アイキャッチ:東芝ライテック Nシリーズ扉付・基本タイプ
リフォーム・リニューアル需要が着実に拡大
今年1月で景気拡大の長さが74カ月となり「いざなみ景気」を抜いたものとみられる。正式に認定するのは1年以上先になるが、誰しもが感じるのは豊かさの実感が薄いということである。今回、こうした景気とも関係が深い住宅建設、住宅着工と比例するともいわれる住宅用分電盤の動向をリポートした。
大阪市内で建設が進むタワーマンション
戸建て住宅(大阪府下)
国土交通省が発表した2018年12月の新設住宅着工戸数は前年同月比2.1%増の7万8364戸となった。季節調整済み年率換算値は96万1千戸で、3カ月ぶりの増加、と足元では堅調な動きを保っている。
業界の予測では、新設住宅着工戸数は、今年は消費税増税前の駆け込み需要の影響で96万戸程度にまで増加した後、来年は89万戸ぐらいまで下がるとみている。
さらに野村総研では全体で見れば2016年度の97万戸から、2020年度には74万戸、2025年度には66万戸、2030年度には55万戸と今年に比べて10年後には約半分になるとの厳しい見方を示している。これをベースに対策を講じることは、いうまでもない。
住宅産業は裾野が広い。当業界でも住宅用分電盤を始め照明器具、換気扇、ルームエアコン、電線、テレビアンテナ、インターホンなど多種多様に及ぶ。足元の住宅用分電盤の市場はどうか。
日東工業は「平成30年は住宅着工件数が前年比約2.3%減のため、分電盤もこれに伴った動きになったと推測される。31年の見通しは、2年連続で減少が続いており、31年度半ばにかけては、横ばいか減少で推移すると思われる。このことから、住宅用分電盤も横ばいか前年より落ち込むことが見込まれる。消費税増税前の駆け込み需要に期待したい」と、テンパール工業は「着工戸数は減少傾向にあるがリフォーム・リニューアル市場は確実に需要が増加している。特にFIT(住宅用太陽光発電設備の固定価格買取り制度)が今年11月に終了しはじめることから、対象者が再生エネルギーの使い方を選ぶようになる。その分野として、蓄電池関連の分電盤を販売し、新たに自動切替盤の販売をおこない、新市場への取り組みをはかった。今年の見通しは、消費税の増税に伴う一時的な住宅着工の増加をはじめ、設備投資や民間消費も堅調に推移することが予想されることから、小幅ながらも民需主導での成長は続くものと予想する」と、河村電器産業は「戸建て住宅などは伸び悩んでいるが、マンション着工件数は微増を示している。
しかし全体としての住宅着工件数は、減少傾向にある。そのため住宅用分電盤の市場も縮小傾向にあり、各社のシェア争いが激しくなっている。今後も市場としては大きな伸びは期待できないが、付加機能のついた分電盤が増えつつある。ZEHの普及に対応する分電盤、内線規程での推奨範囲が広がりつつある感震ブレーカ機能付分電盤、ほか各種機能付き分電盤が今後も期待できる」とそれぞれ見通している。
新設住宅のみの需要に頼っていたのではもはや成り立たない。とはいえ「分電盤の機能の性格上、不具合が起きない限り交換する機会が少ないのが現状」(東芝ライテック)なのも事実である。既存住宅での取り替え需要のむずかしい点が浮かび上がる。
こうした状況に対して、メーカーはどのようにして将来の展望を開こうとしているのか。
パナソニック エコソリューションズ社は、「住宅用分電盤の基本機能である安心・安全の提案をベースとして、分電盤だけでなく家全体での各種電気設備機器トータルでの連携・快適性・利便性を加味した提案を進める」としているが、10月の消費増税への対応も考慮しなくてはならない。すでに一部のハウスメーカーなどからは需要が増えつつあるといった声も聞かれるが、各メーカーは前回ほどの駆け込み需要は少ないとみるむきが多い。
とはいえ、過去の実績を考慮して供給体制を整えることで、ユーザーに納期面での不備をかけないようにする必要がある。それとともに、10月以降の反動減も見越してバランスの取れた生産が求められる。
新築での需要は厳しいが、空き家対策などリフォーム・リニューアルなどは確実に増えている。
テンパール工業では「スマートタイプのパールテクトのほか既設の住宅用分電盤とボックスサイズが近いタイプもラインアップし、リニューアルに使用すると壁面の穴や汚れを隠すことができるリニューアル用としてPRしている。併せて、既設の分電盤へ取付可能な感震センサーもPRする」と、日東工業は「感震ブレーカーによる安全性の向上を提案できるように自治体・工事店への製品説明会などによるPRに注力し、リフォーム・リニューアル時の取り替え需要に繋げるように取り組んでいる。新たに、既設向けにスマートメーター導入により空いたリミッタスペースに設置が可能な、横幅寸法75㎜のものを発売する」としている。
技術は日進月歩、終わりはない。時代に対応しまた時代を先取りした製品開発が求められる。メーカー各社も最大のパワーを投入している。
パナソニック エコソリューションズ社は「安心・安全・快適利便機能面に注力し①スマートコスモマルチ通信型②感震ブレーカ搭載住宅用分電盤③避雷器搭載住宅用分電盤などを発売する」と、東芝ライテックは「感震機能付分電盤や避雷器付分電盤といった災害時の安全面を考慮した製品に注力する」と、日東工業は「ホーム分電盤のリニューアルを4月に行う予定で住環境に調和しつつスタイリッシュなデザインで利便性・施工性を向上させる」と、テンパール工業は「感震機能付き住宅用分電盤の認知が拡大しており引き続き注力する。また卒FIT需要に向けて、太陽光発電や蓄電池などに対応した製品をラインアップする」との戦略を立てている。
各社とも、住宅分電盤の使命である「人々の暮らしに安全に電気を提供する」ことを使命とし、今後、電気設備が多用になるなかで、さらなる安全性、利便性を追求していく点では一致する。
人口減の社会では、あらゆる「モノ」の需要は減少する。しかしながら、手をこまねいていては明日はない。住宅用分電盤も住宅着工減などにより新設は厳しいが、一方ではリフォーム・リニューアル需要は今後も着実に増えることが予測される。
加えて地震・雷など災害対策用の必要性も増加している。これらの需要に応えていくことが、メーカーの社会的使命でもある。