ウシオライティング新社長 中森克己氏に聞く

5月にウシオライティングの社長に就任した中森克己氏に社長就任の抱負、人材育成、期待される役割、変化するLED市場への対応、市場の創造、エンターテインメント関連ビジネスの進展、取引先へのメッセージなどを聞いた。

 ――はじめに、これまでの経歴ついてお聞きします。
中森 1987年にウシオ電機に入社して、ランプの生産工場のある播磨事業所でヘッドランプなど自動車用ハロゲンランプの設計を約15年間担当していました。所属していた部署は、設計と製造を一緒に見るというコンパクトな組織でした。
自動車用照明の光源は、ハロゲンランプからHID、そしてLEDへと変わってきました。当時、カー用品店では、ハロゲンランプをコーティングしてより色温度を上げるといった商品が人気で、私どももその恩恵をうけました。
2009年にウシオグループの海外生産拠点であるウシオ蘇州(中国)の工場に出向しました。最初3年赴任しましたが、一旦日本に戻り再度蘇州に行き通算5年を蘇州で過ごしました。
2012年に一旦日本に戻ったときには、ウシオ電機のドキュメントBUという部署に1年間いました。ここでは、複写機で使われるハロゲンランプに携わっていました。多くの複写機にハロゲンランプが採用され、トナーを定着させるための熱源として使用されています。
その後、ウシオ電機の製造技術部に異動しましたが、半年後に2度目の中国・蘇州の赴任となりました。2015年10月に日本に帰任し、ウシオライティングの取締役に就任、福崎事業所(兵庫県)の責任者となりました。そして本年5月、代表取締役社長に就任しました。

 ――会社概要について紹介してください。
中森 ウシオライティングは、ウシオエンターテインメントホールディングス(HD)の一員であり、ウシオ、マックスレイ、クリスティという3ブランドを擁します。ほかにも、映像と音響のスペシャリストであるジーベックスもございます。
照明、映像、音響を統合したエンターテインメント・ソリューションビジネスは、ジーベックスと協業しながら深耕させています。
加えて産業事業、たとえば農業・漁業・セキュリティ用LED光源、露光装置・光源、光加熱・検査・測定などでLEDには置き換わらないような特殊光源、さらにはプラスチック関連、FAシステムなども担っています。

 ――社長就任の抱負をお願いします。
中森 それぞれの事業には、ウシオライティングならではの強みをもったコアがあります。その強みをいかに生かすか。市場が変化するなかでその変化にいかに対応できるかが大事であると思います。ここに力を入れたいと考えております。
同時に、ウシオグループ内で当社がどうビジネスを効率化できるかを考える必要もあります。そのためにもグループ間でさらにシナジーを生みだすにはどうすればいいか、人材育成や適材適所な人員配置なども含め取り組みます。

 ――グループとしての具体的な取り組みがあればお話ください。
中森 取り組み自体は多々ありますが、例を挙げると調達もひとつです。ウシオライティングとウシオ電機、さらにはその他グループ会社や海外の現地法人がさまざまな調達を行っていますが、安定調達をはかるうえでは人材交流、情報交換を密にすることでさらに連携を強化します。
どうやって、いまの時代の流れに乗って行くかをグループ全体でとらえてコミュニケーションを取ることが大事だと考えています。

 ――人材育成についてはいかがでしょうか。
中森 現在、事業部制を採っていますが、事業部をまたぐ案件も増えていることから、業務が一部の人に偏ることなく、平準化できるよう取り組んでいます。複数の事業部が関わる案件でも、横のつながりをもって連携できるマルチプレイヤを増やすこと、そして、育てることが大事であると考えています。
また、照明のことはわかるが制御に詳しくない、あるいはデザイン・設計に精通しているがそれ以外のことは苦手という人たちは、ローテーションを通じて少しずつ経験値を積んでもらい、いろいろなことができる人材に育てたいと思います。
私は現場での経験が長く、事業部門の各スタッフとの接点が浅かったのですが、いま社長となって社員とじっくり話をしたり一緒に顧客を訪問し直接お客様から話を聞くことで、人材育成も含むビジネス全般においてやるべきことが見えてきました。

 ――期待されている役割についてどうお考えですか。
中森 前社長がウシオライティング、マックスレイ、クリスティ日本支社の3組織を一緒にして、仕事の仕方が違う人たちを一つにまとめました。言い換えれば整地をし、土を耕し、種をまくまでしていただきました。いまは、良い根が張り、茎が伸びています。それを今度は上手に育てることを期待されていると感じています。
現場の前線には、経験を重ねてきたメンバーがいます。いま、照明にデザイン性や制御、通信、IoTなどが求められるなか、しっかり取り組んで経験値を高めながら、ビジネスも人材も成長させたいと考えています。

 ――次に、課題についてお聞きします。
中森 現在、時代の変化がとても早いことから、そのスピードに対応して一歩先を正確に読み、ビジネスをプランすることが課題だと認識しています。
たとえば従来のハロゲンランプは、販売数、生産数を見通すことができましが、LEDになってからは競合他社が増えて技術も日進月歩で向上するため、そろえるラインアップあるいは在庫といった数が読めません。
様々な課題があるなか、それぞれと真摯に向き合い舵をとります。

 ――LEDの普及が進んでいますが、市場をどのようにみていますか。
中森 光源がLEDに替わり器具も一通り替わりましたが、こうしたなか市場はもうないと捉えるのではなく、より良い製品を出せば市場に受け入れられると思います。
ウシオライティングには特長的なレトロフィットの製品があるので、大事にする事業であると考えています。
たとえばハロゲンランプ代替のLED電球、ライトエンジン、意匠性の高いLED器具といった製品にはまだ市場価値が残っていると思います。

