日本電機工業会提案 『わが家にぴったり 換気扇の選び方』

家にぴったりの換気扇は何か。日本電機工業会では換気扇の選び方としてさまざまな提案を行っている。ここでは、熱交換型換気扇をはじめ各種換気扇の解説の要旨を紹介する。


換気扇にも適材適所があります

キッチンや浴室などで使用する、短時間に大量の排気を必要とする換気扇のほかにも、換気扇にはさまざまな種類が用意されている。上手に選んで快適で健康な暮らしを実現しよう。

同時給排タイプ
同時給排タイプ換気扇の取り付け場所(排気口)とは別に給気口を設けることが難しいケースには、ひとつのダクトなどで給気と排気を同時に行えるタイプがある。

熱交換タイプ
熱交換タイプ快適な室内の空気を、換気で失ってしまっては本末転倒である。リビングなどでは、外気を取り込む際に、快適な室温に近づけることのできる熱交換タイプが最適。

外気清浄タイプ〈空気清浄機能付きタイプ・脱臭機能付きタイプ〉
汚れた外気を取り込まないようにするにはフィルター装着タイプが最適。室外のホコリをブロックするほか、花粉やイヤなニオイまで取り除けるものもある。

直接排気タイプとダクト排気タイプ
直接排気タイプとダクト排気タイプ換気扇には「直接排気タイプ」と「ダクト排気タイプ」がある。一般的に、直接排気タイプは取り付けの容易さが、またダクト排気タイプは外風の影響の受けにくいことがメリットといわれるが、最新の機種では長所を伸ばし欠点を補う工夫がなされている。

美観を損ねない換気扇

美観を損ねない換気扇の種類には、大別して壁面に取り付けるタイプと、天井面に埋め込んだり天井内に設置するタイプ(ダクト用換気扇)があり、とりわけ居室(居間・和室・寝室・子供部屋など)に取り付けられる換気扇には、室内インテリアを損なわないよう工夫されたタイプがある。
また、壁面に取り付けるタイプに比べると、天井面や天井内に取り付ける換気扇の方が、目立たなく、室内インテリアを損なわない換気扇といえる。
熱交換形換気扇(天井埋込タイプ)
熱交換形換気扇(壁掛タイプ)
居間用換気扇(プロペラファンタイプ)
居間用換気扇(パイプファンタイプ)

トイレによい換気

トイレの換気選定方法は2通りある。
これまでトイレの換気には、その空間のことだけを考えて、商品を選定すれば十分である『局所換気』といった換気方式が主流だった。
しかし、昨今の建築基準法改正による換気設備の設置義務化を背景にした、換気システム(全体換気)の普及により、トイレは『局所換気』だけでなく、『全体換気の1空間』としてトイレ用換気扇が選定されるケースも増えてきている。

局所換気として選定する場合
トイレは臭気を排出するために、換気回数(1時間あたり室内の空気が何回入れ替わるか)を比較的大きく取る必要がある。(居間、リビングなどに対しては10倍程度)
つまり換気風量が大きな換気扇か強/弱切り替え機能を搭載した商品が選定されることが多い。

全体換気として選定する場合
住宅全体を一つの空間として考えた『全体換気』という換気方式により、住宅環境の快適さを維持する。「換気風量」、「換気経路」、「省エネ」といった視点で商品選定をする必要がある。
この場合には、トイレ用の換気扇は、①臭気対策用としての一時的な大風量、②24時間換気対策用としての小風量の両方を満たす商品が必要とされる。

換気経路
換気経路とは汚染空気やにおいが長い時間滞留しないように、住宅内の換気経路を明確にする必要がある。
常に居室には新鮮空気を供給といった考えから、汚れた空気は、居室→トイレ・サニタリーへと流れるように換気設計をすることがコツ。そのため居室には、給気用換気扇や給気口が設置され、トイレ・サニタリーには、排気用の換気設備が選定されることが一般的である。

