住宅用分電盤の動向

先行き不透明も需要は回復基調

分電盤メーカーにとって、2019年度の業績は、学校の空調工事などが大きく寄与したことにより至って好調であった。いわば神風が吹いたと言っても過言ではなかった。コロナ禍が騒がれた当初においても、残工事などで仕事量はそれほど落ち込まなかった。
ところが、日銀が発表した3月の短観で製造業の業況判断指数がマイナス8と発表され、景況は日を追うごとに厳しさを増すようになってきた。
先行きはいまだ不透明感があるものの、ここにきて自動車、機械などは上向いてきているが、相変わらず厳しいのが旅行会社、ホテル・旅館、航空、外食などである。ANAホールディングスは、今年通期で過去最大の5千億円の最終赤字になるといわれる。
21年の就職状況については、ほとんどの業種で採用を減らしている。主要企業の大卒採用の内定者数は、昨年と比べて11.4%減となっており、2ケタ減はリーマン・ショック後の10年度以来11年ぶりであり、企業が先行き慎重な見方をしていることが伺える。
住宅用分電盤と密接な関係にある住宅着工、住宅リフォームの足元はどのようになっているのか。
7月度の都市圏別新設住宅着工数は、首都圏は前年同月比4.4%減の2万3891戸、中部圏は、前年同月比10.5%減の8607戸近畿圏は、前年同月比8.3%減の1万1782戸、その他地域は、前年同月比18.3%減の2万5952戸と全ての地域で前年を下回っている。
では、リフォーム市場はどうか。
矢野経済研究所によると、20年第2四半期の住宅リフォーム市場規模は1兆4724億円、前年同期比7・5%減となっている。
20年上半期(1〜6月)の住宅リフォーム市場規模は2兆8053億円(速報値)、前年同期比で2.0%減と推計する。上半期の市況は、新型コロナの感染拡大の影響を受けたが、前年同期比で第1四半期4・8%増、第2四半期7・5%減となり、結果として上半期を通して2.0%減にとどまった。
住宅リフォーム市場の大半を占める「設備改善・維持」分野は、前年同期比で0.5%のプラスになっている。
20年の住宅リフォーム市場規模については、5.9〜6.2兆円を予測する。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響がこれ以上拡大しないことが前提となるが、市場規模は6兆円規模の見通しである。緊急事態宣言が解除されて以降、設備改善/維持関連分野を中心に需要は堅調に回復している。

分電盤メーカーもこれらのことは百も承知で、製品の開発・販売に注力している。

パナソニック ライフソリューションズ社は「毎日を備える日」をメインテーマに震災対策に取り組んでいる。注力しているスマートコスモ・コスモパネルの「あんしん機能付住宅用分電盤」には、地震による通電火災など二次災害を防止する「地震あんしんばん」や雷被害の危険防止に対応する「かみなりあんしんばん」、さらに両方の機能を備えた「地震かみなりあんしんばん」などがラインアップされている。

日東工業は、家庭内の火災放電を検出し電気火災の未然防止に貢献する「放電検出ユニット付ホーム分電盤」を発売し好評を得ている。
放電検出ユニット「Spartect」は、家庭内のトラッキングやケーブル遮断、ショートなどで発生する火災放電の特有ノイズを同社独自技術より検出し、電気火災の未然防止に貢献する。家屋全体を監視することが可能なため、屋内配線など目視が困難な箇所で発生した火災放電も検出することができる。

テンパール工業の「感震機能付住宅用分電盤」は、震度5強相当以上の地震を感じたら、電気回路を自動で遮断する。作業時には「光」と「音」で知らせ、約3分後に主幹ブレーカを遮断する。感震機能付住宅用分電盤が内線規定で「勧告」「推奨」になった。大規模地震時における火災の発生状況は、阪神・淡路大震災は電気関係が約61%、東日本大震災は約65%と半数以上を占めている。
河村電器産業のホーム分電盤「Ezライン」は、人手不足の時代を見据え、施工性などを重視した新しい発想のホーム分電盤である。分岐ブレーカが下段側だけの横一列の配線となっているため、天井付近で手探りになりがちな上段側の結線を行う必要がなく、ラクな体勢で施工できる。

また、一般的なホーム分電盤と比較して高さが100㎜低い220㎜となり、住宅内の設置場所が広がるなど「小型化」を重視している。
住宅用分電盤も世の中の流れとともに変わり、時代が要請する分電盤へと進化する。降ってわいたようなコロナ騒動ではあるが、分電盤もリーマン・ショック、淡路・阪神大震災、東日本大震災と幾多の苦難に直面し逞しく成長してきた。これからもまた、時代の要請を汲み取った分電盤へと変貌することが望まれる。

電材流通新聞2020年11月5日号掲載