【日銀】 地域経済報告 4月時点

引き続きすべての地域で「拡大」または「回復」

日本銀行はこのほど、今年4月時点の地域経済報告(さくらレポート)をまとめた。

各地域の景気の総括判断

各地域の景気の総括判断をみると、引き続き全ての地域で「拡大」または「回復」としている。前回(2019年1月時点)と比較すると、輸出・生産面で海外経済の減速の影響が指摘される中、3地域(東北、北陸、九州・沖縄)が判断を引き下げる一方、5地域(関東甲信越、東海、近畿、中国、四国)が判断を据え置き、北海道は、地震の下押し圧力が解消したことから判断を引き上げている。
こうした各地域の判断の背景には、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きな循環が働くもとで、国内需要の堅調な動きが続いていることが挙げられる。すなわち、足もとでは輸出や生産に海外経済の減速の影響がみられるものの、企業収益が総じて良好な水準を維持するもとで、設備投資は増加傾向を続けているほか、個人消費も雇用・所得環境の着実な改善を背景に振れをともないながらも緩やかに増加している。

地域別金融経済概況

【北海道】
〈全体感〉
北海道地域の景気は、緩やかに回復している。
すなわち、最終需要面の動きをみると、公共投資は、下げ止まっている。輸出は、減少している。設備投資は、緩やかに増加している。個人消費は、一部に弱めの動きがみられているものの、基調としては回復している。観光は、好調に推移している。住宅投資は、横ばい圏内の動きとなっている。
生産は、弱含みとなっている。雇用・所得情勢をみると、労働需給は引き締まっている。雇用者所得は回復している。
この間、3月短観における企業の業況感は、悪化した。

〈需要項目別動向〉
公共投資は、下げ止まっている。公共工事の発注の動きを示す公共工事請負金額は、地震後の災害復旧工事の発注などから、持ち直している。また、既発注分を含めた公共工事は、下げ止まっている。
輸出は、減少している。主要品目別にみると、鉄鋼では、緩やかに持ち直している。食料品では、中国向けの魚介類を中心に、持ち直しの動きが一服している。化学製品では、減少している。輸送用機器では、北米向けを中心に減少している。
設備投資は、緩やかに増加している。3月短観(北海道地区)における 2018年度の設備投資は、非製造業を中心に、前年を上回る計画となっている。2019年度の設備投資は、前年並みの計画となっている。
個人消費は、一部に弱めの動きがみられているものの、基調としては回復している。百貨店では、幾分弱めの動きとなっている。スーパーでは、横ばい圏内の動きとなっている。コンビニエンスストアでは、新規出店効果などから、堅調に推移している。ドラッグストアでは、新規出店効果や店舗改装効果などから、増加している。乗用車販売では、横ばい圏内の動きとなっている。家電販売では、堅調に推移している。
観光は、好調に推移している。観光客の入込みをみると、「北海道ふっこう割」の効果などから、国内客は堅調に推移しており、海外客は増加している。
住宅投資は、横ばい圏内の動きとなっている。
新設住宅着工戸数をみると、貸家は緩やかに減少している。分譲は増加基調にある。持家は足もと増加の動きがみられる。

【東北】
〈全体感〉
東北地域の景気は、一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかな回復を続けている。
最終需要の動向をみると、個人消費は、雇用・所得環境の改善を背景に、底堅く推移している。また、設備投資は、横ばい圏内の動きとなっている一方、公共投資や住宅投資は、高水準ながらも減少している。こうしたなか、生産は、横ばい圏内の動きとなっている。消費者物価(除く生鮮食品)は、前年を上回って推移している。この間、企業の業況感は、小幅に悪化している。
〈需要項目別動向〉
公共投資は、震災復旧・復興関連工事を主体に高水準ながらも減少している。
設備投資は、横ばい圏内の動きとなっている。3月短観(東北地区)における 2019年度の設備投資をみると、製造業では、維持・更新投資に加え、需要増加を受けた能力増強投資や新製品対応投資がみられる一方、非製造業では新規出店や物流施設の新設等があった前年の反動減がみられており、全体では前年を下回る計画となっている。
個人消費は、底堅く推移している。主要小売業販売額は堅調に推移している。内訳をみると、スーパーやコンビニエンスストアは横ばい圏内の動きとなっているほか、ドラッグストアは増加している一方、百貨店は弱めの動きとなっている。耐久消費財をみると、家電販売額や乗用車販売は持ち直している。
住宅投資は、高水準ながらも震災復興需要がピークアウトしているため減少している。