トイレには使い勝手を考慮して専用の換気扇を
実際に使用する際に、快適に使用していくには、換気回数や風量だけでなく、必要な時に確実に動かすことが大事なため、使用中または使用後に一定時間動かす習慣を身に付けることが出来れば良い。
そのため、使い勝手といった点も重要な選定項目になる。
使い勝手の良い換気扇として使用するためには、『センサーで入室を感知して自動運転』『タイマーで自動OFF』などの運転方法に対応した換気扇商品がラインアップされているので、詳しくは各メーカー(ウェブサイトで掲載)に問い合せのこと。また「照明連動でON/OFF」や「タイマースイッチ」などとの組合せも電気配線の工夫で可能。
配線器具メーカーで商品化されている場合もあるので、業者と相談してみてはどうか。

遅延タイマー付タイプ(浴室)
壁スイッチで「ON」にして運転開始後4―5時間で自動停止。消し忘れを防止できる。

冷暖房効果が損なわれにくい換気扇

熱交換形換気扇とは?
最近ではZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)支援事業の補助金対象の製品もあることで注目を集めている換気扇である。一般的な換気とは、室内の汚れた空気を排出(排気)し、屋外の新鮮な空気の取り入れ(給気)が行われることをいう。しかし一方では、冷暖房時に換気をすると、部屋の涼しさや暖かさが逃げてしまうといった非効率なデメリットがある。
それを解消する換気扇が熱交換形換気扇。熱交換形換気扇は、熱交換器の働きで、換気(排気)で逃げる熱エネルギーの約70%を回収し、外気を室温に近づけて部屋に取り込む(給気)ことを、1台で行う同時給排気式の換気扇。

熱交換形換気扇のメリットは?
省エネ対策に最適冷暖房効果が損なわれ難い確実換気同時給排気式だから、建物の気密に関係なく確実に換気。防音効果熱交換器が遮音性能も発揮。

熱交換形換気扇のしくみ
熱交換素子という特殊な紙状の板に隙間を開けて何層にも重ねたもの。
隙間に冷たい空気と暖かい空気を交差させることで、熱交換素子を通して、室外の新鮮空気が室内の温度に近い温度まで熱交換される。

熱交換換気の省エネ効果
熱交換形換気扇は、冬場の冷気の侵入を抑え、肌寒さを感じにくい状態を維持して換気する。
だから、冷暖房や騒音が気になり易い、居間、寝室、子供部屋などの居住空間に個別に使用したり、住宅全体の集中換気として使用することに最適な換気扇である。
一方、キッチン・バス・サニタリーなど、汚れた空気を一気に排出したい空間もある。そこには風量が大きい換気扇、また油煙・湿気に配慮した換気扇が求められる。
使用用途・環境に合わせた『換気扇』を選ぶことが、快適空間を創るために重要である。

換気扇には給気も必要です

換気とは、室内の空気と外気を入れ替えることをいうのは、きっと皆さんご存じのはず。ところで、換気扇(とくにプロペラファンのタイプ)を使用して換気を行う場合、給気(空気の取り入れ口)を意識したことがあるだろうか。
給気の少ない部屋では換気扇の能力が著しく低下したり、冬期に寒さを感じたり、換気扇や扉のスキ間等から音が発生したり、扉の開閉が困難になることだってある。空気の取り入れ口が大きいと良い。空気の取り入れ口が小さいと悪い。
換気扇は、それぞれカタログに示されているだけの排気能力を持っているが、これは換気扇が排出するだけの空気が給気口から入ってくることが条件である。空気取り入れ口が小さいと、空気の入り方が少なく排気能力が低下する。空気取り入れ口は換気扇の取り付け面積より大きくしよう。大きいほど風速が小さいため、取り入れ口付近の人の不快感が少なくなる。

換気扇と給気口の位置
全体換気の場合は換気扇から離れた場所に給気口を設ける。
局所換気の場合は汚染源に比較的近いところに給気口を設けて他への影響を少なくする。

電材流通新聞2019年11月7日号掲載