昨年度のキュービクル式高圧受電設備の市場は、学校空調の特需や台風など自然災害からの復旧などで好調に推移した。しかし、今年に入ってからの新型コロナウイルス感染拡大の影響で好況にもかげりがみられ、設備の増設・更新の動きにも足踏み感がある。自然災害が相次ぐなかで国土交通省と経済産業省は先ごろ、建築物における電気設備の浸水対策ガイドラインを策定したが、業界としてもこうした対策が必要不可欠となる。
日本配電制御システム工業会の8月の閉鎖形配電装置(特別高圧・高圧配電盤)の数値をみると、数量が4663面、金額が前年同月比96.2%の102億7400万円となっている。金額については、昨年11月から12カ月連続で前年同月を上回っていた頃に比べるとその勢いにかげりがみられ、新型コロナウイルス感染拡大の影響がここにも表れている。
ちなみに、2019年度は、数量が6万7816面、金額は前年度比104.1%の1473億3300万円となった。
また、日本電機工業会の統計をみると、変圧器の第Ⅰ四半期の受注実績は前年同期比97.7%の299億7900万円で、2019年度は前年度比112.7%の1290億1900万円となった。
さらに、経済産業省の統計をみると、キュービクル設備の主要搭載機器のひとつである標準変圧器(トランス)の直近の生産実績は、8月の台数が2万6066台となっている。
昨年度は、学校のエアコン設置の特需や台風15・19号をはじめとする自然災害からの復旧需要で好調に推移した。コロナ禍の影響により、勢いはなくなりつつあるものの大きくは落ち込んでいない。とはいえ、設備の更新や増強の動きに足踏み感があるなかで、今後の市場の動きに注視することは欠かせない。
昨今のキュービクルの需要を支えてきた「再生可能エネルギー固定買取制度(FIT制度)」は2017年4月、抜本的な改正が行われた。2009年11月の太陽光発電の余剰電力買取開始から10年以上が経過し、買取期間の保証が終了するいわゆる「卒FIT」の対象となる世帯が今後続出する。2020年度までに卒FITとなる世帯は、累計で73万世帯にのぼるとみられる。
2020年3月分の「再生可能エネルギー発電設備の導入状況」をみると、非住宅の太陽光発電新規認定分の導入容量が4329.5kWで、買取り電力量は46億6484万kWhとなった。
買取り電力量は、電力の小売り全面自由化が解禁となった2016年4月以降、6カ月連続で30億kWh以上を記録したあと一時20億kWh台に落ち込んだ。2017年3月に入ってふたたび30億kWh以上に回復し、同年5月にははじめて40億kWhを突破。続く昨年5月には、50億kWhも突破した。2019年度平均では、約46億kWhとなっている。
FIT制度においては、再エネを設置する発電事業者が適正な利潤を得られるよう発電コストや発電能力を基礎として価格等が勘案されることとなっており、基本的には再エネ導入量が増えるにつれて発電コストが下がり発電所の能力も向上するため、年度が経つにつれFIT価格は下がることとなる。実際、太陽光(10kW〜50kW未満)のFIT価格については、昨年度の14円/kWhから1円/kwh下落の13円/kWhとなった。
第5次エネルギー基本計画においては、再エネ主力電源化が掲げられている。とくに太陽光発電は、普及も進んでコストダウンが見込まれるということで、コストの低減と固定価格買取制度からの自立をよりいっそう求められている。
基本計画では、これまで2030年に発電コスト7円/kWhと設定されていた価格目標を5年前倒しして2025年に発電コスト7円/kWhを目指すことを明確にしている。ちなみに、発電コスト7円/kWhは、買取価格8.5円/kWhに相当する。
今年6月、エネルギー供給強靱化法案が国会で可決・成立し、2022年4月に施行される予定となっている。早ければ2021年に策定されるであろう「第6次エネルギー基本計画」はこのほど議論が始まったが、強靭化法施行に合わせて再エネ主力電源化に向けた新たな目標設定が予測される。
国土交通省と経済産業省はこのほど、洪水等の発生時に機能継続が必要と考えられるマンション、オフィスビル、病院等の建築物における電気設備の浸水対策のあり方や具体事例について記載したガイドラインを取りまとめた。昨年の台風15・19号では、多くの電気設備が浸水被害を受けたが、今後対策を講じる際の参考とすべく周知をはかる。
【建築物における電気設備の 浸水対策ガイドライン】(一部抜粋)
昨年の台風15・19号で被害を受けたキュービクル
(経済産業省・全関東電気工事協会ほか啓発チラシより)