等を行う居室が設けられる場合において、当該部分が一定規模以上となるときは設置が必要となる。ただし、専ら家畜の飼養に供する部分には、地区音響装置の設置は不要。
避難設備(誘導灯、誘導標識)は、避難上または消火活動上、有効な開口部が少ない場合は設置が必要。ただし、避難が容易である場合は不要。

③消防用水
消防用水の設置基準は、1階と2階の床面積の合計が
5,000 m2 である。ただし、木造以外の平屋建てで、高さが16 m以下の場合は、床面積が10,000 m2 に緩和される。
また、2以上の畜舎が接続される場合において、延焼防止上支障のない場合は、別の建物とみなす。

●今後の展望

「畜舎等の建築等及び利用の特例に関する法律」の施行時期(2022 年4月1日)を目途に、報告書の内容を踏まえて同施行令を改正していく。