トップインタビュー 協電 有本典広社長

関西支店を新設、倉庫能力2倍
19FY上期7%増収 物流高で微増益に

株式会社協電 有本典広社長

播州電機グループの総帥で、協電の社長も兼ねる有本典広氏は、取材の中で「協電・大阪支店と協電・神戸営業所を兵庫県尼崎市に新設する協電『関西支店(仮称)』(物流倉庫所有)に統合し、大阪支店、神戸営業所双方の閉鎖を計画。関西支店の設立に向け700坪の土地を取得し、建設に入る予定だ。これで協電の倉庫能力は2倍になる」と語った。また、同社業績は「19FY上期が7%増収と健闘も、経常は物流費高で微増益に留まった。下期は増収、増益を見込む。ただ、18FY下期が増収で分母が大きくなり伸び率は低い見通し。結果、19FY通期は売上高57億円(前年度比3%増)、経常利益1億円以上を確保し、増収増益を目指す」意向を明らかにした。

—建販分野等の御社を取り巻く需要環境は?
「東京五輪関連の案件や首都圏再開発のプロジェクトなどに公立学校の空調設置の需要が加わって、活況が続く。エコ電線や高圧CVなどの一部には、品薄や欠品がみられる。一方、空調設置では、エアコンや配管が足りず、工事業者も手が回らない。また、県によっては即座に充分な予算を組めないケースもある。従って、学校の空調設置絡みの需要は、来年度も持ち越されるだろう」

—建販電線の中期需要見通しは?
「五輪工事が集中的に行われ、その分、首都圏等の再開発案件などが後ろ倒しになっている。また、大阪も万博開催を控えてマインドが変化し、20年度以降もホテル建設などの堅調な需要が見込める。福岡や北陸も需要が期待できる。従って、中期的な建販電線の需要は、平準化すると捉えている」

—品薄や欠品電線への対応は?
「学校の空調工事等がある程度、動き出した今春頃から、エコ電線やCVケーブルの品薄感や欠品が目立ちはじめた。
この時こそ、当社の特長といえる間口が広い調達力を発揮すると同時に、多方面の仕入れルートをフル活用しながら対応している。また、その製品の在庫を確認してから受注することを、全社を挙げて徹底。並行してメーカーや顧客などとの情報を一層密にし、さらにアンテナを高くして、最適な形で適正在庫の確保ができるように、その完成度を高めたい。加えて仕入ルートの拡充・強化に一層磨きを掛ける」

—品薄感は、いつまで続くのか?
「一旦は、どこかで落ち着くだろうとみられる。ただ、いつまで品薄感が続くか、皆目、見当がつかない」

フジデンとの再編は 三方良し美点重視で

—物流費アップへの対応は?
「運送会社の物流費は、18年度に前年度比2割ほど上昇し、これが19年度に入り、さらに値上がりしている。また、電線ケーブルは一般的な製品と形状等が違い、運送会社から敬遠されがちだが、当社は運送会社に物流の一環を担っていただいており、関係を大事にしたい。ただ、物流費高による実費上昇分の値上げ交渉は、今まで通りに根気強く進める」

—御社・協電の18年度と19年度業績は?
「18年度通期は、売上高54億円(前年度比1・3%増)、経常利益9千400万円で微増収、増益だった。19年度は、上期(4〜9月)が7%増収と売上高は健闘したが、経常利益は、物流費のアップがあり、微増益に留まった。19年度下期(10〜3月)は増収増益を見込む。当社ビジネスは下期型だが、昨年下期の売上高が伸長し分母が大きくなり、伸び率は低い見通し。結果、19年度通期は売上高57億円(同3%増)、経常利益1億円以上を確保し、増収増益を目指す」

—フジデンを播州電機グループに組み入れ来年1月で丸2年になるが、その取り組みは?
「フジデンは40年近く、フジクラ主導で事業展開してきた。当社とは企業文化や就業規則、賃金規程、販売管理システムなどが異なる。従って、一体化されていない点もある。建販需要が好調な現状下、全体最適に再編を着実に進めたい。ユーザー(買い手)と社員(売り手)、会社・グループ(世間)にとって三方良しで再編を行う。人や組織でも、時間をかけジックリと育成したほうが、足腰が強くなり安定し盤石になる。当座、評価制度や賃金体系、さらに美点を重視しながら一本化を進めたい」

—昭和電線と古河電工の建販事業統合で新会社が発足するが?
「現在、影響はない。当社に響いてくるのは、新合弁会社がスタートする来年4月以降になるだろう。再編の行方を注視している。その際、この業界における一般的な通念からみると、急な変化ではなく、次第に変化する見通し。いずれにしても再編で外部環境が変わっても、『ユーザー・第一主義』を貫く当社の取組は、変わらない」

5Gなど情報関連 FA電線類に傾注

—御社の注力製品は、どんなものがあるのか?
「5Gなど情通関連に傾注する。5Gの普及で世の中が大きく変貌しそうであり、その流れをキチッと把握し、ビジネスに繋げたい。電線メーカー等との勉強会などで情報や知識を得て、ニーズに即し一層良好な製品を顧客へPRして行く。既存品種でも軽量、細径、省スペース等の付加価値が高く、便利な製品の開拓や深掘りを進め、顧客に提案していきたい。
一方、FA・ロボットケーブル市場は現状、貿易摩擦で伸び悩むが、多くの産業で大なり小なりロボット導入への潮流は変わらず、引き続き戦略製品として取り組む。また、ロボット化の流れは、製造業の国内回帰に繋がる可能性も秘める。海外進出でのカントリーリスクや技術漏えいなどの危険性を回避・軽減できるため、ロボット市場の動向に注目している」

—営業拠点や物流への取組は、どうか?
「協電・大阪支店(大阪府守口市)と協電・神戸営業所(神戸市灘区)を兵庫県尼崎市に新設する協電『関西支店(仮称)』(物流倉庫所有)に統合し、大阪支店、神戸営業所双方の閉鎖を計画している。関西支店の設立に向け700坪の土地を取得し、建設に入る予定。これによって協電の倉庫能力は2倍になり、同エリアにおける物流や顧客サービスの面で最適化を推進する。さらに本年度刷新した販売管理システムを駆使し、在庫分析の精度を高めていく。
また、関西支店は大阪・神戸の間に位置し、万博会場の夢洲に近く、大阪湾岸開発にも最適な位置関係にあり、機動力アップが図れる」

—御社の最重要課題は何か?
「電線問屋として物流・倉庫能力の拡大に加え、調達・販促ルートの拡充や切断・切り分けなどの細やかなサービスの充実・強化を促進する。並行して『協電に相談すれば何とかしてもらえる』と、より多くの取引先に選ばれるように、営業社員全員が第二種電気工事士の資格を取得しながら、専門知識を磨き込んでいるが、それを一層向上させたい。これらをベースにワンストップの電線専門問屋の事業を、従来通りにブレることなく進めることである」

電線新聞 4180号掲載