照明特集 LED化が着実に進む 照明市場の方向性模索


照明市場ではLED化が着実に進行している。ただそのLEDも、内容を見れば必ずしも楽観はしていられない。照明をめぐる環境には大きな変化が現れている。進むべき方向はどこなのか。照明業界を展望する。


気になる単価の下落

日本照明工業会が昨年公表した自主統計をみると、ランプ類と照明器具における傾向の違いが浮き彫りになってくる。
まず出荷数量を見ると、白熱灯器具、蛍光灯器具はともに2014年度以降減り続け、17年度は13年度のそれぞれ7.9%、11.1%とわずか1割前後に落ち込んでいる。逆にLED器具は166.0%に増加しており、照明市場でLED化が急速に進んでいる状況がうかがえる。
ただ、ランプ類になると、照明器具ほど楽観はできない。LEDランプは14年度に105.6%と前年度比でわずかに増加したものの、15、16年度は101.6%、96.5%と下落した。17年度は98.2%とやや盛り返したが、今後どうなっていくかは不透明だ。
市場全体のLED化が進行しているのは確かだが、それにつれて残された分野の新たなLED化は鈍化しているように見える。
出荷金額の面でも、器具とランプ類の差ははっきりしている。LED器具の出荷金額は17年度に13年度比で153.5%と大幅に伸びているが、LEDランプの出荷金額は15年度に対前年度比95.0%に落ち、翌年度もさらに下落。17年度は14年度と比べ、約3割も落ち込んでいる。
それだけではない。LEDの出荷数量は17年度に13年度比で98.2%とわずかな落ち込みにとどまっているのに対し、出荷金額は14〜17年度に71.9%に急減している。LEDが市場に浸透する一方、単価の下落が顕著になっているということだろう。
統計上からいえるのは、LED商品の出荷を順調に進めていくためには、何らかのブレークスルーが不可避になっているということだ。

照明業界は過渡期に

照明市場では大手も専業もここにきて、さまざまな方向性を模索している。現在はまさに過渡期に入っているかのようだ。

《総合》
衝撃的ともいえる発表を行ったのはNECライティングだ。昨年11月下旬、親会社の日本電気が同社の照明事業の譲渡を発表。同社では、新会社でもNECブランドを維持し照明製品の製造、販売を行うとしている。
パナソニック エコソリューションズ社は、昨年10月、2020年6月に水銀ランプの生産を終了すると発表した。今後は、水銀ランプが多く使用されている高天井用照明器具や投光器、街路灯、道路照明器具などの分野でLED照明器具へのリニューアルを提案していくとしている。
東芝ライテックは、昨年10月に、全国に3カ所あるLED照明シミュレーションラボラトリー、「CO-LAB(コ・ラボ)」をすべて閉館すると発表した。今後は代わりに、全国各地で内覧会などを開くとしている。LEDが市場にほぼ浸透したいまは、その普及にも新たな視点が求められるようになっていることを感じさせる。
岩崎電気は工場照明が伸びていることに着目。1月には、対象を防爆形と高天井型製品に絞ったセミナーを5年ぶりとなる大阪で開催した。高天井型はほぼ各社とも出そろっていると判断し、防爆形をより強くアピールした。
三菱電機照明は従来通り、工場や倉庫、学校向けにMyシリーズやGTシリーズの供給に力を入れている。

《専業》
専業メーカーにも、新たな方向を模索する様子がうかがえる。
縮小が予想される住宅市場分野の打開策として大光電機が大きな期待を寄せるのは、アウトドア製品の「ZERO(ゼロ)」だ。外国人旅行客を迎えホテルの建設ラッシュが続く沖縄では、ゼロが「一人勝ち」しているという。同社では製品の耐塩塗装水準をさらに引き上げて他社製品を引き離し、さらなる独走をはかる考えだ。雑誌や自社カレンダーなどで社員を対外的にアピールする広報活動にもますます力を入れている。
照明の制御化が進む中で、コイズミ照明は新たに住宅分野を対象にTRee(ツリー)の展開を始めた。昨年4月には独自のアプリであるツリーを搭載したスマホなどでスマートアダプターを制御する方式だったが、同11月にはアマゾンやグーグルのスマートスピーカーも使えるようにした。これまではDALIで施設市場をターゲットにしてきたが、ツリーの開発で、対象分野が一気に広がった格好だ。対応器具は約3千アイテムを揃える。
国際標準規格のDALIが市場に浸透し始めているなか、大光電機も従来の「D-SAVE」に加え、対応製品を開発していくとしている。
専業の中でいち早くLEDに先鞭をつけた遠藤照明は、LEDの性能向上にもこだわる。昨年7月には発光効率200lm/Wを達成したことを公表。8月から、同効率を含む一体型ベースライトの新「LEDZ SD series」の販売を始めた。
細やかな制御や施設を丸ごと一元管理できるのが特徴の制御システム「Smart LEDZ SYSTEM」は、いまや同社のけん引役を担う。
オーデリックは、制御とデザインの深掘りという2正面作戦を取る。制御面でアピールするのはコネクテッドライティングだ。同システムを用いれば、ユーザーに必要なのは対応する照明器具とコントローラーの選択だけという手軽さが大きな売りだ。
デザイン面でのこだわりは、住宅に強い同社ならでは。高級ガラス製品のスワロフスキーを使ったシャンデリアやガラス面にカットを施したシーリングライトは、いかにもオーデリックらしい。
星和電機は持ち味の道路照明や信号機をはじめ、工場での防爆形LED灯器具やLED構内道路灯、クリーンルーム用LED灯器具などの普及を推し進める。
昨年11月には、東京で開かれたハイウェイテクノフェアに出展。ポール内配線付ジョイントボックスを先行紹介した。この1月下旬には、正式な発表も行った。同ボックスは、あらかじめ結線ボックスにリード線がセットされているため、ポール内配線が容易で、大敵の湿気にも強い(IP68相当)。上ぶたを開ければ、簡単に電圧・絶縁抵抗の測定もできることなどがメリットになっている。