高温超伝導マグネットの実証に成功 ヘリカルフュージョン 最終実証装置の開発着手


Helical Fusionは10月27日、基幹部品の1つ「高温超伝導マグネット」の実証試験に成功したことを記者会見で発表した。
核融合炉発電は、炉内で重水素・三重水素を1億℃まで加熱し核融合反応を起こして、その熱エネルギーで発電するものだ。しかし、核融合炉内にはコイルが生み出す磁場とは別に外部からの磁場が存在する。そのため、今回の実証実験は核融合炉内の磁場環境を模擬した環境で行われた


実証では、実機向けの大型導体を採用したコイルを使用。コイルは同社が独自開発したもので、フジクラ製の高温超電導素材が採用されている。
今回の実証により、同社は高磁場環境での超電導状態の維持に成功し、従来よりも小さく効率的に強力な磁場を生み出せるコイルの実装が可能となった。
田口昂哉代表取締役CEOは「高温超電導のケーブルの主な開発プレイヤーは、世界でも当社を含めて3社しかない。核融合科学研究所のような充実した試験環境が国内にあること、設計・開発のノウハウを保持していることが、実用化への最有力候補になった要因だ」と語った。
商用化への課題として残っているのが、ブランケットの開発だ。ブランケットは核融合反応によって生じた中性子を液体金属で受け止める壁のようなもので、負荷の軽減や低放射化が課題となる。同社は液体金属を循環させて使うことを前提に開発を進めているという。
また、このブランケットは、集中的に熱が発生して壁に当たるダイバータを一体化したものと なるので、熱負荷への対応も課題となる。なお、これらについては現在最終調整中で、年内には実証する見込みだ。
また、会見では最終実証装置「Helix HARUKA」の建設に着手したことも公表された。同社は、同装置での実証後、「Helix KANATA」で実用発電を行う方針。「当社のプロジェクトは最も商用化に近いと自信をもってお伝えしたい」と田口CEOは力強く述べた。

電線新聞 4412号掲載