山村修史ホタルクス新社長に聞く

お客様目線で小回りの利く会社に
プラスアルファの付加価値を

NECライティングは1日、全事業を新会社「ホタルクス」に承継した。その新会社の社長に就任したのが山村修史氏。日本電気ホームエレクトロニクス(HE)第1期入社の山村氏は、これからどのような新会社の舵取りをするのか。

 —はじめに、これまでの経歴からお聞きします。
山村 私は奈良の出身で、1984年に当時の日本電気HEに入社しました。就職活動をしていた時は新日本電気で面接を受けたのですが、その直後に新日本電気が日本電気HEと関西日本電気に分かれることになり、どちらに行くかを聞かれてHEに入社することを選択しました。
入社当初より水口工場(現、滋賀工場)に配属されて20年以上照明畑を歩んできましたが、2008年にマーケティングを学ぶ目的で本社にまいりました。当時の常務からは2年間マーケティングを学んでまた水口に戻ればいいという話を聞いていたのですが、2年のあいだにその常務が退任されたために引き続き本社に残ることとなり、現在に至っています。

 —新会社の社長に就任しての率直な心境をお聞きします。
山村 紙屋(司)前社長をはじめ、これまでの社長の仕事に関してはつぶさに見てきました。ただ、新しい会社となったことで、これからどのような仕事をするのか想像がつきませんでした。それゆえに、申し渡されてしばらくのあいだは不安感があったのですが、いまは腹をくくっています。

 —これまで培ってきた歴史は今後、どう継承するのでしょうか。
山村 当社の前身の新日本電気が真空管製造を始めてから、67年の月日が経っております。当然ながら、67年の歴史のなかで素晴らしいところもたくさんございます。そうした素晴らしいところを引き継ぎつつ、これまでとは扱う製品も変わってきますので新たなホタルクスの歴史をこれから創りたいと考えています。私自身も、新しいブランドのアピールに努めます。

 —社員の皆様にはどのようなお話をされたのでしょうか。
山村 昨日(4月1日)キックオフしたばかりですが、全社が一丸となってお客様目線で小回りの利く会社を目指そうと呼びかけました。営業スタッフに対しては、マーケッターという意識に立ってお客様のニーズやお困りごとをしっかり聞いてほしいと伝えています。会社が新しくなったということで、これまで以上に顧客との濃密な関係を構築しなくてはいけないと考えております。

 —新会社になってこうなるという点について詳しくお聞きします。
山村 今回、旧親会社であるNECの構造改革の一環として、当社の親会社も日本みらいキャピタルに移り社名も変更することとなりました。
社名の「ホタルクス」というのは、弊社の残光蛍光灯「ホタルック」が阪神淡路大震災を契機に開発されたことにちなんで「安全・安心・快適」という企業ビジョンをイメージさせるとともに、当社が蛍光ランプで創業したことにちなんで「蛍(ホタル)」文字で歴史を表現すること、さらには明るさの単位である「ルクス」を用いることで明るい未来を表現する意味合いが含まれております。
社名選定にあたっては従業員の方々に公募したのですが、120数件の応募でいちばん多かったのがホタルック関連のものでした。
ロゴも当社の社員が制作したのですが、「安全・安心・快適」をイメージする意味でやわらかな字体とし、色もNECの青より薄めの色としました。

 —社内の体制はどのようになるのでしょうか。
山村 親会社が変わったということで、スタッフ部門をメインにスリム化をする必要がありました。営業体制につきましては、拠点数自体は変わらないのですが、スモールオフィス化をはかり一部で支店の統廃合を実施しました。

 —扱う製品は変わらないのでしょうか。
山村 製造元・販売元の表記はホタルクスに変わりますが、製造そのものはNECブランドで引き続きおこないます。

 —今後の販売展開はどうなるのでしょうか。
山村 ルートさんや卸会社さんに関しては、とくに変更はございません。

 —LED照明に変わっていることでいろんな切り口があると思われますが、施設用の扱いを増やすことは考えているのでしょうか。
山村 基本的にはBtoBに軸足置きたいと考えていますので、そのあたりの品揃えも進めています。とはいえ、全方位の展開はむずかしい部分がございます。昨年は工場関連で防爆形の製品を発売しましたが、こうした工場や倉庫のリニューアルをメインに進めたいと考えています。

