【市場動向】標準分電盤特集~2018年後半はインバウンドや東京五輪関係の需要増に期待~

インバウンドや東京五輪
関係の需要も起爆剤に

標準分電盤の市場動向は、設備投資の動向に大きく左右される。そういう観点では、大企業を中心とした設備投資・研究開発費は毎年増加が続いている。電設資材業界も先行きに不透明感があるものの、おおむね堅調に推移しており、昨年よりは上向くと予測する向きが多い。各メーカーに標準分電盤の現況、今後の見通しなどを聞いた。

世界の景気は米国の大型減税、アジアでの省力化など設備投資がけん引して拡大している。日本の景気も多かれ、少なかれ世界景気の拡大を受け景気拡大は戦後最長になりそうだ。なかでも人手不足に伴う省力化投資は顕著である。今回は景気に敏感な設備投資に関連が深い標準分電盤の動向を追った。
日銀が発表した6月の全国企業短期経済観測調査(短観)では原料高が重荷となり、大企業製造業の景況感が5年半ぶりに2四半期連続で悪化した。足元の景況感が悪化したのは、原材料費や人件費の上昇を販売価格に転嫁できないことが大きい。
業況判断がやや悪化した一方、企業の2018年度の設備投資計画は強気だ。設備投資への強い意欲を見る限り、景気拡大のメカニズムは維持されていそうだ。企業は堅調に内外需を反映した増産に加えて、生産性を高めるための省力化投資を行い、コスト高を吸収しようとしている。
企業が設備投資計画を実行に移すかどうかは世界経済の動向に大きく左右される。設備投資に関連の深い標準分電盤の市場動向はどうであろうか。
「1〜6月については、需要は前年比で下落傾向にあると予想している。加えて一層の価格競争で、前年より厳しい状況にある。また後半7〜12月については、首都圏地区のオリンピックにまつわる需要増により、需要も上向くことが期待できるが、首都圏以外の地区については、引き続き厳しい状況が続くと予想している」
河村電器産業「社会インフラの老朽化による設備の修繕や、省エネ対策による設備の新設などで、市況としては顕著な伸びを示している。ただ景気の堅調な伸びに合わせ、企業の設備投資の拡大、増設は続いている」
内外電機「1〜6月の動向は、中小商業ビル、小店舗、小規模の工場の動きも悪かったこともあり、ほぼ昨年並みの生産量で推移した。7〜12月の見通しは、関東を中心に大型物件が動き始めるなか、全国的には施工管理者不足となる事もあり、盛り上がりに欠ける地域も出て来ると思われる。今後については、工場などの取替需要。具体的には設備導入から20年〜30年経過した工場などでの更新需要に期待が持てる」
テンパール工業「前半は太陽光発電システム関連の需要は減少傾向にあるが、前年度並みの販売実績で推移している。後半は前年度並みの販売を予測している。今後については、リニューアル市場やサービス付高齢者住宅などの分野に期待している」
こうして聞くと、期待する分野に多少の違いがあることがうかがえる。
わが国経済に元気があるのがインバウンドに伴う需要である。人が来れば必ず飲食、ホテルなどの宿泊施設は活況を呈する。地域別経済でも沖縄県は長い間低迷していた。しかしながら数年前からの海外からの観光客の増加で様相が様変わりしつつある。
観光客は必ず数日間は滞在する。ホテル・飲食店が賑わいを見せる。沖縄の代表的な食べ物である黒豚などの需要も拡大している。餌をはじめ豚舎などの施設も増えている。地元で働きたい若者が増え、沖縄県の人口は日本全体で見ても数少ない増加県であり、電力の需要の伸びも大きなものがある。
東京五輪関係の需要も一つの起爆剤になりそうだ。
パナソニック エコソリューションズ社「現状はまだ大きな需要が出てきていないが、7月以降くらいから需要が出てくると見込んでいる。大型件名から、中小規模の件名にも波及し、需要が出てくると予想している」
テンパール工業「首都圏を中心とした中小の商業ビル・小型店舗の需要に期待している」
河村電器産業「オリンピックの準備にむけ、商業施設、住居設備の増加に合わせ、電気設備の需要は堅調に増加している。2020年まではこの傾向が予想される」
ここにきて、最大の懸念材料となっているのは人手不足である。仕事はあるが人がいないので前に進まない話はいたるところで耳にする。
とくに建設現場、工事現場、飲食店、介護施設などあらゆる所で人材難が叫ばれている。標準分電盤メーカーもこのあたりをターゲットにして製品開発を進めている。
日東工業「昨年発売した、アイセーバコンパクト(i saver compact)に注力したい」
河村電器産業「慢性的な人手不足などにより、より省施工、効率化された製品が、今後さらに拍車をかけて市場を圧巻すると予想される。さらには、より小型化、省施工もキーワードになる事も予想される」
テンパール工業「屋外電力用仮設ボックスをラインアップし8月から販売を開始する」
内外電機は「リニューアル関連商品。企画・開発の段階で重視するのは、実際に工事に携わる方々の満足であり、特に施工性のよさにこだわったものづくりをしていく」
パナソニック エコソリューションズ社「建設業にかかわる人手不足から、省施工となるブレーカとアース端子を一体化した、カンタッチブレーカアース端子付搭載分電盤を発売。施工時間の大幅な短縮と接続作業の信頼性の向上が図れる。業界の働き方改革の実践への貢献も期待できる。また当社カンタッチ分電盤の分岐バーに直接接続できるCTを開発した。エネルギーの見える化にともなう分岐ブロック別の計測時に、分電盤のコンパクト化を図ることが可能となる」
標準分電盤の最大の悩みは、需要の拡大が図りにくいことである。首都圏は五輪需要などもあり期待はできるが、それ以外の地域は目玉になるものが少ない。少ない物件に業者が群がれば、どうしても価格競争に走りがちになる。
生産性の向上・働き方改革などのキーワードから新たな付加価値を生み出し、業界全体として需要を作り出していくことが必要である。とはいえ、こればかりは1社だけではどうにもならない。このような大局的な問題については、盤標準化協議会・分電盤技術部会が総力を挙げて取り組む必要がある。

分電盤技術部会平成30年度の取り組み

〈規格・技術資料類の整備〉
①JSIA300規格改正にともない「JSIA302、303、305、306、308」の改廃を検討
②「カタログ記載事項の統一」見直し
③「エコ電線」見直し
④「環境方針」見直し
⑤「製品リスクアセスメント表」見直し
〈調査・研究活動〉
①各設置環境(条件)における塗装性能の把握・関連する工業会とも連携する
②電力設備などの見学
〈広報活動〉
①技術資料による関係業界・官公庁への広報
②関連団体と意見交換、講習会への参加(キャビネット工業会、日本電機工業会、日本配線システム工業会、盤用熱関連機器工業会、全日本電気工事工業組合連合会)
③ホームページによるPR(維持管理・充実)、アクセス数の見える化

電材流通新聞2018年8月2日号掲載