競争力カンファレンス2025 フジクラ・岡田社長が出席 光ケーブルの強み語る

 製品やプロセス、経営手腕でイノベーションを起こし、独自性がある戦略のもと、業界において高い収益性を達成・維持している企業を表彰するポーター賞の「競争力カンファレンス2025」が、12月2日に一橋大学の一橋講堂で行われた。カンファレンスには、同賞に選出されたフジクラの岡田直樹取締役社長CEOも出席した。

 同賞は一橋ICS(一橋ビジネススクール国際企業戦略専攻)が主催する賞で、日本企業の競争力を向上させるために、優れた日本企業を表彰するものとなっている。冒頭の挨拶で一橋ICS・大薗恵美専攻長教授は「ユニークな戦略を持って競争している企業が増えている」と語った。

 同賞を受賞した岡田社長は、SWRの開発当事者であり、アロンアルファとファイバで手作りした30㎝ほどのサンプルが最初のSWRだったという。その後は開発から製造、営業に携わっている。授賞式では、各社のインタビューも行われ、岡田社長は「光ケーブルは地下の管路や電柱に敷設されるが、光通信の需要が増えるにつれ、既存の土木設備内の敷設スペースは少なくなっていく。しかし、当社の製品のような細くて軽い光ケーブルであれば既存の土木設備をそのまま活用しつつ、配線ができる。そのため土木工事をしなくても追加で光ケーブルを敷設でき、お客さまの大幅なコストダウンにつながる。当社では、人件費や工事費の高いところをターゲットにする戦略を採っており、具体的には欧米とデータセンター市場をターゲットにしている。人件費の安い地域は製品も安価なものが求められるので、トータルコストダウンにつながりにくい。これは自身の営業経験から強く感じていた」と語った。

 また、今後の展望については「差別優位性は時間差でしかなく、競合他社もそのうち追いついてくる。新製品をリリースしていくとともに、新興国にも大きな需要があるのでコスト競争力を磨いていく」と述べた。

 各社のインタビュー後にはパネルディスカッションも行われた。「AIと競争力」をテーマに、①AIと競争優位性の源泉、②組織・人材・文化への影響、③将来展望・リスク・政策的視点などが語られた。

 このほか、協賛企業のKPMG FAS社および三菱UFJモルガン・スタンレー証券による講演や、一橋ビジネススクールの野間幹晴教授による受賞企業3社の収益性分析も行われた。

 今回の受賞を受け、岡田社長は「戦略的思考を大切している中でこのような賞を頂けるのは大変光栄だ。先日、米国商務省との間で、枠組み合意書を締結したが、これは当社の光ケーブルが高く評価されているということだ。このようなチャンスに対応するには、佐倉事業所内の新工場のキャパシティでは足りないと感じており、次の増産投資を検討している。今後も積極的に取り組みを進めて、さらなる成長を目指したい」と語った。

 なお、フジクラのほか、訪問看護システムを手掛けるeWeLL社や、半導体洗浄装置を強みとするSCREENホールディングスも同賞を受賞している。

電線新聞 4416号掲載