配送費高で、実費負担を電設協へ要望

3団体 電工会、配電システム工業会など
全日電材連  チラシ作成し、交渉


配送費の上昇にともなう実費分の価格転嫁が、満足に進んでいない。そのため日本電線工業会(小林敬一:会長)、全日本電設資材卸業協同組合連合会(=全日電材連、忍田勉:会長)、配電盤業界の日本配電制御システム工業会(宇賀神清孝:会長)の3団体は19年12月、ユーザーとなる日本電設工業協会へ、電線ケーブル輸送費等の値上がり分の実費負担の要望について、「電線の輸送費高騰等に関するご理解とご協力のお願い」などと題して行った。電線業界をはじめ、いずれの業界も収益圧迫にさらされる情勢下、異例な要望となった。中には全日電材連のように、この件でユーザー向けにチラシを作成しながら、値上げ交渉に一層積極的に取り組むケースもある。


電線・ケーブルの配送費高にともなった価格転嫁が、満足に進んでいない。全日本電線販売業者連合会(全電連)の19年度業況調査アンケート(103社中回収率81%)によれば、小口配送の実施比率は64.5%で、うち配送費を請求している企業は61.4%だった。つまり、小口配送を行う企業の38.6%は、今回の配送費値上げ分を含む請求も、できずにいることが判明した。

従来から、電線流通・問屋は収益率が低く、売上高経常利益率2%を確保するのが精一杯とした企業は少なくない。電線メーカーも電線流通・問屋と程度の差は僅かにあっても、大きく変わらず、電線業界にとって『適正マージンの確保』が、長年の悲願になっている。

そうしたさなか今回、ヤマト運輸や佐川急便、日本郵政などが配送費を値上げし、電線業界等の収益を圧迫している。

このため電工会などの3団体は19年12月、ユーザーとなる日本電設工業協会へ、「電線の輸送費高騰などに関するご理解とご協力のお願い」と題した要望書を発出した。

同時に、同じ趣旨で全日電材連(忍田勉:会長)と配電盤業界の日本配電制御システム工業会(宇賀神清孝:会長)の2団体とも日本電設工業協会へ、文書で要望した。

また、3団体のうち全日電材連は、要望の内容を踏まえた「チラシ」を作成し、会員企業へ配布。会員各社は、この「チラシ」を活用しながら、ユーザーと配送費の負担依頼などの個別交渉を進めている、という。

「チラシ」の概要=タイトルには、お客様各位「ご理解、ご協力のお願い」と明記。内容は働き方改革、労務問題、運送費高騰を背景に、様々なサービス提供を維持させていただくために、2事項(①配送費用負担のお願い、②車上渡しのお願い)について、ユーザーの理解、協力を得たいとした。

①【配送費負担のお願い】▽ハンドホール・ポール等の長尺物・重量物・電線切断・現場直送など、メーカーからの請求が発生する場合。▽部品等、小物の注文に関して送料が発生する場合。▽特別に高速料金・駐車料金が必要になる場合。

②【車上渡しのお願い】▽車上渡しでの納入の協力の依頼。▽納入時の安全面からも、マンション等の部屋別納入は、ご容赦をお願いする、の事項について顧客の理解・協力を求めた。文書内容は、公取委の了解を得た。

一方、電線の流通や問屋の値上げについては、ユーザーへの値上げの行い方は、大別すると二つある。一つ目が、物流経費も含めた適正な価格での値上げの展開。二つ目は、物流費高のみを切り出した上での値上げとっている。

電線問屋や電線メーカー等の各社では、双方の方式のいずれかで、配送費高の値上げ交渉をユーザーとの間で実施。昨年の前半頃に比べると、この交渉は進んでいるものの、まだ未達のケースもあり、電線問屋等の収益を圧迫しており死活問題になっている。

電線新聞 4191号掲載