韓国最大規模のLED展示会 「国際LED&OLED EXPO 2019」

「第17回国際LED&OLED EXPO 2019」(韓国産業通商資源部、LED産業フォーラム、大韓貿易投資振興公社主催)が6月25日から3日間にわたって韓国ソウル郊外のKINTEXで開催され、250社以上のLEDメーカーなどが最先端の製品やソリューションなどを世界各国から訪れた多くの来場者に発信した。


「国際LED&OLED EXPO 2019」は、15カ国250社600ブース(海外企業は47社)の展示規模で、2003年世界初のLED専門の貿易展示会として開催され、今回で17回目を迎える韓国最大規模のLED展示会。日本のLED照明普及推進協議会(JLEDS)、LED光源普及開発機構(DELDA)も後援協力していた。
特に同展は、国内需要以外に輸出に非常に力を入れているという国の事情もあり、ソウル半導体、LUMENS、TECHENなどの半導体大手の出展のほかに、照明器具メーカーは平均して日本円にして年商20億円程度の規模の企業が多いという。
というのも、韓国政府の方針によってサムスンやLGといった韓国大手電機メーカーは照明器具の生産にはかかわっておらず、もっぱら中小企業が生産を担っているという事情があるから。また、製品ではなくソフトや、技術を有する大学の研究機関や企業が多く出展しているのも大きな特徴だ。

会場に入ってすぐに目につくのがソウル半導体のブース。先に本紙でも紹介したが、太陽光の波長に近い分光分布を持つ、紫色LEDをベースに日本の東芝の蛍光体技術を用いて製品化された「SunLike」を前面に押し出して展示していた。文在寅韓国大統領から優秀な製品として表彰されたばかりだった。
TECHENも大きなブースを構え、大型投光器、街路灯などを出展。中でも、キノコのようなユーモラスな形をし、LEDによってフルカラーで色が変わる街路照明が用途は限られるだろうが多くの人が注目をしていた。
LUMENSはマイクロLEDディスプレイを出展。その美しく再現性の高い映像は目を見張るものであった。0.8㎜ピクセルで寿命が10万時間と謳い、解像度も非常に高く、多くの来場者の注目を集めていた。また、紙のようにフレキシブルに曲がる「Flexible LED Display」を出展、厚さがわずか3㎜、最少曲率半径300㎜、1ユニットの重量も500gと軽いのが特長だ。
大型のLEDサイネージパネルも多数出展されており、中でもCDMB社の「OMEGAシリーズ」はLEDスクリーンがユニット化されており、大画面を簡単に組み合わせて作ることができる。また、「OMEGA SMART TV」は幅600㎜を基準とし16:9の2K、4K、8Kの画面を最大幅4800㎜、最大高さ2700㎜まで組み合わせて作ることができるなど、大型デジタルサイネージの製品に注目が集まっていた。
照明器具では導光板による薄型の直付器具が多く出展されていた。しかし、フレームのデザインや導光板による発光面の均一性などよく見ると品質性能の差がみられる中、LUMIMICRO社の製品は、日本の照明器具メーカーとも取引実績があるというだけあり、フレームデザインも比較的美しく、光も均一に発光していた。
街路灯のメーカーも多く出展していたが、その中でもSUNGHOON LIGHTINGはダイキャストの金型から設計生産し、アルミの鋳造、テーパーポールの生産、組み立てまで自社で一貫生産している数少ないメーカーだという。
EVERLIGHTECは、数々のデザインポールを出展しており、機能性を追求している多くの街路灯メーカーとは一線を画していた。
GLOBAL LIGHT COMPANYはIoTを前面に、無線制御で各種照明器具をコントロールするシステムを出展、スマートフォンやタブレットなどの端末でデモンストレーションを行い操作の簡便性を訴求していた。

OLED(有機発光ダイオード)は特別に専門のブースが設けられていて、そこに各社が開発したOLEDの照明器具を出展していた。OLEDの特徴を活かし、薄いものや円筒状のもの、曲線状のものなどが出展されていたが残念ながらインパクトのあるものはなく、日本同様まだまだ研究の余地があると思われる。しかし、各研究機関による研究発表、研究会などが盛んに開催されOLEDの実用化への取り組みは非常に積極的である。
一方、研究成果の発表展示では、釜山にある国立釜慶大学の劉永文教授が実験を繰り返しているのが、魚類の成長を促すLED照明。
ヒラメなどの高級魚の稚魚から成魚になるまでの成長過程を赤、青、緑などのLED照明を照射し実験を繰り返し、緑色LED照明の場合の成長が早く、現在、事業化を推進しているという。人手をできるだけかけないように水温、酸素量、PHなどとLED照明の照度、照射時間など、インターネットを通じ遠隔操作を行って実験を重ねている。植物育成よりも魚の方が単価も高く、投資回収も早いという。今後、伊勢海老、アワビ、雲丹など他の高級海鮮食材も研究対象になるという。

韓国の照明関連専門紙「THE KOREA LIGHTING NEWSPAPER」のキム社長によると「8年から10年くらい前に出展者数はピークを迎え、盛況だった同展示会は昨年辺りから出展者数、来場者数ともに減少気味。LED照明は、すでに普及し光源のパワーや寿命など各社一線に並び、コモディティ化が進み、毎年目新しい技術が公開されるわけではなく、来場者も期待感がなくなっている。一方出展企業側も費用対効果を考えて、出展を見合わせている会社もある」と日本とよく似た現象であると説明する。
続けてキム社長は、「新製品、新技術が乏しいLED照明に比べ、デジタルサイネージの世界は、出展企業も積極的で、サイネージ画面のユニット化やマイクロLEDなど新しい技術や取り組みが注目される」という。
韓国は以前から、デジタルサイネージには積極的。街を歩いていても大小の看板、サインがLED化されており、市場としても受け入れられやすい土壌にあるのだろう。
今回の展示会ではLED照明器具は明り取りとしての照明ではなく、それぞれに明確な目的を持った照明が求められている。デジタルサイネージでは今後成長著しいマイクロLED、IoTを用いた各種デジタル制御、魚工場に代表される新用途開発など単なるLEDを用いた照明から、多角的に進化しつつあるLEDと今後の成長が期待されるOLEDの世界を垣間見ることができた。

電材流通新聞2019年7月18日号掲載