トップインタビュー ミタカ 田島栄吾社長

設備のフルオートメーション化を計画
981㎡新工場、23年に着工

ミタカ 田島栄吾社長


オリジナル製造設備による直線加工や長尺コイル加工を得意とし、07年に医療業界に参入したミタカ。田島栄吾代表取締役社長は「21年度の売上高は7億6千万円(前年度比7%増)、営業利益率は約38%。22年度の見通しは、売上高は前年度比で10%増、営業利益率は約40%増」と語った。注力事業としては「直線加工から梱包までのフルオートメーション化」を挙げ、23年に着工する新工場は981㎡の規模となる。22年度の戦略は「ユニット販売」としながらも、「医療機器メーカーではなく、医療機器メーカーのKUROKO(黒子)になる」と力強く語った。


 ―御社の成り立ちは?
「91年に中村隆哉(現会長)が大手ばね屋から転職し、91年に創業した。フロッピーディスクの開閉機構用のばねの生産に始まり、99~00年には直線加工技術を生かし、CDやDVDに採用されている光ピックアップのレンズを支えるサスペンションワイヤーの生産を開始した。弊社オリジナルの製造設備で直線加工機を開発し、大手メーカー用に現地生産するために中国に生産拠点、香港オフィスを設立した。03年には半導体装置用のコンタクトグローブの生産を開始した。07年に試作品を製作し、医療業界に参入した」

 ―御社のビジネスを取り巻く環境は?
「世界のガイドワイヤーやカテーテルの市場は、22~30年までの平均成長率が6・5%増といわれ、10年前と比較すると鈍化しているものの、確実に伸びている。日本では20~25年の成長率は4・9%増と堅調だ。しかし自動車業界がEV車製造に移行するなかで、医療関連にシフトしている競合他社は多い。当社は、技術力とオリジナル製造設備による優位性を生かし、今後も事業を拡張していきたい」

 ―21年度の事業実績と22年度の見通しは?
「21年度(31期)の売上高は7億6千万円で、前年度比7%増、営業利益率は約38%となった。22年度(32期)の見通しは、売上高は前年度比で10%増、営業利益率は約40%増になる」

医療機器メーカーの黒子に徹する

 ―22年度(32期)の事業戦略は?
「現在は部品単体で製造・販売しているが、顧客から依頼の多いユニットでの販売を計策している。具体的には、ガイドワイヤー、カテーテル、内視鏡などが該当するが、医療機器メーカーになるわけではなく、医療機器メーカーのKUROKO(黒子)になるというスタイルを今後も貫いていく」

 ―御社の事業別の売上比率は?
「売上の医療機器関連が90%、主にコンタクトグローブの生産となる半導体関連が10%となる。現在は半導体向け市場が活況だが、医療事業に注力している」

 ―医療業界へ参入した理由は?
「中国生産拠点と香港オフィスの設立後に帰国した際に、今後の医療技術を取り上げたテレビ番組を観たのがきっかけだった。血管に溜まったコレステロールのゴミを、ロボットが操作するワイヤーが取り除く様子をCGで紹介し、患者の負担が減って寿命が伸びる、低侵襲治療の時代が到来するという内容だった。
もともと当社が半導体事業のなかでもミクロン単位の加工と、オリジナル製造設備による生産を得意とすることから、それから医療関連メーカーに営業展開を始めた」

 ―オリジナル設備へのこだわりは?
「直線加工と長尺コイル加工は、完全オリジナル製造設備で生産している。購入した設備をカスタマイズするケースもあり、ほとんどの設備をカスタマイズしている。汎用性の高い製品の製造は大手が独占しているが、設備産業では進出できない市場を捉えていくという方針は、創業時から続いている」

 ―御社の注力製品・事業は?
「製品を作る工程で、直線加工、熱処理、センタレス加工、検査、梱包までをフルオートメーション化する計画がある。人海戦術に頼った従来の生産から脱却し、海外メーカーとの競争力を高めるのが狙いだ。技術者が設備を構想・設計し、設備のセッティングなどは誰でもできるようにして、コストパフォーマンスの向上を図る」

生産工程を全自動化 第3工場新設で人員増

 ―国内の生産拠点・生産体制については?
「本社工場、第2工場に続き、第3工場を新設し、23年に着工する予定だ。規模は981㎡で、先ほどお話ししたフルオートメーション設備を導入し、人員も増やして医療関連事業を強化する。また、顧客のニーズや信頼度に応えるため、医療機器の品質マネジメントに関する国際規格であるISO13485を取得する計画だ」

 ―海外の生産拠点や生産体制は?
「中国の生産拠点は19年に撤退した。香港オフィス(MTKテクノロジー)は、現在もトレーディングカンパニーとして機能している。現状では海外生産は想定していないが、今後の顧客のニーズに合わせて海外進出も検討している」

 ―中長期的な計画は?
「オリジナル製造設備の強化とユニット販売の推進だ。また、お問い合わせ、提案、共同開発~製造・加工、組み立て、納品まで、顧客のニーズに合わせてワンストップで対応できる体制を強化し、『医療機器部材ならミタカ』といわれるようなブランド力を浸透させたい。さらに、顧客が開発などで悩んでいる場合には、当社が持つ、金属、貴金属、樹脂のノウハウから共同開発して支援していく」

 ―新しい市場・分野の開拓は?
「企業理念として『地球環境改善をビジネス化する』を掲げている。地球温暖化問題に対して、各企業や団体が取り組みを発表しているが、当社の理念は、義務・努力・ボランティアではなく売上をあげ、『地球環境が良くなる』をテーマにビジネスシステムを構築するというものだ。昨年からFMクマガヤの番組『がしょうきdeナイト』に自ら出演し、当社の理念をPRしたり、視聴者からアイデアを募っている。まだ模索中ではあるが、まずは自分たちから発信することで、地球環境改善のビジネス化につなげていきたい」

 ―カーボンニュートラルやSDGsへの取り組みは?
「本社工場でのソーラーパネルの設置やペーパーレス化などで取り組んでいる。また先ほど挙げた『地球環境改善をビジネス化する』は、ラジオのほか、YouTube、やTikTokなどのSNSを使って情報発信している」

 ―御社の最重要課題は?
「先ほども申し上げた通り、何よりもユニット販売を推進していきたい」

ミタカ 田島栄吾社長
【尊敬する人】(目的に向かって)まっすぐな人。
【趣味・休日の過ごし方】サーフィン(30年目)、アウトドア、サウナ。
【ラジオ】「がしょうきdeナイト」FMクマガヤ第2・4水曜日、20時。

電線新聞 4299号掲載