【インタビュー新社長に聞く】古河電工産業電線 白坂有生社長

機能線を重視、下期挽回に期待
メルマガ集客  アルミケーブル研修会

古河電工産業電線 白坂有生社長


古河電工産業電線の白坂有生・新社長は「19FYは売上高270億円(前年度並み)、営業増益(前年度比約50%増)となり、好調な機能線事業が牽引した。20FYはコロナ禍で先が読みにくいが、下期の挽回に期待し、売上高210億円(同約3割減)、純損益で黒字を確保したい」とした。機能線事業について「長年取り組んできた差別化製品を一つでも多く開花させたい。また、コロナ禍の中デジタルマーケティングを進め、サブコンなどを軸に、約2千人にメルマガ配信で『らくらくアルミケーブルオンライン説明会』の参加者を募集し、2回の開催で延べ100人以上が参加した。今後も、メルマガ配信やオンライン、オフラインでの研修会などは継続する予定」と述べた。


 ―最近、事業再編などを実施されていることもあり、まず御社の概要から伺いたい。

「当社の事業は、汎用線事業(建販3品種など)と、機能線事業(キャブタイヤ、EM―LMFC、機器配線用電線、極薄肉被覆電線、TVカメラ用光複合ケーブル、鉄道・信号及び車両用電線、船用電線など)の二つがある。

汎用線事業の新たな展開として、当社親会社の古河電工と昭和電線ホールディングスは、建販電線3品種(IV、CV、CVV)などを扱うSFCC社(出資比率昭和電線HD60%、古河電工40%)を設立し、20年4月から業務を開始した。こうしたなか、『SFCCブランド』において、当社はSFCC社を強力にサポートしていきたい。また、当社と昭和電線CS社双方の製造拠点の特長などを発揮し、効率的かつ最適な生産が図れるように協力する。

当社工場の再編では、汎用電線・専用量産工場である北陸工場(石川県羽咋郡志賀町)の操業を昨年12月に停止し、平塚工場(神奈川県平塚市)と栃木工場(栃木県塩谷郡塩谷町)に生産を集約することで、生産性の向上、物流の効率化、固定費の削減などを図った。当社は従来の4工場から3工場(平塚、栃木、九州=北九州市門司区)体制になった」

 ―つぎに、社長就任にあたっての抱負は?

「当社は長い歴史のなか、古くからのお客様も多く、そうした方々に支えられてきた。つまりお客様が最も大事であり、お客様第一主義で取り組む。とりわけメーカーである以上、品質とサービスの向上に一層力を注ぐ。

二つ目は、全社員が一枚岩になって安全、安心に働けるような環境整備や人づくりを推進するとともに、全社員にとってやりがいのある会社にしたい。

三つ目は、新製品の開発を推進することだ。例えば、18年から上市してきた新製品『らくらくアルミケーブル』の需要が動き出した。古河電工が自動車分野で培ったアルミ電線ケーブルの技術などを活用して開発したのが『らくらくアルミケーブル』。お客様から、柔らかく、軽く、敷設しやすいと評価され、採用例が増加し、出荷は2年間で100件を上回った。年間売上高は、前年度3億円強だったが、今年度は4億円を目指し、近々20億円ほどまで伸ばしたい。反面、製品の標準化など課題も多く、しっかり育てていきたい。

また、ほかには、育ててきた製品の芽が出て、九州工場の煩忙が続いているケースもある。いずれにしても、既存の製品や新製品をしっかり育てながら、新製品開発を行うことが大切と考える」

オンライン説明会に100人以上が参加

―新型コロナの影響は?

「当然、手洗い実施、マスク着用、さらにソーシャルディスタンスの維持に加えて、テレワークなども推進している。また、コロナ禍で、様々な面で社員にストレスが溜まっている。社員同士お互いに、声がけや挨拶を奨励すると同時に、チームワークを強めていきたい。とにかく、より働きやすい会社にしたい。それが会社の発展に繋がると思う」

 ―営業や製造面でコロナの影響は?

「受注にも影響が及んでいる。例えば当社汎用線の売上高は、コロナ禍でこの間、前年同期比で約2割ほど減少している。6月頃に一旦はお客様への対面営業がかなったが、再び営業に回りにくくなった。その点、工夫を重ねている。

例えば、若手を中心にデジタルマーケティングを進めている。ゼネコンやサブコンなどを中心としたお客様約2千人を対象にメルマガを配信している。その中から希望者を募り、『らくらくアルミケーブルのオンライン説明会』を2回実施し、延べ100人以上が参加している。またメルマガを通じて参加者を募り、コロナに充分留意した上で、当社平塚工場内の研修センターで『らくらくアルミケーブルの研修会』を実施した。今後とも、こうしたメルマガ配信やオンライン、オフラインでの研修会などは継続する予定である。

一方、製造面では3工場の稼働率は様々であり、平塚と栃木工場が下降したものの、九州工場が繁忙だ。稼働率が下降した平塚と栃木工場は生産シフトの変更などで凌いでいる」

機能線事業が牽引し19FYは営業益50%増

 ―設備投資についてはどうか?

「当初、今年度は増産投資などかなりの予算を組んでいた。しかし、このコロナ禍のさなか、リセットすることにした。逆に、安全の確保、老朽化した設備の保守、品質の向上に向けた投資は、従来どおりにキチンと実施する」

 ―御社の19年度業績と20年度事業計画は?

「19年度は売上高270億円(前年度並み)、営業増益(前年度比約50%増)を計上した。機能線事業の好調が牽引した。売上高の割合は、汎用線事業1に対し、機能線事業は2で、完全に機能線の方が汎用線事業を上回った。20年度事業計画は、新型コロナの影響次第であり、先が読めないところがあるが、下期の挽回に期待し、売上高210億円(同約3割減)、純損益黒字を確保したい」

 ―今後の汎用線事業と機能線事業への取り組みは?

「汎用線事業は今後、量的に大きな伸びは期待できず、市場情勢に適切に対応した工場運営を行う。ただ、品質やサービスは落とすことなく、今まで通りに取り組む。機能線事業については、差別化・先端技術の研究開発や製品の開発に長年かけて取り組んできた。そうした製品の花が、一つでも多く開いていくように力を注ぎたい。同時に、古河電工グループの研究開発力やマーケティング力を活かしながら、カスタムメイド製品、提案型製品、付加価値製品の開発を推進する」

電線新聞 4213号掲載