住宅用分電盤の動向

住宅着工とほぼ連動すると言われている住宅用分電盤。8月の住宅着工は首都圏が前年同月比0.9%減の2万7263戸、中部圏が同16.4%減の8891戸、近畿圏が同8.8%減の1万737戸と足元では厳しくなっているが、ならしてみれば堅調に推移している。
野村総研の予測では、マクロ的に見れば、2016年度の97万戸から2020年度には74万戸、2025年度には66万戸、約10年後の2030年度には55万戸と現在に比べて約半分になるだろうとの厳しい見方を示している。

分電盤メーカー、卸業界、工事業界もまた、同様の見方を示している。
メーカーの見方は、足元では横ばいか減少で推移するとしている。ただ、リフォーム・リニューアル市場は確実に需要が増加している。戸建住宅は伸び悩んでいるが、マンション着工件数は堅調を示している。とはいえ、全体としての住宅着工件数は減少傾向にある。そのため、住宅用分電盤も縮小傾向にあり、各社のシェア争いは激しくなっている。
一般的に分電盤は10年から13年で取り替えなければ、不具合も出て様々な災害につながる可能性もある。しかしながら、取り替えが進まない商材でもある。
電気工事業界の見方は、住宅用の分電盤は住宅の着工件数が伸びないなか前年度と比べても落ち込みが続いており、この状況を踏まえて分電盤を今後拡大するには住宅のリニューアル市場が大きく鍵を握っているというものではないか。
都市部を中心とした築20年以上のマンションは各地に見受けられるが、今後年を追うごとに数は増えてくると思われる。
また、感震対策として感震機能付きの分電盤は、今後も着実な伸びが期待できる。高知県や徳島の一部では、南海トラフを念頭に県をあげての感震ブレーカの普及が進んでいる。
電材卸業界は、どの地域でも住宅着工数が減少するなか、分電盤も販売額が減少しているのが実情である。その対策や商品への要望は、分電盤では感震ブレーカなどが付加された高付加価値商品に期待される。
熊本などは大地震があった関係で感震ブレーカ付きの分電盤に興味を示しているが、長崎あたりでは地震の影響があまりなかったこともあり逆に関心を示していないのが実情である。どちらかといえば、雷対策の分電盤に興味を示している。
また東京は、全般的に見れば他の県より恵まれているが、一般住宅に関してはそれほどの伸びは感じられない。したがって、住宅用分電盤に関しても、それほどの伸びは期待できない。
感震ブレーカへの関心も決して低くはないが、補助金はせいぜい数百戸単位で出ている程度で、あっという間に使い果たしてしまうのが実情である。

このように、住宅の着工件数は人口減の時代に突入し、長期視点で見ると大きく落ち込むことが予想される。このような社会状況のなかで、分電盤を拡大させるためにはリニューアル・リフォームに注力する以外に妙案は浮かばない。
築20年以上経ったマンションは都市部を中心にいたる所に点在する。30年以内に70~80%の確率で発生すると言われている南海トラフや首都直下大地震など、地震列島日本の災害対策にも感震機能付分電盤の役割は大きいものがある。
現状は補助金などの問題もあり普及のスピードは遅いが、着実な需要が見込まれる。メーカーだけの力では限界もあり「工・販」と一体となって取り組むことが強く望まれる。

電材流通新聞2019年11月7日号掲載