電工さんの工具箱 第16回 「ニッパ」切る専門工具。

そもそも、ニッパーなのか、ニッパなのか

 

言葉では皆さん「ニッパー」といっている気がするのだが、インターネットで検索すると、どちらも出てくる。まあ、英語の文字や発音をカタカナで表すのだから、こういうことはよくある。コンピューターか、コンピュータか。ロマンチックか、ロマンティックか。ディスコか、デスコか。最後のは、ちょっと違う例かもしれない。

 ともかく、調べた限りでは、辞書や事典の類いは「ニッパー」が多い。だが、JIS(日本工業規格)では「ニッパ」だ。英表記は「Cutting Nippers」となっている。ここでは、JISにならって「ニッパ」と表記することにしよう。

刃の形状・角度・厚みなどの違い

 ニッパは、ご存じの通り、線材を切断する工具だ。一口にニッパといってもさまざまなタイプがあるが、JISには強力ニッパと斜めニッパのみ規定されている。強力ニッパは名前の通り、鉄線などの硬いものを切るのに適したタイプ。斜めニッパは文字通り、刃が斜めになったタイプだ。その他にも標準ニッパ、小型ニッパ、精密ニッパ、プラスチックニッパなど多種多様だが、重視したいのはやはり切断能力。ニッパは、刃の形状・角度・厚みによって切れるものが違ってくる。

JAPPY電工偏芯ニッパ C30-190H-JP ハードブレード ラウンド型

JAPPY : 斜ニッパ JNN-125

 例えば、形状でいえば両刃と片刃。両刃は表裏両面とも刃が斜め、片刃は表面の刃が斜めで裏面の刃は平ら。両刃のほうが切断能力に優れるが、切り口は片刃のほうがきれいだ。また、刃の角度が大きいほど刃が厚くなるため、強度が増して刃こぼれしにくくなるが、切断する際の抵抗が大きく切り口はきれいにならない。刃の角度が小さいほど刃が鋭くなり、切れ味が良く切り口もきれいだが、刃こぼれしやすい。ちなみに、JISでは品質によって普通級(記号N)と強力級(記号H)に分けられている。

選ぶときの注意点

 切ることに特化した工具だけに何でもスパスパ切れそうなイメージがあるが、そういうわけではない。用途や現場に応じて選ぶことが大切だ。また、刃の研削面が滑らかなもの、刃を閉じたときに隙間のないものを選びたい。各メーカーからは電気工事用のニッパが数多く販売されているので、尋ねてみるのもいいだろう。

ジェフコム 電工プロニッパー(圧着付・強力タイプ)

ジェフコム 電工プロニッパー(薄型ストレート刃)

おまけ

前述のように、ニッパーか、ニッパか? という言葉は多い。新聞業界などでは、そのような混乱のないよう表記が統一されている。間違いというわけではないが、一般的には意外と思われる例をほんの少しご紹介しよう。

一般的によく見聞きする→新聞などの表記ではこう書く

ウェア → ウエア
ウエイター → ウエーター
エンターテイメント → エンターテインメント
グランド → グラウンド
シティ → シティー
シュミレーション → シミュレーション(これは完全な間違いの例)
ドッチボール → ドッジボール
バトミントン → バドミントン
ハングライダー → ハンググライダー
ファックス → ファクス
ボーリング → ボウリング(球技)
メイク → メーク(化粧)
レポーター → リポーター
(参考:共同通信社「記者ハンドブック」)