キュービクル式高圧受変電設備特集

トップ画像:河村電器産業株式会社 カワムラキュービクル

設備更新など“五輪需要”に期待

キュービクル高圧受電設備の市場は、一昨年からの停滞がいまなお続く。太陽光発電の需要がひと段落ついたことも大きく影響しているが、再生可能エネルギー固定価格買取制度が昨年改正されたことも大きく影響しているものとみられる。一方、2年後の東京オリンピックを視野に入れた設備の増設・更新が浮上の契機になればとの期待も大きく、こうしたキュービクル市場の変化に対応するためには、「工・製・販」がお互いに協力しあうことが欠かせない。

FIT制度改正が影響

経済産業省の統計によると、キュービクル設備の主要搭載機器の一つである標準変圧器(トランス)の直近の生産実績は、平成30年9月の台数が3万3097台となっている。一昨年末以降、3万台を切る月もあったが、今年に入ってからは3万台超えが続いている。
昨今のキュービクルの需要を支えてきたのが「再生可能エネルギー固定価格買取制度」であるが、昨年4月に抜本的な改正が行われた。FIT制度開始から5年で導入量は大幅に増大した一方で、国民負担の増大や未稼働案件の増加、地域とのトラブルが増加するなどの課題があった。
今回の改正では、設備認定から事業計画認定とすることで、事業の適切性や実施可能性をチェックし、責任ある発電事業者として再生可能エネルギーの長期安定発電を促す。また、中長期の価格目標や入札制度を設けることにより、将来の再エネ自立化に向けた仕組みを構築する側面もある。


改正前の平成29年3月の「再生可能エネルギー発電設備の導入状況」をみると、非住宅の太陽光発電導入容量は新規認定分が2875万kWで、前月より48万kW増加している。
一方、買い取り電力量は32億694万kWhで前月より6億6953万kWh増加している。電力の小売り全面自由化が解禁となった一昨年4月以降、6カ月連続で30億kWh以上の電力量を記録したが、10月以降は20億kWh台に落ち込んでいた。3月に入ってふたたび30億kWh以上を記録したのは、翌月に改正FIT法が施行されること影響があったことも否めない。
FIT制度においては、再エネを設置する発電事業者が適正な利潤を得られるよう発電コストや発電能力を基礎として価格等が勘案されることとなっており、基本的には再エネ導入量が増えるにつれて発電コストが下がり発電所の能力も向上するため、年度が経つにつれFIT価格は下がることとなる。実際、太陽光(10kW〜2000kW未満)のFIT価格については、昨年度の21円/kWhから3円/kWh下落の18円/kWhとなった。
一方、日本電機工業会の統計によると、変圧器の第Ⅱ四半期(7〜9月)の受注実績は350億4600万円で、前年同期比で2.5%減となっている。上半期(4〜9月)でみると578億1千万円で、前年同期比で2.4%減となっている。
内需・外需別では、第Ⅰ四半期(4〜6月)が内需・外需ともには前年同期比でマイナス、第Ⅱ四半期は内需が前年同期比でプラス、外需はマイナスとなった。
こうした状況は、キュービクルの需要を考える上では決して好ましいことではないが、「特需」が来るのを期待するのも現状ではむずかしいと言わざるを得ない。それでも、2年後に迎える東京オリンピックをにらんでの設備の更新や増強に期待感をにじませる向きもある。
主要メーカー各社においても、今後を見通したキュービクルを開発している。産業用固定価格買取制度に対応した製品や、太陽光発電システムを連系する場合に必要な「OVGR(過電圧地絡継電器)」が内蔵された製品を前面に押し出している。
日東工業は、キュービクルとパワーコンディショナー収納箱の一体化を図り、省施工・省スペースを提案する。パワーコンディショナーは、業界トップクラスの日立産機システム製の100kWhを実装している。
また、「キュービクル・クイック・システム(QQS)」と呼ばれる選定ガイドで、約15分で図面データが完成するというサービスも実施している(メンバー登録が必要)。
河村電器産業では、全量買取制度対応キュービクルを開発。太陽光発電全量を高圧に変換、商用電源に連系するもので、さまざまな出力容量のパワーコンディショナーを使用している。
こうしたキュービクルを、直流電力をまとめる役割を持つ産業用接続箱や集電箱など関連機器と併せて、システムで提案している。
内外電機、日本電機産業も買取制度に対応した製品を開発している。
電力広域的運営推進機関が先日、一昨年4月の電力の小売り全面自由化から今年10月までの新電力契約件数が938万9500件と発表。契約数はまだ増えるものとみられ、電力10社もさまざまなサービスを打ち出して顧客死守に全力をあげている。
市場を守り、拡大していくためには、「工・製・販」が連携しての積極的な提案を進める以外に他ならない。