【トップインタビュー 】沖電線 小林一成社長

先に備えて群馬工場が軸 設備投資30億円
ロボット電線を80%増強


沖電線の小林一成社長は、本紙・電線新聞のインタビューのなかで「FA・ロボットケーブル市場は現在、米中問題等で踊場だが、いずれ拡大するだろう」としたうえで「それに備えて群馬工場(群馬県伊勢崎市)のロボットケーブル生産ラインを軸とした電線製造設備増強に向け、16〜18年度の3年間にわたって合計で30億円の投資を実施した。これによって(長野県岡谷市の岡谷工場を含む)当社全体のFA/ロボットケーブル生産能力は、18年度までに15年度対比で80%増加した。従って群馬工場でも、ロボットケーブルの量産態勢が整った」と述べた。


 —御社の主力事業と、同事業を取り巻く市場環境から伺いたい
「当社は3事業を柱に事業展開している。一つ目が電線・ワイヤーハーネス(WH)事業であり、産業用ロボットやデジタルインターフェース分野向けの電線ケーブルなどである。二つ目は、フレキシブル基板(FPC)事業で、機器の内部配線に使用される柔軟な基板。制御機器、医療航空・宇宙分野まで幅広く、製品を提供している。三つ目は電極線事業となり、放電加工機の電極として用いられる消耗品である。
産業用ロボットケーブル、FPCなど事業全般的に、ユーザーが米中貿易摩擦によって減産傾向にあり、当社も影響をこうむっており、情勢は厳しい。これにより19年3月期通期売上高は約122億円(前年度比約5%強減)、営業利益4・8億円弱(同約半減)になった。総売上高のうち電線とWHで約80億円を占め、大半が機器用電線だ。そのため、市場の縮小から直接的な影響を受けて、大変厳しい傾向にある。対照的に、電極線事業は今のところ堅調に推移している」

 —その状況下、御社の戦略は?
「当社電線の特長である可動耐久性と高速伝送に一段と磨きをかけて、顧客のニーズにマッチした新商品をタイミング良く提供していきたい。加えて、市場環境の変化に対応して、19年度は自助努力による基礎体力の強化にも注力していく。例えば電線・WH事業、FPC事業は、品質と生産性の向上やコストダウン。電極線事業では、それらに加えて、一層のシェア拡大を図る」

電極線、戦略転換で14FYを境にV字回復

 —御社のFPC事業の戦略は?
「当社の強みは、FPCと電線ケーブルの二つを手掛けており、双方を用いてニーズに最適な対応ができるのと、高付加価値製品を提供できることにある。そのうえ、小回りを利かせて、多品種小ロット生産態勢を組めることも強みだ。
これらに加えて、OKIグループの総合力が発揮できる戦略を組んでいる。例えば、EMSグループ会社には、OKIサーキットテクノロジー(山形県鶴岡市)とOKIプリンテッドサーキット(新潟県上越市)というプリント配線板メーカーを擁している。当社との相乗効果で、リジット基板とFPC双方の長所を組合せ、各社で顧客への提案活動を活発化している。各社の顧客への相互紹介・同行訪問など、各社との連携を一層密にしながら、ニーズが目まぐるしく変化する中で、最良なFPCを提供していきたい」

 —御社は伸縮FPCなど高付加価値製品を開発されたが?
「伸縮FPCは、ウェアラブル用途等でユーザーの引き合いが良好。実際、シャツに伸縮FPCを貼り付けた状態で洗濯しても、FPCの機能等に問題がない。このほかに、高付加価値FPCとしては高屈曲、堅牢、立体形状、自立摺動、100mまで製造可能な長尺、パワー向けや透明タイプのFPCなどを品揃えしている。
また、当社では、ユーザーとともに高付加価値なFPCの共同開発も行いながら、市場開拓・用途開発も進めている」

 —ところで電極線が伸びた要因は?
「電極線事業は中国での生産を見直し、国内生産とハイエンド製品に重点を置いた戦略転換を図ってきた。14年度を境に電極線事業は黒字転換し、それ以後、ほぼ堅調に推移している。今後は、OKIグループの支援を受けて品質アップや生産性の向上を一段と推し進めて、より強靱な事業を目指す。また、電極線事業の総売上高のうち、商社ルートが90%を占める。商社では、電極線に附随する様々な製品類も取り扱っており、当社及びユーザーにとってもメリットが大きい。電極線事業は今後とも、商社ルートを軸に販促策を推進する」

電線新聞 4176号掲載