電線被覆装置・押出成形機を手掛ける大宮精機(静岡県富士宮市・金子建太郎社長)は、平角銅線への対応強化を目的に、試作ラインを大幅にモデルチェンジした。
同社は試運転工場内に押出テストラインを設置して、従来からエンドユーザである電線メーカーや樹脂メーカーからの電線試作などのニーズに応えてきた。しかし、近年電動自動車の普及が拡大し、モータの高出力化に伴ったヘアピンワイヤーやバスバーを含む平角銅線の使用増加、高電圧対応を目的としたスーパーエンジニアリングプラスチック(スーパーエンプラ)の使用が検討されている。そのため、平角銅線への対応強化を目的に、試作ラインを大幅にモデルチェンジした。
主な特長は、①吐出のタイプにかかわらず1台で対応できるコストパフォーマンス、②スーパーエンプラの高温押出にも対応、③平角線でも薄肉・均一な被覆を実現、といった点となる。
電動自動車における構造やメカニズムの変化は、自動車用電線にも大きな変化をもたらした。電線メーカーはもちろん設備メーカーや材料メーカー、商社が新たなニーズに対応する製品やサービスを提供し始めている。大宮精機の押出テストラインもそのひとつだ。
高性能化・低消費電力化・低コスト化の要求に応えるべく、電気自動車の主機モータには高速化・高トルク化・高効率化が求められる。従来の主機モータのコイルは丸線の分布巻か平角線の集中巻が主流だったが、近年は平角線の分布巻が主流となってきた。また、コイルエンドの高さを抑えるためにヘアピン形状に加工されたスクエアの平角線を鉄心コアに挿入後、端部を溶接(ヘアピン溶接)する方式が一般的となった。このヘアピンワイヤーの採用で、スロット内の占積率は大幅に改善され、ステータの小型化・軽量化・銅損低減に大きく貢献することとなった。
また、電動自動車では大容量バッテリー搭載のため、限られたスペースで大容量の電流を分配せねばならず、平角形状のバスバーの採用が近年急増。バスバーは電圧降下が少なくエネルギー効率の向上にも貢献でき、配線もビス固定のみなのでロボット加工による省人化・省力化も実現可能となる。さらには、高周波特性を有するリッツ線も最近では平角形状に加工することで、電動自動車市場へアピールするメーカーも出てきている。
以上のような平角線材の採用が増えており、高電圧対応でPEEKなどのスーパーエンプラ素材をPA/PAIなどのエナメル層の上に押出加工するケースも増えている。
大宮精機によれば、「この1~2年で平角線の被覆ニーズは欧米・中国を中心に急増しており、日本からも引き合いが来ている」(同社高柳裕司営業部長)という。同社ではマグネットワイヤー用の小型押出機の試作ラインとは別に、バスバーの試作用に60mm押出機にも改良を加えて、ユーザの開発ニーズに応えている。
また、スーパーエンプラ用の高温押出に対応するために、押出スクリューの材質・表面処理・デザインにも改良を施している。さらに、平角線の四つ角にも薄肉かつ均一な被覆圧を実現するために、各部のアライメント調整機構や前後の工程にも工夫を凝らしている。さまざまなユーザのニーズに応じて柔軟にカスタマイズできる同社では、すでに試作実績も多数重ねているという。