LED光源を得て 一段の進化遂げる 『防災照明関連製品特集』

取替え促進のためにはさらなる周知の徹底を

コンパクトな誘導灯

 昨今、防災照明(誘導灯・非常灯)も他の照明器具同様、光源のLED化により機能を高めており、新築での採用を促す原動力となっている。その一方で、既築ではいまだ古い器具からの取替えが進まない建物も少なくない。周知徹底とともに普及をはかることが業界にとっての課題となっており、これがビジネスチャンスを広げる一助ともなりそうだ。

昨年12月に大阪・北新地で起きたクリニックが火元となったビル火災は、2001年の新宿歌舞伎町、2008年の大阪での個室ビデオ店の火災事故などを彷彿とさせるものだった。
火災の原因は、防災照明など設備の不備ではなく、計画された犯行によるものだった。その一方で、不法ではないまでも建物の構造上の問題も指摘され、総務省消防庁では火災発生から2日後、全国の消防本部に対し、同じようなビル約3万棟の緊急点検を要請した。
それにしても、25人もの尊い人命が奪われたこと自体、返すがえすも遺憾である。火災事故は年々、減少傾向にあるとはいえ、無辜の犠牲者を出すことに変わりはない。
消防白書によると、令和2年(1〜12月)における火災状況(確定値)は総出火件数が3万4691件と前年よりも2992件減少している。種別の増減では、建物火災が1638件減少、林野火災が152件減少、車両火災が119件減少、船舶火災が9件増加、航空機火災が1件減少、その他火災が1091件の減少となっている。
総死者数は1326人で、前年よりも160人減少しているが、このうち住宅火災による死者(放火自殺者等を除く)数は899人だった。
火災に巻き込まれて死亡する原因は、おもに「煙死」で、空気中の酸素濃度が10%以下になると意識を失う可能性が高いといわれている。その回避のため、住宅は火災警報器が、ビル・オフィスなどの建物では防災照明の設置が求められている。防災照明は、誘導灯や非常灯を一括した総称だが、その違いは停電の際に室内、廊下、階段などを照らす非常灯に対して、誘導灯は避難する道筋をガイドすることにある。
誘導灯の歴史は、1970年代初頭に遡るといわれている。当時において、文字表示の誘導灯が確認されているからだ。5年後の1975年には、日本照明器具工業会(現・日本照明工業会)が誘導灯の認定を開始する。認定の背景については、「非常口誘導灯のサイズが小さかったために非常口の場所が火災による煙などで分からず、逃げまどう人たちで混乱した結果、とても多くの死傷者を出したため、消防法が改正された」(日本照明工業会HPより)ことによるものとしている。それから約47年が経過した現在、LED光源を得て防災照明すなわち誘導灯、非常灯はともに大きな進化を遂げる。もっとも、その過程においても当時における最新の技術を援用し、機能面の強化がはかられたことはいうまでもない。1982年にピクトグラム、誘導灯の表示面に絵文字などを入れたものが登場したが、それまでの文字のみでは火災時に煙が発生すると文字が見えづらいため、改良が加えられた。
ただこれは日本独自の動きのようで、海外ではいまもピクトグラム化は進んでいないようだ。「EXIT」(アメリカ)「SORTIE」(フランス)「SALIDA」(スペイン)「SORTIE-EXIT」(カナダ)「USCITA DI SICUREZZA」(イタリア)など、すべて文字のみである。
その後も、我が国では器具の中形および大形の登場により誘導灯の見え方が一段と改善をみるがその半面、不都合も生じた。建築家やデザイナーなどから「大形の誘導灯は建物との調和がとれない」などのクレームが寄せられた結果、1994年に誕生するのが高輝度誘導灯である。高輝度誘導灯を、LED誘導灯と混同する向きもあるが、両者はまったくの別物で、それまでの誘導灯に比べて輝度が数倍も高いことが高輝度命名の由来である。1987年には、東京八重洲の地下街で高輝度誘導灯の実験が行われ、機能が実証される。その結果、消防庁は1999年に高輝度誘導灯を従来の3:1誘導灯の代替えとして認める法改正を行った。

コスパの面でも前進

LED光源を得て一段の進化を遂げる誘導灯は、いうまでもなく従来器具からの取替えによる大幅な節電をはじめ、リモコンで点検が容易となり、点滅ランプ部分のLED化で蓄電池交換時のコスト削減等々の特長をもち、機能のみならずコストパフォーマンスの面でも前進をみる。