電工さんの工具箱 第15回「ウォーターポンププライヤー」通称アンギラス。

名前の由来は怪獣か

 北アメリカに生息していた白亜紀後期の恐竜アンキロサウルスが水爆実験の影響で突然変異を起こして蘇り、大阪城で暴れまわった揚げ句、ゴジラにやっつけられてしまう。そう、怪獣アンギラスだ。またの名を暴龍アンギラス。そしてまた、アンギラスといえばウォーターポンププライヤーの通称である。「ちょっとアンギラ持ってきて!」などと略して呼ばれることが多いようだ。

 ご承知のように、ウォーターポンププライヤーの「アンギラス」は(株)ロブテックスの登録商標だが、今や一般名称化している。

台所用品でいえば「タッパー」のようなもの。

おかずなどを入れるあのタッパーは、米国タッパーウェア社の商品名であるため、一般的には「プラスチック製密閉容器」などと呼ばなければならない。しかし、「ちょっとプラスチック製密閉容器を持ってきてちょうだい!」とはいいにくいので、「タッパー持ってきて!」となる。ウォーターポンププライヤーという名称も長いし、略してウオポンもいかがなものか。したがってアンギラスが定着しているのだが、その形が怪獣のアンギラスに似ていることから命名されたのではないかと噂されている。あくまで噂である。また、ドイツの工具メーカーであるKNIPEXのウォーターポンププライヤーは「コブラ」や「アリゲーター」といった、これまたユニークな商品名が付けられている。確かに怪獣系というか、かみつき系の動物をほうふつとさせる工具だ。

さまざまな現場で活躍

マーベルMWP-250 ウォーターポンププライヤー 

 ウォーターポンププライヤーとは、その名の通り、水道をはじめガスや空調などの配管工事や電気工事で用いられる工具だ。クルマやバイクの整備などにも活躍する。電気工事における主な用途はロックナットやカップリングの締め付けの他、電線を挟んだり接地クランプを金属管に取り付けたりと、幅広く使用できる。

 最大の特長は、怪獣のごとき大きく力強い口だ。しかも口の開き具合を数段階で調節でき、口先が並行に開くため、太いものもしっかりと挟むことができる。柄も長いため力を入れやすいのだ。

ジェフコム寸切りボルト対応 ウォーターポンププライヤー

 電気工事士の技能試験では、取り回しの容易な小型のタイプが使いやすいようだ。前述のロブテックスやKNIPEXの他、エンジニア、ジェフコム、フジ矢、ホーザン、マーベルなど、さまざまなメーカーからいろいろなタイプが発売されている。

おまけ

 一般的な名前だと思っていたものが、実は固有の商品名や登録商標だったという例は、私たちの身の回りにあふれている。その、ほんの一例をご紹介しよう。

登録商標→一般的な言い換え

オービス→速度違反取り締まり装置

オセロゲーム→オセロ風ゲーム、リバーシ

カッター→ワイシャツ

信州味噌→信州の味噌

セロテープ→セロハンテープ

宅急便→宅配便

タバスコ→ペッパーソース

バンドエイド→ガーゼ付きばんそうこう

ポリバケツ→プラスチックのバケツ

ユンボ→パワーショベル

(参考:共同通信社「記者ハンドブック」)