【電材流通新聞主催】電材市場活性化特集

「第25回全国地区電設業界工・製・販座談会」から探る

市場の活性化については、電材業界の場合、扱う商材が豊富で、多岐にわたるため、取り組み方次第ではいくらでも可能といえるが、そのために克服しなければならない課題もある。そのヒントを本紙が先般、開催した「第25回全国地区電設業界工・製・販座談会」から探ってみる。

第25回全国地区電設業界工・製・販座談会

三位一体の取り組み不可欠

豊富な商材、取り組み方次第で可能性も膨らむ

今後の市場活性化、そのための提案活動において、参考にしたいのは、「工・販」二者の考え方であろう。そこで本社主催の「第25回全国地区電設業界工・製・販座談会」から「工・販」幹部の発言を拾ってみる。
座談会は、工・製・販各業界の代表による基調あいさつを受けて、参会者が3つのブロックに分かれ、分科会の形で白熱した討議を展開した。
まず、全日電工連・米沢寛会長は基調あいさつのなかで、「我々電気工事というのは、非常に零細・小規模の事業所が多く、その点では、AIやIоTを取り込むようなビジネスを自社のチャンスに繋げるには、どうしても既存のメーカーにいいものを出していただいて、それを卸店さんに流していただくという、あくまで電材ルートでなければ、我々の工事業界というのは、それを取り込めないという問題がある」として、三位一体の取り組みが不可欠であることを強調した。
全日電材連・忍田勉会長も『働き方改革』に焦点を絞りながら、同様の考え方を示した。「我々も工務店とかゼネコンさんに対してはモノ申すことができないが、全日電工連さんが電気工事業界では矢面に立っていただいて、この改革の実行のために、何とか頑張っていただきたいと思っており、我々卸業界の方でも全日電工連さんと一緒になって、いまこそ腹を割った話をしながら、どうやったらこの法律を実行できるかを模索したい」。
個々の商材については、どのようにみているのか。
全日電工連・花元英彰副会長は、住宅用分電盤について「住宅の着工件数が大きく落ち込んでおり、この状況を踏まえて、今後分電盤の需要を拡大するには、住宅のリニューアル市場が大きく鍵を握っている」としたうえで、「都市部を中心とした築20年以上のマンションが今後年を追うごとに数は増えてくると思われ、震災対策として感震機能付きの分電盤は着実な伸びが期待できる」と展望を語った。
全日電工連・藤沢一三副会長は、インターホン市場について「インターホンの2017年度の生産額は、前年度比1・8%増と2年連続で過去最高を更新し18年度も1千億円の大台乗せが見込まれているが、マンションの供給戸数がここ数年低水準で推移しておりリニューアル需要も予断を許さない状況となっている。メーカーの皆様もこうした状況を踏まえて、HEМSといったエネルギー管理システムのさらなる連携強化によって需要喚起をはかろうとしている。今後も大きな伸びが見込めるのではないか」との見解を述べる。

活性化につながるスマート社会への訴求

先行きへの期待では意見が一致しているものの、地区により温度差があるのは否めない。工事業界と卸業界とは若干立場は異なるが、需要の喚起に対してそれぞれに真摯な取り組みをみせる。

全日電工連・向山和義理事(関西)
リニューアルはそれほど発生している状況ではないようだし、新築住宅もそれほど活性化しているとは思えない。我々の時代には、40代ぐらいで家を持とうという風潮があったが、いまはそうした動きも少ない。ましてや注文住宅は、プレハブの比率が大きくなり電気工事士の(腕の)見せ所が少なくなっている。
ただ、画期的な省エネや省電力、あるいは防災・防犯にかかわる新製品をリニューアル時に提案できれば、活性化につながるのではないか。

全日電工連・吉村保利理事(四国)
花元副会長も述べられたように大変厳しいものがある。ただ、高知県や徳島の一部では、南海トラフ大地震の関係もあり、県をあげて感震ブレーカーの普及が進んでいる。当組合青年部では、感震ブレーカーを地域の公民館に寄贈して火災予防に役立て、多くの方に知ってもらう努力を重ねている。

全日電材連・末永稔副会長(九州)
熊本などは地震があった関係で感震ブレーカー付き分電盤に興味を示しているが、長崎あたりでは(地震の)影響があまりなかったことから、逆に関心がみられない。それよりも雷対策の分電盤に興味を持っている。
インターホンは、スマートフォンが連動したり、セキュリティに関連するものが出てくれば、普及が進むのではないか。

全日電材連・加賀谷哲男専務理事(東京)
他の県より恵まれているのかなと感じるが、マンションに関してはほぼ供給過剰になってきている。売れ行きが急速に落ちているといった話を数多く聞いている。
HEМS等については、はっきり申し上げて我々のルートを通っていないという感じをもっている。ハウジングメーカーさんへ直に入っているのではという感覚が強い。
ワイヤレスの機器が多く出ているが、懸念されるのは、国内メーカーの機器のプロトコルが統一されていない点。このような状態では、海外からのメーカーに席巻されるのではないか。

