【ホタルクス】開発者に聞く 業界初!照明に蓄電池搭載

安全・安心の防災用Nuシリーズ発売へ

この4月、NECライティングの業務を引き継いで誕生した新会社ホタルクス。同社では、LED一体型ベース照明「Nu(ニュー)シリーズ」に防災用をラインアップ、11月から販売を開始する。今回は、開発担当者らに新製品とものづくりにかける思いを聞いた。

安全・安心に強い思い入れ

防災用Nuシリーズは、光源部に搭載したバッテリーにより、停電を検知すると、自動点灯する仕組みになっている。もしもの時に、安全・安心を提供する照明だ。同社の野崎重樹広報室長によると「照明に蓄電池を搭載したのは、業界初」という。
同社が今回の安全・安心のあかりを思いついたきっかけは2つあった。ひとつは、1995年の阪神淡路大震災のときに残光型蛍光ランプ「ホタルック」を発売したことだ。
同社の前身であるNECライティングの代名詞ともなったホタルックは、生活に安全と安心を届ける付加価値ランプだった。
以後、「安全・安心」は同社のDNAとして受け継がれ、2016年には感震センサを搭載した「GRAND QUALITY」を発売するに至っている。「もともと弊社は防災関連の照明には思い入れの強い会社」だと野崎氏は強調する。
もうひとつは、11年に発生した東日本大震災だ。今回の製品開発を指揮した真野泰広マーケティング本部新事業開発部新事業開発グループマネージャーが振り返る。
2年ほど前、電波を飛ばしてバッテリーで点灯させるという同社にはない技術をある小さな会社が持ち込んできた。
その会社は、東日本大震災の際にある病院で廊下などが停電で真っ暗になってしまった経験を語り、あかりがなくなったときの不安を何とかしたい、社会貢献したいとの思いを強く訴えてきた。その思いに打たれ、一緒にやろうということで開発が始まったのだという。

ちょうどいい Nuシリーズ

以後も災害が多発するなかで、被災後の事業継続対策(BCP)には社会的な関心も高まっている。
ところが、対策は各社で千差万別らしい。野崎氏は「やはり、コストと効果をどうみるかというところで、自治体も民間も悩んでいるようだ」と分析する。
そんなときに最適なのが、Nuシリーズだ。「弊社の製品は何十万円、何千万円もかかるものではありません。まずは一時避難のためのあかりを確保しましょうというものです」
被災時には、退避のための非常灯、大型蓄電池などを使って何日もそこで暮らせるような二次避難のための照明があるが、Nuシリーズは、その中間にあたる。「そういうスキマ的なレベルの商品があってもいい」(野崎氏)
Nuシリーズは、停電が発生するとEPSS送信機が電源遮断を検知して停電検知信号を発信。光源部内の同受信機がそれを受信して、バッテリーでランプを点灯させる。約300lmの明るさで、最大10時間の点灯が可能だ。昼間や夜でも不要なときは、手動であかりを消し、バッテリーの残量を節約することもできる。
バッテリーには、安全性が非常に高いリン酸鉄リチウムイオン電池を採用。しかも長寿命で、普通に使用すれば、10年はもつという。

管理とスペース設計に苦労

真野氏がNuシリーズの開発にあたって苦労したのは、マネジメントの部分だった。
「関連会社とのやりとりもそうだが、会社の中だけでも足並みをそろえるのは大変だった。企画、製造、販売の間で、それぞれの進捗状況を共有しながら、目標の納期に向かって進んでいくわけですから」
情報を共有し合っていたつもりでも、後から問題がぶり返すこともあったという。
それらを束ねるため、真野氏は開発全体を見るリーダーとして、各部署にはこまめに顔を出している。週に1回のミーティングも欠かさない。
技術的な面でも苦労があった。受信機やバッテリーを「台座(器具)」ではなく、ランプ部分に載せたかったのだ。そうすれば、同社の既存の一般用器具にも新シリーズの光源を取り付けるだけで、防災用に転換できるからだ。「受信機、電源、バッテリーを光源部分に全部載せるというのが難しかった」。やはりスペース上の制約、重量といった課題があったからだ。
「あとはバッテリーを扱うので、制御や安全性の担保もあった。そこは何重にも安全対策を施している」と話す。

ユーザーの声に耳を
新たに学ぶ

かつてはエンジニアだった真野氏。いまでは製品開発全体に目を配る立場に立ったことで、新たに学ぶこともある。
「お客さんの声を聞くというのは製品開発では当たり前のことですが、かつては技術者目線だった。それでは、お客様にとって本当に価値のあるものにはなりませんよね。世の中の変化はすごく早い。外部の声にも耳を傾けていかないと、時代錯誤に陥ってしまう」
他の会社との協業にも積極的だ。「私たちにはない先進の技術、異業種とコラボして製品づくりをしていくというのも、照明+αの世界をつくっていくためには必要。どんどんやっていきたい。私たちにないものを組み合わせていけば、1+1が2以上になると思う。いろいろなものを持っているところと新しいものづくりをしていきたい」と意欲を見せる。
野崎氏も「われわれは新生ホタルクスとして照明+αということで付加価値をのせた照明に取り組む。そこがいちばんのキモになる」と力を込める。

詳細はこちら→防災用「Nu(ニュー)シリーズ」

電材流通新聞2019年8月29日号掲載