住宅用分電盤特集

防災意識を高める「震災対策技術展」

6月18日午後10時22分、山形県沖を震源とする地震があり、新潟県村上市で震度6強を観測した。ちょうど1年前の6月18日には最大震度6弱を観測した大阪北部地震が発生した。いまや地震、台風などの災害はいつ、どこで発生してもおかしくない状況になっている。それだけに災害対策には最大限の注意と努力をおしむべきでない。今回は、これらの一環として行われている「震災対策技術展」を通して災害対策をリポートし、住宅用分電盤メーカーも地震対策に一役買っていることを報告する。


災害対策技術展は、1995年に発生した阪神淡路大震災の翌々年である1997年神戸で第1回が開催され、日本各地で延べ52回開催されている地震・自然災害対策の展示商談会である。
6月6・7日の両日、グランフロント大阪で「第6回震災対策技術展・大阪」が開催された。
昨年は大阪府内で観測史上初めて震度6弱の揺れを記録した大阪北部地震、関西空港に被害をもたらした台風21号、11府県で特別警報が発表された7月豪雨、日本で初めてエリア全域におよぶ大規模停電が発生した北海道胆振東部地震など多くの災害が発生した。30年以内に7~8割の確立で起こると言われている南海トラフ地震、経済被害は220兆円といわれるが、想像すらつかない。大阪の上町断層、京都の黄檗断層、花折断層、奈良盆地東縁断層帯など関西には多くの断層が存在しており、災害対策が求められている。同展示会では、116団体より約500品目もの災害対策製品が紹介された。地震対策(耐震技術、転倒防止)、通信対策(防災無線、衛星電話)、水害対策(水位予測システム、止水板)、備蓄品(災害トイレ、給水袋)、電力対策(発電機、蓄電池)など多岐にわたる。

感震機能付をPR
電気系統の火災防止に全力

電設資材業界では、住宅用分電盤メーカーが「感震機能付住宅用分電盤」に注力、地震対策に大きく貢献している。

パナソニック ライフソリューションズ社は、3年前から「毎日が備える日」をキャッチフレーズに通電火災、安全避難、停電など幅広い分野で手がけている。
既設向け「感震リニューアルボックス」は、メーカーを問わず設置でき、漏電遮断器未設置の住宅分電盤に対して漏電遮断機能を付加することができる。

日東工業の感震機能付ホーム分電盤には、新設用と既設用がある。
新設用は、主幹ブレーカとして感震ブレーカを搭載。震度5強相当以上の地震を感知すれば、ラインとブザーで避難を促した後、主幹ブレーカを自動遮断して電気の供給を遮断する。これによって地震発生時の火災対策ができる。地震波感知後、設定時間以内に停電が発生した場合、復電時に主幹ブレーカを自動遮断し、復電火災を防ぐ。既設用は、既設ホーム分電盤の横に追加設置するタイプである。既設ホーム分電盤が他社製品の場合と同社製品の場合の2種類を用意している。

河村電器産業は、「Ezライン」が人気を得ている。人手不足の時代をむかえ、施工性などを重視した新しい発想のホーム分電盤で、これからの時代にマッチする。
分岐ブレーカが下段側だけの横一列の配置となっているため、天井付近で手探りになりがちな上段側の結線を行う必要がなく、楽な体勢で施工することができる。一般的なホーム分電盤と比較して高さが100㎜低く220㎜となり、住宅内の設置場所の可能性が広くなるなど「小型化」を重視している。

テンパール工業は、感震機能付住宅用分電盤・感震センサーユニット、ビリビリガード、グラグラガードなどに注力している。
感震機能付住宅用分電盤は、震度5強相当以上の地震を感じたら、電気回路を自動で遮断する。作動時には光りと音で知らせ、約3分後に主幹漏電ブレーカを遮断する。感震センサーユニットは、既設の同社製住宅用分電盤に後から取り付けて感震機能を実現できる。①別置き用②パールテクト専用③パールミニ専用がある。疑似漏電方式を採用しているので、施工が楽にできる。専用の漏電ブレーカへの交換が不要で、タブ端子で接続が簡単である。分岐部組込用は、分岐ブレーカ2個分サイズと超小型で、震動センサーとマイコンの組み合わせで動作が安心であるなどの特長がある。

東芝ライテックは、地震発生で起きる電気火災の防止に震度5強相当の地震を検知し、主幹ブレーカを自動遮断する「感震機能付住宅用分電盤」を、小形住宅用分電盤Nシリーズに新たにラインアップし発売している。
特長は①感震動作機能として震度5強相当の地震波を感知すると3分間電源ランプが点滅およびブザーが鳴動し、主幹ブレーカを自動遮断する。地震波感知から3分の間に停電が発生すると、復電時に主幹ブレーカを自動遮断する。停止後8秒以内に地震波を感知すると、復電時に主幹ブレーカを自動遮断する。
②リセット機能として、地震波感知から主幹ブレーカが自動遮断するまでの間にリセットボタンを押すと電源ランプの点滅ブザーおよび自動遮断が停止し、初期状態に戻る。
③テスト機能としてテストボタンを短押し(2秒以内)すると、3分後に主幹ブレーカを自動遮断する。テストボタンを長押し(2秒以上)すると、主幹ブレーカを即遮断する。
ただ、これらは一戸、一戸の設置では効果は低く、地区・地域全体での採用が望まれる。それには補助金が大きくものをいい、現に補助金が設けられた地域にはかなりの感震機能付き分電盤が取り付けられている。

今回の技術展には、地震計、耐震装置、耐震補工法、耐震補助グッズ、など数多くの地震対策用品が展示されていた。会場内には「非常食試食体験コーナー」「災害アプリ体験コーナー」「ハザードマップ配布コーナー」など様々な特設コーナーも設けられていた。
展示と並行して、震災セミナーも行われた。とくに地震対策セミナーでは、内閣府の久保剛太氏による「南海トラフ地震の多用な発生形態に備えた新たな防災対応について」、大阪ガスの上林秀則氏による「大阪ガスの地震災害対策への取組み」、兵庫県の松久士朗氏による「南海トラフ巨大地震に対する兵庫県の取組み」について講演が行われ、多くの来場者が耳を傾けた。
いつ発生するかわからない巨大地震、いつ発生してもおかしくない大災害。現在社会はこれらと向き合いながら生きて行かなければならない宿命を背負っている。
電設資材業界も、これらの対策の一助を担う社会的使命がある。無論個々の力ではどうすることもできない大問題である。これらにも製・工・販の3者が力を合わせることによって大きな成果が期待できる。