 —屋外型に関しては。
山村 まだこれからの段階です。

 —売上げの現状はいかがでしょうか。
山村 BtoCにつきましては、シーリングがメインとなっています。数量ベースでは業界とほぼ同じくらいで推移していますが、単価の下落が激しいものがあります。BtoBにつきましては、おかげさまで市場伸長よりも若干伸ばさせていただいており、売上げも2ケタ伸長となっています。
いずれにしましても、照明だけでは先細るのは見えていますので、プラスアルファの付加価値をつけなくてはいけません。NECグループから離れたことで向こう2年間は新会社としての基盤づくりにしっかり取り組むとともに、3年目以降の成長に向けたプラスアルファの商材の仕込みも進めたいと考えております。

 —住宅用と施設用の比率は。
山村 蛍光ランプを除いたら住宅用65%、施設用35%ですが、蛍光ランプを含めると住宅用55%、施設用45%となります。

 —取引先との関係はどうなるのでしょうか。
山村 重要な取引先の方がたには、紙屋前社長とNECの松倉(肇)常務とともに新会社以降に関するご説明をさせていただき、ご理解いただいたものと受け止めています。とはいえ、NECグループを離れるということになりますので、これまで以上に丁寧な対応に努めなくてはならないと考えております。

 —生産拠点は滋賀工場になるのでしょうか。
山村 はい。これまで通り、滋賀県の水口で生産します。

 —蛍光ランプの製造についてはどうなるのでしょうか。
山村 さいわい製造の皆様も残っていらっしゃいますので、引き続きしっかりと製造・供給します。資材関係がどんどんシュリンクするなかで調達先の確保がより重要な課題となりますが、お客様のニーズがある限り最後まで生産を続けたいと考えております。従来より、蛍光ランプはずっとやらせていただいていますが、最近では日立さんが撤退されたぶんの引き合いをいただいていますので引き続き製造します。

 —海外での展開についてお聞きします。
山村 LEDに関しては、メイドインジャパンの流通はむずかしいものがありますので様子見をしています。

 —住宅着工戸数の減少で国内需要が期待できないなかで、海外で先手を打つ必要もあるかと思われますが。
山村 居住空間・執務空間の海外展開は、正直むずかしいものがあります。

 — 航空機着陸閃光誘導装置「EFAS」についてはいかがでしょうか。
山村 待望のLED化がようやくスタートし、第1弾として昨秋に成田空港に納入しました。「EFAS」には、民間の空港に多く納入する連鎖式と自衛隊基地に多い埋設型の2種類があります。埋設型に関しては千歳基地で実証実験が終わったところで、今年度中には認可をいただき他の基地にも納入する予定にしています。
海外展開に関しても、「EFAS」のほうが活路を開けるのではないかとみています。海外の認証をあらためて受ける必要はあるのですが、国内向けの開発がひと段落すれば海外向けにも力を入れたいと考えています。

 —IoTへの対応についてお聞きします。
山村 先日、第1弾として「IoT照明器具による異常検知ソリューション」の実証実験を開始しましたが、「安全・安心・快適」の観点からもどんどん拡げていきたいと考えています。

 —2017年のライティングフェアでも展示されていたかと思いますが。
山村 おっしゃる通りです。照明器具というのは、部屋のいちばん良い位置に取り付けられていますが、その長所を有効活用できないものかと考えました。まずは住空間から独居老人のみまもりや高齢者施設で使っていただけるものということで、安否確認としての有効性を実証したいと考えています。それとともに、地域との連携を含めてうまくつながることができれば言うことがありません。

 —独居者の孤独死も増えていると聞きます。
山村 駆けつけサービスとかを付けるとなれば検討するのに時間もかかってしまいますので、まずは声かけの段階からスタートします。

 —新年度ということでほかに新製品をお考えでしょうか。
山村 やはり、「安心・安全・快適」を目指す観点から、今年度中には防災照明をリリースできればと考えています。蓄電池などがじゅうぶんに備わっていない地方の公民館などに「安全・安心」を提供できることを望んでいます。

 —ZEHとの連携はどうお考えでしょうか。
山村 現状は新築になかなかリーチできておりませんので、もう少し先の話になると考えます。

 —最後に新会社として電材店あるいは工事店に対してのアピールをお願いします。
山村 はじめにも申しましたが小回りの利く会社を目指し、営業マンがマーケッターとしてお客様目線で一生懸命ニーズや困りごとを掘り起こし、電材店の皆様、工事店の皆様ともいままで以上に緻密な営業活動を展開してまいります。

——新会社スタート直後のお忙しいなか、ありがとうございました。

電材流通新聞2019年4月11日号掲載