富士経済 EV・PHV用充電器の国内市場

富士経済はこのほど、EV・PHV用充電器の国内市場を調査した。この調査では、AC普通充電器、DC急速充電器、ワイヤレス給電、充放電器の国内市場の現状を調査し、将来を予想するとともに、集合住宅向け充電関連サービスや充電ネットワークサービスなど充電関連サービスの動向についても整理した。

AC普通充電器 家庭用中心に市場拡大

●AC普通充電器のストック市場(コネクター数)

 コネクターケーブル搭載タイプ(Mode3)のみを対象とし、コンセントタイプ(Mode1・Mode2)は対象外とした。国内のEV・PHV用充電器は、AC普通充電器が市場の9割以上を占めている(2021年時点)。
2021年は、2010年から2015年頃までに設置された充電器が3G通信対応であったことから、通信規格の切り替えが必要となったため、既設機が撤去される事例が多くみられた。とくに、公共用ではフロー市場は大きく伸長したものの、既設機の撤去が多かったことから、ストック市場はマイナスとなった。2022年も引き続き撤去事例が増加しているため公共用が減少するものの、家庭用や商用車用の好調からストック市場は前年比2・5%増の8万6100個が見込まれる。今後、EV・PHVの普及にともない家庭用を中心に市場は拡大し、2035年には2021年比4・1倍が予測される。

DC急速充電器 公共用中心に市場拡大

●DC急速充電器のストック市場(コネクター数)

2021年末から2022年上半期にかけて、ABBのデュアルチャージャー(充電器本体1台にコネクターを2個搭載した製品)が設置実績を伸ばした。また、その他のメーカーも、半導体供給不足にともなう製品供給の遅れはみられるが、デュアルチャージャーの設置が進んだことから2022年のストック市場は前年比11・6%増の9230個が見込まれる。今後もデュアルチャージャーの設置数急増により、市場は急拡大するとみられる。
デュアルチャージャーの設置数急増により、2030年までの国家整備目標「公共用急速充電器3万基」の達成に向けて、国内市場の将来展望が明確になった。2025年まで現行水準の助成が継続された場合には目標達成の可能性が高まっている。市場は公共用を中心に拡大し、2030年には6・7倍の5万5千個が予測される。

●集合住宅向け充電関連サービスで使用される充電器のストック市場

集合住宅向けに認証・課金機能を搭載した充電器を導入するサービスで、コンセントタイプ(Mode1・M ode2)、コネクターケーブル搭載タイプの充電器(Mode3)を対象とした。
集合住宅向けの充電器は、利用者負担の仕組みが構築されておらず、また、分譲マンションでは管理組合の合意形成が難しいことなどから、導入が進んでいなかった。しかし、このサービスを利用することにより、認証・課金システムを活用した利用者負担の仕組みや初期費用が発生しない導入プランの提供、または導入補助金が利用できるなどの要因により2022年以降、市場は急速に拡大するとみられる。新築分譲マンションでは充電器や配線を建築計画に盛り込めるため、既築分譲マンションと比較すると導入の障壁は低く、大手マンションデベロッパーでは、今後開発する全ての新築分譲マンションの駐車区画の50%に充電設備を導入し、設置しない駐車区画にも今後の導入を見越して空配管を設置するケースがみられる。新築向けの大規模導入、または賃貸住宅への導入も進むとみられ、大幅な市場拡大が予想される。

電材流通新聞2022年10月13日号掲載