プロテリアルは8月29日、EV車載非接触充電システム用にナノ結晶軟磁性材料ファインメットを素材とする磁気シートおよび磁気シートパネルMS-HiQシリーズの開発を発表した。
非接触充電は、EVに給電を行う技術として注目が集まっており、実用化に向けた検討が本格化している。一方で、有線の充電システムに比べて効率が低いことが課題で、効率を向上させるには損失係数の逆数となる品質係数Qが高いコイル構成にする必要がある。そこで同社は、非接触充電システムの高Q化について、2つの技術を独自に開発している。
1つ目は、磁気シートを構成する材料であるファインメットリボンの熱処理時に、リボン長手方向に張力をかけながら異方性を持たせる透磁率制御を行うというもの。このリボンを使用して形成した磁気シートを適用することで非接触充電システムのQ値の改善が可能となっている。
2つ目は、先ほどの技術により形成した磁気シートMS-HiQを切断し、リボンの長手方向と磁力線の流れる方向が一致するように放射状に配置した磁気シートパネルを形成するというもの。これにより、非接触充電システムの高Q化を実現する。
非接触充電システムのコイル背面にフェライトを配置する場合と比較すると、MS-HiQを放射状に4つ配置した磁気シートパネルでは約2分の1の厚さ、8つを配置した磁気シートパネルでは約3分の1の厚さとなっているのにもかかわらず、ほぼ同等のQが得られており、大幅な薄肉軽量化が実現できる。
同社は今回開発した磁気シートおよび磁気シートパネルを通じて、EV向けに普及が期待される車載非接触充電システムの高効率化、小型軽量化に貢献するとしている。