【電線新聞】インタビュー新社長に聞く タツタ立井電線 高橋靖彦社長

高橋靖彦新社長

特長はワンストップ生産、三位一体でシナジー発揮


タツタ立井電線の高橋靖彦・新社長(兼タツタ電線取締役常務執行役員機器用電線事業本部長)は「製品をワンストップで生産できるのが当社の強みだ。(同じタツタ電線傘下の)中国電線と中国・常州拓自達恰依納(常州タツタ)も、それぞれ特長がある。この3社を軸に、タツタ電線グループの機器用電線事業全体でシナジーを出す。いわば三位一体の戦略を推進する」としたうえで「技術陣を当社に集中し増員させ、ニーズに即した開発態勢を整え、高付加価値な高力ケーブルなどをメインに、新製品やカスタム製品を増やす。同時に当社ブランドの浸透を行う。また、市場は中国の方が大きいために、常州タツタの事業にも一層注力する」との述べた。


 —御社ビジネスを取り巻く市場情勢は?
「FA・ロボット電線ケーブルの市場は、18FY下期から米中貿易摩擦の影響等で鈍化した。19年2、3月も、工作機械や半導体製造装置、FA・ロボット用途が冷え込んだ。19FYは、上期が忍耐の時期で、下期から斑模様ながら回復することに期待している。また、中長期的には、拡大傾向を辿るだろう」

—昨年7月に社長に就任され、今年1月から御社は業務を開始したが、今後、目指す姿は?

「①タツタ立井電線、②中国電線工業、③中国・常州拓自達恰依納(常州タツタ)の3社を軸に、タツタ電線グループの機器用電線事業全体(=グループ)でシナジーを発揮したい。従ってタツタ電線の長期ビジョンのスローガン『Advanced&Niche(アドバンスト・アンド・ニッチ)2025』に沿って、ニッチでも高付加価値な製品で高収益を計上することである。例えば、顧客が工場を設計する段階から、全ての最適なFA・ロボット電線ケーブルをワンストップ生産で提案できる体制にし、これを強みに市場開拓を図る。それを踏まえて、タツタ立井電線の社長とタツタ電線の取締役常務執行役員機器用電線事業本部長を兼務し、司令塔役を務める」

—タツタ電線における御社及び機器用電線事業の位置づけは?
「タツタ電線の主柱3事業(①通信電力インフラ事業、②電子材料事業、③機器用電線事業)の一つを担う。タツタ電線では25年度連結目標を売上高1千億円(17年度比約2倍)、売上高営業利益率10%に設定しており、当社など3社グループは第3の主柱として業績向上に貢献したい」

3社連携も製造等で 最適に棲み分け実施

 —3社の製造品種等については?
「タツタ立井電線の特色は、導体の伸線、設計から製品化までワンストップで本社・工場(兵庫県加東市)で生産できることにある。得意品種は産業ロボット、FA用、計装用と、放送用同軸等の電線・ケーブル及びその加工品であり、導体サイズは0.05mm2〜0.5mm2余りの細ものが中心。特にロボットの内部配線である。
中国電線の強みは、自動車・半導体製造設備用、舞台照明用、風力用等の産業用設備向けの海外規格ケーブル、特殊キャブタイヤケーブル及び加工品であり、導体サイズは0.5mm2〜5.5mm2の太物がメインだ。つまりタツタ立井電線が、ロボットの内部配線が得意なのに対し、中国電線はロボットから制御盤、電源BOX等に繋ぐパワー系が専門で、2社の役割が明確になっている。
また、常州タツタは、この2社の製品をワンストップで量産できるのが特色だ。タツタ電線は工場外部に繋ぐインフラ系電線を担当するほか、営業・企画など様々な支援も行う」

—今後の戦略は?
「顧客本位を主眼に、利便性や効率性の富んだ製品開発を、創意工夫しながら推進する。この際に営業や技術などの面から、人事交流や一層密な情報交換を重ねて下地を作りながら、(昨年の7月以来、タツタ立井電線と中国電線、常州タツタ)3社で土台造りに取り組んできた。いわば三位一体の戦略を推進していく。例えば従来は、1顧客に3社で営業していたのを、窓口を一本化し豊富な製品群の中から、顧客の予算等に応じトータルで最良な提案が行えるようにする。また、技術陣をタツタ立井電線本社工場に集中して増員させ、ニーズにマッチした開発体制を整えた。汎用品だけでなく、カスタマイズ品の改良・改善や新製品開発を推進している。いずれもまだ、始めたばかりだが、顧客の反応も上場である」

—ワンストップ以外の統合メリットは?
「一部重複するが、統合メリットは、営業力と技術開発力の向上である。特に営業・販売面では、顧客に当社・再編を認識して頂くために製品・ブランドの移行期間を設けながら事業を進めている。また、営業部隊は4月から、地域別に再編成し、当社ブランドの一層の訴求を図る。ただ、ブランド定着には1年程度は掛かりそう。また、顧客数は、統合前と同じだが、市場拡大に新製品開発やワンストップでの供給が相まって1件当たりの販売額が増えた」

FA電線等の試験機 相当の台数を増加へ

 —グループ(機器用電線事業部)の19FY業績見通しは?
「19FYは増収増益を見込むが、この市場情勢では楽観できない。前半は厳しいが、それを後半でカバーし目標達成したい。一方、タツタ立井電線の19FY売上高割合は、商社ルートが3分の1、直需は3分の2となり、従来と同様だろう」

 —注力製品は?
「高性能・高付加価値な高力ケーブルを軸に、新製品やカスタム製品を増やし、細やかな品揃えを強化・充実することだ。理想を100点とすると現状の品揃えは50、60点程度だ。また、例えば、新製品では圧接コネクタ向け電線として最適である『多対シールド付きI/Oケーブル(UL20276適合)IHPSBシリーズ』等がある」

 —放送用ケーブルの取り組みは?
「計装・放送用ケーブル事業に、従来以上に傾注する。放送業界で、立井電線の同軸ケーブルのブランド力が高いため、社名を残しタツタ立井電線とした経緯がある。また、特徴ある製品を具体的に挙げると、NHKや伊勢志摩サミットで採用されたカラー同軸ケーブルTCXシリーズをはじめプロ向け同軸・音声用ケーブルや計装用ケーブル類、複合ケーブルなどに加え、プロ垂ぜんのマイクケーブル等もある。今後は4K、8Kテレビ放送の需要を捕捉し、この事業を伸ばしたい」

 —海外展開は?
「中国・常州タツタを軸に注力する。中国のFA・ロボット市場は日本よりもはるかに大きいうえ、先行きIoTや5G、EVの流れが加速すれば大幅な事業拡大が期待できるためだ。同社の特色は、タツタ立井電線など2社の製品を日本品質でワンストップにて顧客に提供できる点にある。工場は設備で満杯だが、生産能力では多少余力を残す。今後の増産は、需要見合で行うが、それが本格的に動き出す前に手を打つ。日本の2拠点は開発などでマザー工場の役割を果たし、常州タツタは量産拠点になる。また、同時に深センや上海の営業拠点などと連携し、情報収集の役割も果たす」

 —FA・ロボットケーブルの評価試験機の整備態勢については?
「評価には半年〜1年以上掛かる。従って相当の台数が必要であり、内製やアレンジでかなりの台数を増やしている」

 —御社の今年度の最重要課題は?
「タツタ立井電線のブランド力を浸透させ、同時に顧客満足度100%達成を目指す。また、先に掲げたが、19年度グループの機器用電線事業計画を実現することにある」

電線新聞 4160号掲載