【北陸】
〈全体感〉
北陸地域の景気は、緩やかに拡大している。
最終需要をみると、個人消費は、着実に持ち直している。住宅投資は、緩やかに増加している。公共投資は、増加している。設備投資は、高水準で横ばい圏内の動きとなっている。
生産は、高水準ながら弱めの動きとなっている。雇用・所得環境は、着実に改善している。
この間、企業の業況感は、製造業を中心に悪化したものの、良好な水準を保っている。

〈需要項目別動向〉
公共投資は、増加している。
設備投資は、高水準で横ばい圏内の動きとなっている。大型投資の一巡や、海外経済の先行き不透明感から投資を抑制する動きがみられるものの、引き続き、製造業では能力増強・省力化投資のほか、非製造業では新規出店投資がみられることから高水準で横ばい圏内の動きとなっている。
個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善が続くもと、着実に持ち直している。百貨店・スーパー等の売上高は、食料品が堅調であるほか、高額品に動きがみられるなど、着実に持ち直している。乗用車販売、家電販売は持ち直している。
旅行取扱は、増加している。
住宅投資は、緩やかに増加している。

【関東甲信越】
〈全体感〉
関東甲信越地域の景気は、輸出・生産面に海外経済の減速の影響がみられるものの、緩やかに拡大している。
輸出・生産は足もとでは弱めの動きとなっており、企業の業況感は悪化している。
一方、国内需要をみると、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きな循環が続いており、堅調である。すなわち、企業収益が総じて良好な水準を維持するもとで、設備投資は増加している。個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、振れをともないながらも緩やかに増加している。
また、住宅投資は横ばい圏内で推移しているほか、公共投資も高水準横ばい圏内で推移している。この間、労働需給は大幅に引き締まった状況が続いている。

〈需要項目別動向〉
公共投資は、高水準横ばい圏内で推移している。
輸出は、足もとでは弱めの動きとなっている。
設備投資は、増加している。
個人消費は、振れをともないながらも、緩やかに増加している。百貨店、スーパーの売上高は、天候要因などによる振れをともないつつも、横ばい圏内で推移している。コンビニエンスストアの売上高は、堅調に推移している。家電販売は、エアコンなどを中心に増加傾向にある。乗用車新車登録台数は、横ばい圏内で推移している。旅行取扱額は、横ばい圏内で推移している。
住宅投資は、横ばい圏内で推移している。

【東海】
〈全体感〉
東海地域の景気は、拡大している。
最終需要の動向をみると、輸出は増加基調にある。設備投資は非製造業を中心に増加を続けている。個人消費は緩やかに増加している。住宅投資は持ち直し傾向にある。公共投資は高めの水準で推移している。
こうしたなかで、生産は、一部に弱めの動きがみられるが、全体としては増加基調にある。また、雇用・所得情勢をみると、労働需給が引き締まっているほか雇用者所得は改善を続けている。

〈需要項目別動向〉
公共投資は、高めの水準で推移している。
輸出は、増加基調にある。品目別にみると、北米向けの自動車関連がプラスに寄与している。
設備投資は、非製造業を中心に増加を続けている。2018年度の設備投資は、製造業・非製造業とも前年を上回り、2019年度についても製造業・非製造業とも前年を上回る計画となっている。製造業では、総じてみれば、能力増強投資や効率化投資を中心とした緩やかな増加が見込まれている。非製造業では、運輸・流通業を中心に、インフラ関連投資や省人化投資のほか、新規出店・改装投資の増加が引き続き見込まれている。
個人消費は、緩やかに増加している。各種販売指標は、振れをともないつつ増加している。
住宅投資は、持ち直し傾向にある。利用関係別にみると、持家は横ばいだが、分譲は振れをともないつつ増加している。

【近畿】
〈全体感〉
近畿地域の景気は、緩やかな拡大を続けている。
設備投資は、増加している。個人消費は、良好な雇用・所得環境等を背景とした家計の支出スタンス改善をともないつつ、総じてみれば緩やかに増加している。輸出は、緩やかな増加基調にある。住宅投資は、持ち直している。公共投資は、下げ止まっている。こうしたなかで、生産は、緩やかな増加基調にある。この間、企業の業況感は、非製造業

電材流通新聞2019年4月25日号掲載