関東電線販売業協同組合 19年度組合員業態調査アンケート

増収で粗利額が増加も
収益圧迫 物流高低い粗利率


関東電線販売業協同組合(関東電販)は今年8月、会員を対象に「19年度組合員業態調査アンケート」をまとめた。これによると18年度の売上高や粗利額は前年度比で増加したが、粗利率は増えていない。逆に物流費は15年度以降、年々増え続け、電線問屋の収益を圧迫していることが判明した。(対象会員数33、回収率100%)


関東電販がまとめた「19年度組合員業態調査アンケート」によれば、18年度の売上高実績状況は、前年度対比で28社・85%が「増加した、横ばい」とし、このうち25社・76%が「増加した」と回答した。
14年度〜16年度に下降気味だった電線出荷銅量は17、18年度で持ち直した。特に、東京五輪・パラリンピックの施設建設や首都圏の再開発プロジェクト、公立小中学校の空調整備などの建設電販向け需要が好調だったことが、寄与した。
逆に「減少した」は5社・15%になった。この5社は、情通関連、機器電線の分野を得意としていた。取扱製品分野が違うことが明暗を分けた。
続いて売上高増減率(前年度対比)に関する設問では、15、16年度はアベノミクスが膠着状態に入り、増減率でマイナスになる企業の方が多かった。しかし、17年度になってからは、銅価建値が前年度比で25%アップしたことなどによって、28社・85%の企業の売上高が伸び、減少した企業は6社・18%となった。18年度も28社・85%の企業の売上高が増加して17年度と同じ傾向を示した。ただ、24社・73%の企業が伸び率を「0〜10%」としたため、増加幅はこのゾーンにほぼ固まった。
また、19年度に入っても建販関連電線を中心に多忙な荷動きになっているものの、19年度通期売上高見込みについては「増加する、横ばい」は26社・79%となっており、18年度(30社・91%)ほどではないと予測している。㌧当たりの平均銅建値が、18年度平均74.7万円から19年度4〜8月に69.9万円に下降していることも影響している模様だ。
逆に「減少する」と回答したのは6社・18%で巻線、情報通信、機器電線、産業電線、電設分野だった。
「19年度の売上高見込み」では、17社・52%が増えると予測しているが、「19年度の粗利率増加の見込み」のアンケートでは、「増加」は11社・33%に留まった。ただし、この11社の中に建設電販関連会社が7社入っており、建販3品種(IV、CV、CVV)以外の販売か、選別受注を行っている可能性がある。

粗利額は増加も 粗利率は増えず

一方、18年度粗利率の動向(前年度比)を問う設問については、18年度の売上高実績が増えたのが25社・76%に達したことで、これに比例するかたちで粗利額の増加社も、17年度の17社・50%から18年度は18社・55%に増加している。しかし、18年度の粗利率が増えた企業は10社・30%と17年度とほぼ同率であり、増えていない。(図1参照)
18年度の正社員や派遣、パートの増減に関するアンケートでは、増加が8社・24%で前年に比べ4ポイント増加し、逆に減少は4社・12%で同6ポイント減少した。18年度はやや社員数が増えている。
今後さらに売り上げが増えても、働き方改革により残業を増やすことができないことから、その分、必要となる人手の確保も求められるだろう。
電線流通・問屋の人件費は08、09年に、リーマンショックの余波によって増加した。10年以降は売上高動向に順じ増減を繰り返してきたが、15年度頃から高年齢層の退社が始まったことにより、人件費は幾分下がった。16年度以降は東京五輪、首都圏再開発プロジェクトなどの案件によって、人手不足に起因する工期の遅れが目立ち始めた。
とりわけ工事現場、車両ドライバー、工場の工員などの不足が目立ち、物流や製造に人件費アップの影響が出てきた。18年度の人件費をみても「増加」が16社・49%、「減少」は6社・18%、「不変」11社・33%となり、増加のウェイトが高かった。
08年秋のリーマンショックによって、工事用汎用電線ケーブルなどの電線市況が下落した08〜09年度の物流費は、物流量の減少にともなって、輸送費用や倉庫費用が減少した。
建設電販及び電気機器市場などがやや回復した10年度以降については、それに比例して物流費も増えてきた。16、17年度に入り、運転手不足と物流の増加を背景に、配送会社が一斉に運送費の値上げに動き、18、19年度も、この流れは止まりそうもない。
今回の物流費に関するアンケートにおいても、物流費が前年度対比で「増加」と答えた企業の割合は、15年度52%、16年度53%、17年度65%、18年度67%になり年々増えている。
(図②参照)

電線新聞 4179号掲載