住宅用分電盤特集

リニューアル市場が分電盤拡大の鍵握る


第25回全国地区工・製・販座談会のもよう(第1ブロック)

中国経済の減速などで、政府は景気判断を3年ぶりに引き下げた。景気動向の基調判断でも、景気の後退がすでに数カ月前に始まっている可能性が高いとの報告もされている。景気動向にも左右されやすい住宅建設、住宅着工に比例するとも言われる住宅分電盤の動向を今回は第一線で活躍している電気工事業界、電材卸業界、メーカーの代表者を集めて開いた座談会からナマの声を報告する。

前回の住宅用分電盤特集(2月21日付)では、主要メーカーに分電盤の市場動向や消費増税に伴う駆け込み需要、リフォーム・リニューアルの取り組みなどを取材した内容を掲載した。
今回は、本紙が2月に開催した「第25回全国地区電設業界工・製・販座談会」のなかから、住宅用分電盤の現状についての発言内容を抜粋して掲載する。

 全日電工連・花元英彰副会長(九州)
まず住宅用の分電盤については、住宅の着工件数が大きく落ち込んでおり、前年度と比べてもかなりの落ち込みがあります。この状況を踏まえて分電盤を今後拡大するには、住宅のリニューアル市場が大きく鍵を握っていると言えます。
都市部を中心とした築20年以上のマンションは、各地に見受けられ今後、年を追うごとに数は増えてくると思われます。一方、震災対策として感震機能付きの分電盤は今後も着実な伸びが期待できます。

全日電工連・吉村保利理事(四国)
伸びとしては大変厳しいものがあります。ただ高知県や徳島の一部では南海トラフ大地震の関係もあり、県をあげて感震ブレーカーの普及が進んでいます。当組合青年部では感震ブレーカーを地域の公民館に寄贈し、火災予防に役立てており多くの方に知ってもらう努力を重ねています。

全日電材連・末永稔副会長(九州)
住宅着工数はどの地域でも減少している現状から、当業界への影響はどうかということですが、やはり分電盤にしてもインターホンにしても販売額が減少しているのが実情です。その対策や商品への要望は、分電盤では感震ブレーカーなどが付加された高付加価値商品が出てくることもあります。
熊本などは大地震があった関係で感震ブレーカー付の分電盤に興味を示されていますが、長崎あたりでは地震の影響があまりなかったことから逆に関心を示されていないのが実情です。それよりも雷対策の分電盤に興味を示されています。

全日電材連・加賀谷哲男専務理事(東京)
全般的に見れば他の県よりは恵まれているのかなと感じております。
一般住宅に関してはそれほどの伸びは感じられません。したがって住宅用分電盤はマンション関係はそれほど伸びないのではという気がします。ただ、感震ブレーカーに関しては皆さん関心を持っておられるようですが、補助金は多くてもせいぜい数百戸単位で出ている程度で、あっという間に使い果たしてしまうのが実情です。

パナソニック エコソリューションズ社(当時)・加藤達也マーケティング本部副本部長
2030年の長期視点で見据えますと、新築住宅の市場環境は急激な悪化が予想されており、非住宅も2割程度は減少していくとみられています。
その変化を見越して、どのメーカーもリニューアルやリフォームに力を入れていると思います。
テーマにある住宅用分電盤、インターホン、HEMSにつきましては前年比では伸長しておりますが、想定以上には伸びていないのが実感です。理由としては、まず住宅用分電盤は、リニューアルをご提案してもなかなか理解してもらえないことが挙げられます。実際は、10年から13年で取替えなければ、不具合も出て様々な災害につながる可能性もあります。しかしながら、実は一番取替えてもらいにくい商材で、想定以上には伸びていません。

東芝ライテック・犬飼成治東日本支店長
市場は皆さんと同様で、住宅着工が減るなかで、やはり感震や避雷 器という部分でカバーしようという流れになっています。非住宅のウエイトが大きくなっており、リニューアルの売上げ構成比も年々伸びています。
HEMSの話をしますと昨年、北海道でブラックアウトが発生し蓄電池需要がこれまでの数倍レベルから一気に高まりました。
そのため一部で供給不足も起こりました。分電盤は12、13年経過しているにもかかわらず交換されず、安全・安心という点で、業界あげての交換キャンペーンといった啓蒙・推進を継続課題として進めねばと考えています。

日東工業・木下宏之営業副本部長(当時)
当社は現在、感震機能付分電盤に注力しています。しかし、なかなか目立って数を増やすことができておりません。マンションの資産価値をあげたい理由でニリューアルをやりたいという話や、興味を持っておられる賃貸住宅のオーナーさんなどから問い合わせがあります。
関連する補助金については、当社の本社がある愛知県長久手市はまだ補助金がついておらず、3月にやっと少しだけ付くようになりました。そうした状況ですが、リニューアル需要は少しずつですが出ており、長い目で見ていこうと思っています。

全日電工連・向山和義理事(関西)
特に教育機関で分電盤に関してですが、電気を単に分配するものということではなく、防災や防犯という観点で攻めていく必要があると思います。例えばインターホンについてはセンサー機能を付けている例があります。
公共の集合住宅では、高齢の入居者宅には、センサーが設置されていて、1日、2日単位、あるいは時間単位で、高齢者の動きを確認して、動きがない場合は警報が入るシステムになっているようです。
分電盤の機能としても、そのような機能をつけたら、違う切り口で販路が広がるのではないかと思います。
分電盤のなかに感震ブレーカーや住宅用火災警報器などを搭載して、なおかつ、通常の分電盤と変わらない価格設定をしてもらうと、我々としては更新の営業もしやすいと思います。

このように、住宅の着工件数は人口減の時代に突入し、長期視点で見ると大きく落ち込んでいくことが予想される。このような社会状況のなかで、分電盤を拡大するにはリニーアル・リフォームに注力する以外に妙案は浮かばない。
築20年以上経ったマンションは都市部を中心にいたるところに点在する。
また、30年以内に70〜80%の確率で発生すると言われている南海トラフ、首都直下大地震など、地震列島日本の災害対策にも感震機能付分電盤の役割は大きいものがある。
ただ、現状は補助金などの問題もあり普及スピードは遅いが着実な需要が見込まれる。メーカーだけの力では限界もあり「工・販・製」一体となった取り組みが強く望まれる。