 ――市場の創造についてはいかがでしょうか。
中森 弊社は一般照明以外にも、産業用の照明器具、機器などを取りそろえています。たとえば漁船で使うLED集魚灯は過酷な環境下でも使い続けられる耐久性と省エネ性能を兼ね備えています。また、植物育成用のLED照明は、自在な色の組み合わせと無線による調光、調色制御もできます。さらに、エンターテインメント・ソリューションビジネスでも新発想を生みだしています。
このような技術、発想をもう一度見直して、他の事業展開を図るなどで市場を創造できればと考えています。

 ――強化したい点について教えてください。
中森 弊社は、メーカー機能と商社機能を併せもつ、ユニークな企業です。
メーカーとして持つコアの一つに光源があります。私には工場出身という背景もあり光源から入っているので、そこへの意識が強くあります。
この光源を、今度は商社機能を活かしてどのように提供するかというアイディアを加味し、さらに施工・施工管理、サービスまで包括的にカバーできるワンストップソリューションサービス体制を強化します。
また、新製品に関してですが、先ほどお話しした集魚灯や植物育成分野をはじめ培ってきた技術を様々な分野へ展開することに力を入れたいと思います。
市場、そして顧客のニーズはつねに変化していますので、そういうところにアプローチできるようにしたいと考えています。
併せて、いま持っている商材や技術などをお客様にわかりやすく伝えることも強化すべきポイントです。伝え、そしてフィードバックを受け、変えることで、さらに価値ある製品が創出できます。

 ――エンターテインメント関連ビジネスの進展はどうですか。 
中森 私どもは照明設計・デザイナー様とも連携をとり、全国で照明、映像、音響を統合させたエンターテインメントビジネスを展開しています。
たとえば、鳥取県境港市の水木しげるロードをはじめ今年の4月には北海道釧路市の釧路川に架かる「幣舞橋」のライトアップに機材を納入し制御のセットアップを行いました。
また、本件は地域貢献の要素が強いのですが、ウシオ創業の地である姫路をホームとする、バレーボールのVリーグ加盟チームである「ヴィクトリーナ姫路」のオフィシャルライティングパートナーになりました。その一環として、ホームゲームを照明、映像、音響で演出していますが、重ねてきたこのような経験が活かされています。

 ――バレーボールの試合をどのように演出するのですか。
中森 近年、プロバスケットボールの試合演出がよく話題になりますが、バレーボールの試合は、ベース照明としておもに水銀灯が使われている市民体育館などでの開催が多いです。
ご存知のとおり水銀灯は、いったん消灯すると再点灯までかなり待たなければなりません。そのためゲーム前や試合のインターバルで会場を暗転させて行う演出には向きません。こうした環境のなかで、弊社は演出照明機器で会場の壁面と天井を色あざやかに染めあげたり、壁面に用意した巨大スクリーンにプロモーション映像、テレビカメラからのライブ映像を流すなど、工夫を凝らしています。
ヴィクトリーナ姫路は、今期2部リーグから1部リーグに昇格しました。これから公の場での露出が増えるかと思います。

 ――ほかに地域に根差した活動事例はありますか。
中森 姫路市も、地元チームとしてヴィクトリーナ姫路を応援することからスポンサードを通じて、副次的に行政との関係構築に繋がっていると感じています。行政と連携することで、姫路の活性化に資するライティングやイベント支援の機会を、いま以上に増やせればと思っています。
姫路での実績には、たとえば、姫路城でのライトアップがあります。今年、城内で行われた夜桜会のライトアップやプロジェクションマッピングを手がけました。桜に合わせた色調のライトアップは好評でした。
昨年末には、姫路城の三の丸広場に直径約15メートルの立方体の構造物を作って4方向からプロジェクションマッピングを行い、最後にはLDPサーチライトでの演出をしました。
また、JR姫路駅の駅ビル商業施設「ピオレ姫路」の外壁演出照明を弊社が担当しているのはご存知かもしれませんが、昨年のクリスマスの時には、特別な外壁演出プログラムを組むとともに、LDPサーチライトで巨大な「光のツリー」をつくったり演出照明機器でまわりのビル壁面を華やかに彩りました。
新しいところではこの8月、姫路市網干区で開催された「網干川まつり」で川の土手に全長約100mのスクリーンを設け、プロジェクションマッピングを行いました。
この祭りは、一昨年まで行われていたメインイベントの花火大会が中止になり、昨年は祭り自体も開催されませんでした。
そこで、花火大会に代わるメインイベントとしてプロジェクションマッピングを提案するとともにムービング・サーチライトと音響を組み合わせたライトアップイベントを企画し、地域を元気にするイベントの復活と活性化に貢献しました。

 ――では最後に、電気工事業界、電材卸業界の皆様へのメッセージをお願いします。
中森 営業に同行した際お客様から最近新製品を出していないというお声をいただきますが、今年下期にはマックスレイとしての特長ある新製品をお披露目する予定です。また、皆様のところにご紹介にあがりたいと考えています。
マックスレイというブランドは、ニッチな部分をご評価いただいていると感じています。新製品はこれまでを踏襲しつつもいままでとは少し違う新たな場所に使いたいというものにしたいと考えておりますので、どうかご期待ください。

電材流通新聞2019年9月12日号掲載