塩ビコンパウンド㎏39~46円超UP
パイプメーカーが鍵に
銅価が、㌧115万円(11日現在)と異様な高値で推移する情勢下、塩ビ系の石化材料も過去最高または飛び抜けた値上げ幅となった。先週中に塩ビ大手メーカー4社の値上げ打ち出しが出そろい、㎏あたり値上げ幅は40円以上~50円以上になった。塩ビに可塑剤の値上げ分(46円超~51円超)を加算し、㎏あたりの電線用塩ビコンパウンドの価格上昇幅を割り出すと39円~46円となり、コンパウンドメーカーは早晩、同程度の値上げを打ち出す見込み。これにともなってVVF2心×2・6㎜(㎞)で目付換算すると、電線メーカーは3千666円~4千324円の値戻しが必要になりそうだ。
先週中に塩ビ大手メーカー4社(信越化学、大洋塩ビ、カネカ、新第一塩ビ)の値上げ打ち出しが出そろった。㎏あたり値上げ幅は40円以上~50円以上。実施は11月20日~12月1日の納入分から、となった。
値上げに至る事情は、4社ほぼ同じであり、大洋塩ビでは「採算是正」したうえでとし、次のように述べている。
「弊社は、これまで日本国内の顧客に安定的な供給を果たすため、生産設備・人員の合理化など、あらゆる施策を講じてきた。また、今年に入り原燃料価格高騰を背景とした二度の価格修正を実施した。
しかし、昨今の原燃料価格は、さらに騰勢を強めている。また、近年の生産設備の修繕・維持費用および副資材などの諸経費の高騰は、事業収益を大きく圧迫しており、自助努力だけでは事業継続に支障をきたしかねない状況にある。
塩ビ樹脂の国内需要は、昨秋より新型コロナの影響が徐々に払拭され回復基調にある。また、アジア、アメリカをはじめとした海外需要も堅調に推移している。日本を含むアジア域内の需給バランスも逼迫した基調が継続している結果、海外市況は歴史的高値圏で推移している。
この状況下、今後とも日本国内での安定供給を継続するため、今回の値上げを決めた」
一方、既報のように、可塑剤大手メーカー3社(ジェイ・プラス、シージーエスター、新日本理化)は10月中に値上げを打ち出した。電線用途に主に用いるグレードの㎏あたり値上げ幅は、46円以上~51円以上。実施は11月1日~11月10日の納入分から、となった。
今回の分を含めた今年に入ってからの値上げ回数は、塩ビ樹脂が3回目、可塑剤は企業によって異なり3回目か、あるいは4回目になる。一年中値上げ交渉を行っている状態に近い。それだけ採算性が厳しくなったり、原料や市況価格が上がったりしている。
塩ビや可塑剤メーカーの担当者らによると、「今回ほど値上げ額が、大きいのは、自分がこの部署に就いてから、初めての経験。また、先輩担当者達に伺っても、過去最高の値上がりかもしれない」という。
コンパウンド/㎏ 39~46円値上げか
可塑剤と塩ビの値上げ打ち出し分を合算して、㎏あたりの電線用塩ビコンパウンドの値上げ上昇幅を計算すると、39円~46円になる。同程度の値上げを、塩ビ系コンパウンドメーカーは早晩、打ち出す見通し。
ただ、通常の値上げシナリオから想定すると、塩ビの最需要家であるパイプメーカーとの値上げ交渉が決着してから、コンパウンドや直練り電線メーカーとの塩ビ値上げ交渉が本格的に動き出すことになる。従って、コンパウンドの値上げ打ち出し時期は、12月に入ってからになるとみられる。可塑剤、塩ビ、コンパウンドにしても、値上げ幅が通常のケースの2、3倍になっているため、短期交渉になる見通し。それだけコスト負担が大きいことが背景になっている。
㎏あたり塩ビコンパウンドが39円以上~46円以上アップすれば、VVF2心×2・6㎜(㎞)で目付換算すると、3千666円~4千324円コスト高になる。たとえ銅価が㌧110万円台で高止まりする情勢でも、元来薄利な電線メーカーにとっては、塩ビコンパウンドのコスト高に見合った適切な値戻しが、当然必要になりそうだ。