12月末、22年1月末まで 近畿の水トリーも遠因
「6.6kV建販用CV/CVTケーブルの新規受注・納期回答を停止している件」について、これを手掛ける建販電線メーカーと同メーカー系電線問屋は、その停止適用期間を12月末まで、あるいは22年1月末までに延長した。当初、停止適用期間は、11月末までとしたうえで、延長する可能性がある、としていた。(続報)
新規受注・納期回答の停止を延長している品種は、6.6kV高圧架橋PE絶縁ビニルシース(CV)ケーブルのET(テープ巻き)およびEE(押し出し)タイプと、6・6kVトリプレックス形架橋PE絶縁ビニルシース(CVT)ケーブルのETおよびEEタイプ。さらに両品種のエコ電線で、型版は6.6kV EM―CE(同)、6.6kV EM―CET(同)だ。当初、停止適用期間は11月末までとしたうえで、延長する可能性があるとしていた。それを今回、12月末あるいは22年1月末までに引き延ばした。
また、企業によって対象品種がやや異なる。ある事例では、3kV~33kVCVケーブル(エコケーブル含む)、6kV耐火ケーブル、600V CVS、CVVS(遮蔽銅テープ付きケーブル、エコケーブル含む)品種とした。また、3kV CV、600V CVS、6kV耐火ケーブルは当面、新規の在庫製造を見合わせるとしている。
もともと6.6kVCV/CVTケーブルの用途は、工場や鉄道、大型の商業施設、病院の施設などに限られていた。そのため需要量はあまり多くなく、メーカーの生産量や問屋の在庫量は、ある程度限定されていた。
一連の事態の主因は、需要が集中したことが大きいとみられている。業界筋では、「大型工場案件などが重なった。また、銅遮蔽付きケーブルについては、銅テープの供給が制限されているためだ」という。
さらに遠因として「高圧ケーブルEEタイプの需要が、更新推奨時期に満たなくても、中部近畿地区で動いている」ことも指摘されている。つまり、経産省の中部近畿産業保安監督部近畿支部が、今年6月16日付で「更新推奨時期に満たない高圧ケーブルにおける水トリー現象に係る注意喚起」文書を発出したことが微妙に背景に絡む。
同文書の概要は、近年、同近畿支部管内の自家用電気工作物設置事業場で、比較的新しい高圧引込みケーブルが、地中埋設部で水トリー現象により絶縁破壊し、電力会社に供給支障を与えるという波及事故が増加している。高圧ケーブルについては、更新推奨時期に満たなくても、劣化の兆候が確認された場合は速やかに更新すること、また、更新の際は水トリー現象に強いEEタイプを採用することを推奨するとした。
【注意喚起文書の詳細】
高圧ケーブルの更新推奨時期は15年として管理されている事業場が多く見られるが、高圧ケーブルの絶縁破壊に伴う波及事故のうち、15年未満の高圧ケーブルの割合は、18年度の13.3%から、20年度は43.8%に増加している。
これらの高圧ケーブルは、地中埋設管路に布設されたものが大半であり、独立行政法人・製品評価技術基盤機構などが原因を調査した結果、水トリー現象によるものと確認された。
この水トリー現象は、高圧ケーブルの絶縁に使われる架橋PEなどに、水と電界が影響して小さな亀裂が発生し、樹枝(tree)状に成長する現象。外部半導電層から導体に向けて進展する水トリーを外導トリーという。
電気工作物設置者及び電気保安業務担当者は、更新推奨時期に満たない高圧ケーブルであっても地絡事故が発生する場合があることを念頭に、次の点に留意されたい。
◎定期的に高圧ケーブルの点検を実施し、劣化の兆候が確認された場合は、更新推奨時期に満たなくても速やかに更新するようお願いする。
◎事故が確認されている高圧ケーブルはETタイプだが、更新の際は、水トリー現象に強いEEタイプを推奨する。