全日電材連・富永浩司常任理事(愛知)
「愛知県を含めた東海地区には、自動車の部品メーカーが約800社あり、売上高は約4兆円にのぼる。しかも、800社のうち、7割から8割が増収増益と好況。住宅市場については、マンションやホテルの需要はまだ少しあるのかなと感じている。新築需要も少し望め、景気は安定しているのではないか」。
愛知県は、都道府県別GDPで大阪府を抜いて国内2位に躍進するなど、他県と一線を画す。市街地再開発やリニアカー開通を控えての周辺地域への投資などが好況を支えている。

全日電材連・森川和樹常任理事(岡山)
インフラ整備については、岡山駅前の再開発や老朽化した役所の建て替え、小中学校の空調工事とさまざまな工事が出ているが、なかなか進んでいないのが実情。大手さんの受注ということもあり、地元には落ちず影響している。
住宅着工は減少し、HEMSやZEHは中央からの支給もあり、地場工務店などからの納入は進んでいない。今後も期待できるところは少ないのかなという景況感である。

克服しなければならない課題山積

第1ブロック会議の工・販二者の発言を聞くと、事業所の規模によって受注する仕事の内容に変化があることが見てとれる。
とくに、先行きに期待がもてる反面、「HEМS等についてははっきり申し上げて我々のルートを通っていないという感じをもっている。ハウジングメーカーさんへ直に入っているのでは」とか「さまざまな工事が出ているが、なかなか進んでいないのが実情。大手さんの受注ということもあり地元には落ちず影響している」といった各地区の実情は看過できない。
というよりも、活性化についてはさまざまな障壁があり、道程が決して平板でないことの証左とみられなくもない。再び各氏の発言からヒントを拾ってみる。

全日電工連・花元副会長は、「戸建て住宅の太陽光発電のメンテナンスは、利用者任せで一向に進んでいない。最近では、住宅の発電設備から出火し、火災が発生したケースもある。このメンテナンスをなんとか業界に取り込めないか」と訴える。
全日電工連・藤沢副会長は小中学校のエアコン設備について提起する。
「地域性もあり、長野は夏場の温度も低くて必要性を感じず、設置率が低かった。昨今は、酷暑の影響もあり、必要性を感じている。一斉の工事になるので、作業員の問題に加え、機器の確保などで相当大きな問題になるとの危惧もある。こうした問題は、メーカーさんを含め、業界あげて取り組むべきではないか」。
エアコンの設置については、メーカーでも意欲的な姿勢をみせるが、それに対する歓迎ムードは一様ではない。
全日電工連・向山理事は「兵庫県に限ってではないと思うが、これは管工事の仕事で、電気工事ではないと発注してもらえない。議員さんと意見交換した折、エアコンの設置はどこに依頼していますかと尋ねたら、電気店と答えられる。しかし、法の壁があり、学校に設置する場合は管工事となる。分電盤に関しては、電気を単に分配するものということではなく、防災や防犯という観点でせめていく必要がある」。

業務見直し提案活動積極化

大きな障壁はほかにもある。たとえば、働き方改革への対応。全日電材連・末永副会長は、女性工事士に言及する。「昨年の電気工事技能競技全国大会の女性の部で最優秀賞を受賞した女性は、普通高校卒業後、施工を目的に工事店に入られた。電気工事は以前、男性しかできないというイメージがあったが、最近は資材の軽量化や、施工性に優れた工具により、女性でも対応できると話していた」。
全日電工連・吉村理事も同様の見解を示す。「女性の作業員は、重要な位置を占めている。建築土木関係も女性の採用に力を入れている。女性電気工事士の意見交換会での話だが、女性、女性といわず、男性同様にしてくださいと言われたことが、脳裏に焼き付いている」。
人材確保の難しさがより切実なのは首都圏。全日電材連・加賀谷専務理事は次のように指摘する。
「(東京は)他県に比較すると、活況を呈している。このため、周辺地域からの参入が激しい。知り合いの会社の話だが、周辺地域の会社から、一度に5人の中堅社員が引き抜かれてしまい、立ち行かなくなったという実例があるほど、人材不足で苦労している」。
全日電材連・富永常任理事は、愛知県が好況といえども人手不足は同じだと強調する。「自動車メーカーや部品メーカーが独自で電気室を持っているので、電気科卒の人を大量に雇用するという現実がある。 電気工事店さんに話を聞くと、高卒や専門学校卒の方を直接迎え入れることがむずかしい」。
好況ゆえの人手不足といった見方もできるが、地方にそれほどの余裕があるかどうか。全日電材連・森川常任理事は語る。
「岡山は人手不足というより人がこない。太陽光発電工事をやっている電気工事店には、県外からも仕事の依頼がたくさんあり、仲間に声をかけて対応している。それでも人手が足りず2月、3月までは断っているという話を聞く」。
これらの発言を総括すると、課題が山積し五里霧中の様相を呈しているといえなくもないが、必要なのは旧態依然の業務を見直し提案活動をより積極化すること。陳腐な結論になったが、その実行は決して容易とはいえないだろう。