建販案件が目白押し 健全な事業存続に向け、物流費分の値上げ急務


建販需要が活発に動き出した。業界筋からは「このままだと19年度は、エコ電線をはじめ、建販電線の供給がタイトになることも懸念される」とした声が出始めた。五輪需要は呼び水に過ぎず、最大要因は、都市再開発案件と特区絡みの東京・都市再生プロジェクト、それにインバウンド関連のホテル建設やリニア中央新幹線案件や風力発電向けなど、需要が目白押しにあるためだ。そうした需要は20年度以降も続く見通し。一方、「この時期こそ、物流費アップや適正利益の確保が必要だ」として値戻しを行う企業が増えた。


住電日立ケーブルは「物流費の値戻しについては、4月1日から(従来価格プラス約2〜5%の値上げを)個別に交渉しながら実施させて頂いているが、ユーザーの理解を、あらためてお願いしたい」(同社・門田社長)と強調する。
物流費高にともなう値上げを打ち出しているのは、同社に限らず、何社もあり、それぞれ独自に実施している。条件は、どこの企業でも同様なためだ。
要因は、人手不足のさなか、建物の建設工期のズレに連鎖し、建販電線ケーブルの納期もズレている。そのうえ、数多くの案件やプロジェクトなどが重なり、エコ電線をはじめ建販電線の供給が、ひっ迫しそうな懸念が出始めたためだ。
実際、需要の対象となっている案件などを具体的に見ると、「東京五輪施設関連」、「インバウンド関連のホテル建設」、「リニア中央新幹線のトンネル向けエレベーター関連需要」、「風力発電等の再生エネルギー向け案件」、「公立小中学校のエアコン設置拡大にともなう需要」。
さらに都市再開発案件と特区絡みの東京・都市再生プロジェクトが数多くある。それをザッと掲げると、

①東京駅周辺の日本橋、八重洲、京橋(日八京)エリアと大手町・丸の内、有楽町(大丸有)周辺の再開発。
②田町・芝浦の20年「高輪ゲートウェイ」駅開業
③「勝どき東地区第一種市街地再開発事業」、
④東急電鉄が軸に進める渋谷駅周辺の再開発、
⑤豊洲エリア再開発事業、
⑥JR「川崎」駅西口の大規模開発
⑦3つの大型再開発と交通インフラ整備が進む虎ノ門エリア再開発
⑧JR飯田橋駅改良や再開発
⑨JR国分寺駅北口の開発
⑩JR大船駅北第1、2地区の開発
⑪JR小岩駅周辺の再開発
⑫JR武蔵小金井の高層再開発ビル建設
など山積している。

一連の需要増に加えて、消費税増税前の駆け込みなど、供給や物流面での混乱が懸念されるイベントも控えている。
そういった時期だからこそ、しっかりとユーザーにモノを出荷あるいは届けられるように、各電線企業は、それぞれ適正利益の獲得に努力し、事業を健全に存続させることが急務になっている。

電線新聞 4160号掲載