【電線新聞】トップインタビュー 古河電工産業電線の松本 康一郎社長

古河電工産業電線株式会社 松本 康一郎社長

19年度売上高見通し279億円(3%増)
アルミケーブルに傾注


古河電工産業電線の松本康一郎社長は「19FY業績見通しは、出荷銅量2万㌧(前年度見込み比4・2%増)で、売上高279億円(同2.6%増)、内訳は、汎用線約111億円(同5%増)、機能線約168億円(同1%増)とした。EM—LMFCが好調で現状、40%程のシェアを占める」と述べた。また、新中計について、「最終年度の23FYに売上高320億円(同17.6%増)を目指す。最大のテーマは新製品の開発でアルミ、電線、風力発電、半導体工場用特殊ケーブルに注力し、特にアルミケーブルはスーパーゼネコンが採用を早めており、19FY売上目標の5億円を上回る可能性もある」と述べた。


 —御社を取り巻く市場環境から伺いたい。
「建販3品種(IV、CV、CVV)など工事用汎用電線市場は、(数量で全体的には前年比数%増で推移も)当社には厳しい情勢にある。価格競争が激しく、電設、市販とも伸び悩む。そうした中でも専業向けが苦戦を強いられている。この情勢下、赤字になるような安価な受注は、受けないようにしている」

 —工事用汎用電線市場の19年度見通しは?
「東京五輪需要や首都圏再開発などに期待したいものの、収益面で楽観視できない。当社にとっては19年度も18年度と情勢はあまり変わらないだろう。この市場状況で、当社ではアルミCVケーブルなどの販促策を遂行する」

 —御社の18年度業績見込みと19年度業績見通しは?
「18年度は、15年度から4年連続で黒字を確保できそう。ただ、18年度事業計画目標からみると、機能線事業は目標値をクリアしたものの、(建販3品種等の)汎用線事業は大幅に割り込んだ。そのため18年度業績は、出荷銅量が約2万㌧(前年度比18%減)となり黒字も、売上高272億円(同9%減)と減収の見通し。事業別の売上高前年度比は、機能線が約5%増、汎用線は25%減少した。
19年度事業計画は、出荷銅量が約2万㌧(18年度見込み比4・2%増)で、売上高279億円(同2・6%増)となり増収、増益に設定した。売上高の内訳は、汎用線が約111億円(同5%増)、機能線は約168億円(同1%増)とした。
従来から、汎用線の出荷量(実績)をキープしながら、機能線事業を伸ばす戦略だった。しかし、機能線の出荷量が伸びるのと反比例して、(市場価格の低下等があり)汎用線出荷量が目減りし、双方の売上高は16年度から逆転した。当社では、付加価値が高い機能線事業に注力するものの、汎用線事業についても、決して手を抜くことはしない」

舶用線製品も値上げ浸透へ

—ヤマト運輸や日本郵政などが配送費を値上げしているが?
「顧客と物流費高の実費分値上げ交渉を進めているところだ。一部顧客から理解を頂いており、今後とも根気強く値上げ交渉を、引き続き進めていく。元来、当社の収益性は低いため、そうしないと、さらに収益を圧迫するからだ。
また、舶用線製品も、値上げは認められた」

 —御社の事業戦略については?
「新製品に力を注ぐ。新製品では、銅とアルミを用いた『ハイブリッド分岐付ビル用ハーネスケーブル』や高機能型低圧アルミ導体CVケーブル『らくらくCVT』のアルミ電線と、風力発電用ケーブルがある。同『らくらくCVT』は従来の銅CVTより50%軽くし、絶縁剥ぎ取りに必要な力が2分の1となり、端末加工が簡単になった。さらに銅CVTに比べ柔軟で、3分の1の力でケーブルを曲げられ、引き回しが楽になり、工事作業を簡単にできるようにした。『同ビル用ハーネスケーブル』は、従来銅製品の重さを約半分にし作業の省力化に貢献するようにした。
一連のアルミケーブルの新製品は、上市立ち上げに時間が掛かった。このため同製品の18年度当初売上目標は未達になる見通し。しかし、スーパーゼネコンが採用を早めており、19年度は売上目標の5億円を上回る可能性もある。
『らくらくCVT』は、横引きが長い工場、太陽光発電向けに最適なほかに、再開発用途や一般のビルなどにも適している。特に、同『ハイブリッド分岐付ビル用ハーネスケーブル』は、ビルやマンションなどの建物に最適だ。また、アルミケーブルは、施工時に専用工具を使い、作業手順どおりに進める必要があり、ノウハウややり方がある。このためゼネコンや大手サブコンと一緒に作業手順書やマニュアルを作成して、作業者への研修などの教育を行いながら、その浸透を推進する。
一方、風力発電ケーブルでは、5メガワットのビジネスに参入して19年度の売上高目標3億円を目指す」

 —従来から傾注するノンハロ難燃・可とう性架橋PE絶縁電線EM—LMFCの取組は?
「盤内配線用・電気機器内配線用、モーターなどの口出線として出荷量が増え好調であり、現状、40%程のシェアを占める。特に配電盤用途に18年の後半から、荷動きが活発化した。セパレータの省略で口剥きの作業性が向上し、さらに抜群の可とう性によって狭小部でも簡単に配線できるのが特長で、顧客数も増えている。結果、月間平均出荷量は、18年度上期220㌧から、下期には240㌧にアップし、18年度通期では前年度比約2割増加した。19年度第1Qも同じ240㌧ペースが続く見込みで、19年度通期も好調が継続することに期待している」

LMFCシェア40%、月産240㌧(2割増)

 —データセンター(DC)向けの事業は?
「新規のDC建設が増えており、可とう性の良いケーブルにコネクタをアセンブリ加工した製品を上市するなど、古河電工グループとして、この市場にも活発に取り組む。現場作業の省力化や施工性を上げられることが特色であり、高付加価値製品として提案していく。また、DCはグローバルで伸長しており、今後も古河電工グループと連携を一層密にし、その需要捕捉に向け積極的な展開を図っていく」

 —御社の設備投資については?
「製造面では、18年度は九州工場で設備投資を実施し、1ライン新設した。19年度の主立った投資は、アルミケーブルの製造能力増強を行う。具体的には平塚工場で撚線機を増設する。また、栃木工場や北陸工場等では設備更新や保守メンテなどになる。
一方、同グループのシステム構築サービスを担当するFITEC社と組んで、本社及び各工場のコンピュータシステムを刷新する。今までのメインフレームによる処理を廃止し、オープン系システムによる処置へ切り替える。これと同時に電線新設計システムも導入する。相当な投資規模になり、刷新期間も21年度まで掛かりそうだ」

 —御社の研究開発への取組は?
「一部先にふれたが新製品開発を推進する。これはアルミケーブル、風力発電ケーブルと半導体工場向け特殊ケーブルで、19年度は新製品全体で売上高15億円を目指す」

 —中計への取組は?
「23年度を最終年度とする5カ年の新中計を策定した。23年度には出荷銅量2万711㌧(18年度見込み比1・0%増)、このうちEM—LMFCは3千240㌧(同16%増)とし、売上高320億円(同17・6%増)で内訳は汎用線事業122億円、機能線事業198億円を目指す。最大のテーマは新製品の開発で、特にアルミケーブル事業を成功させることだ。これは前中計から続いており、23年度にはアルミケーブルの年間売上高20億円をターゲットにしている」

 —19年度の最重要課題は?
「既に述べたが、アルミケーブルの年間売上高5億円の実現にある」

電線新聞 4158号掲載